中村隆「絵画の向こう側」
古今の名画を解説する本では、
中野京子「怖い絵」が世に知られている。
「新・・」、「もっと知りたい・・」、「・・泣く女偏」等、
次々とシリーズ本も出され、はまっている人もいるのだろう。
中村隆「絵画の向こう側」は続編なしの一冊だけ、
2007年のNHKラジオ「心を読む」シリーズの解説本だ。
昨今は徒歩10分の会社往復だけの引き籠り生活、
暇つぶしにもう一度読もうと、アマゾンで購入して再読した。
著名な画家の生涯を解説し、絵の成り立ちを解説している。
取り上げている画家は、別格のダビンチ以下、
ゴッホ、ゴーギャン、黒田清輝、藤田嗣治、ルソー、ピカソ、
シャガール、竹久夢二、佐伯裕三、関根正二の11人、
ほぼ全員が、不遇で、変人で、生涯恵まれず、
人生に深く悩んでおり、そうでないと、
いい絵は描けないらしい。(黒田清輝は別)
そういえば、小学5年生の時、クラスに、
「枠を超えた広さを感じる」絵を描く同級生がいた。
学校では逞しいガキ大将だったが、家は相当な貧困だった。
最後に取り上げられている関根正二が興味深い。
16歳で「死を思うとき」が二科展に入選、
変人で、極貧生活を送り、蓄膿症から肺炎にかかって
20歳で亡くなってしまった。生涯に残した作品は僅か26点、
二科展樗牛賞の「信仰の悲しみ」では5人の女性が
何かにとりつかれたように俯いて歩いている。
中央のひとりだけ、衣服にバーミリオンの朱が使われており、
19歳の関根が一方的に恋焦がれた人と言われている。
バーミリオンは高価故思うように購入できなかったとか。
関根の絵は自分の生涯を反映して全体に暗い。
描かれた人物は、何かを考え、訴えているのだが、
その何かが絵の人物にも関根にもよく分からないように思える。
代表作「子供」では、朱色の着物を着た子供が、
暗い表情で何を思っているのか、感じているのか、
関根に直接聞いてみたい気がする。
この本では取り上げていないから、中村氏の解説もない。
因みに「信仰の悲しみ」は倉敷の大原美術館に、
「子供」は東京中央区のブリジストン美術館に展示されている。
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