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NHK俳句「薄氷(うすらい)」

 先日のNHK俳句の選者は堀田季何氏、現代俳句協会常務理事とのことだが、テレビの画面では、耳のイヤリングや片足をやや前に出す立ち姿が目だつ。
 
 今週の兼題は薄氷(うすらい・うすごおり)。薄氷は春の季語で、春になってもまだ解けずに薄く残っている氷、又は寒さが戻り新しく張った氷のことをいう。俳句では「はくひょう」と書いてない限り4音の場合は「うすらい」、5音の場合は「うすごおり」と読むそうだ。
 
 全国からの応募作から特選六句が紹介され、堀田氏が解説する。深読みするといくらでも広がり、改めて俳句を味わった気になりました。
 
薄氷の どこを踏んでも 罪になり     (錆田水遊)
 (堀田)罪になりが上手いと思います。表の意味は何処を踏んでも安全なものがない、深く読めば人間関係とか、薄氷のどこ踏んでも自分のせいにされてしまうのか、会社でも、特定の相手の話しでも、いろいろな読み方があって広がりのある句だ。罪になりがよかった。
 過去を思い起すと、随分薄氷を踏んで罪なことをして来たが、それにしては罰が少なかった。というより、鈍感で罰に気が付かなったのかもしれない。
 
いくたびも 薄氷になり みずになり    (立川茜)
 (堀田)いくたびもだから薄氷が融けて、又凍って、表はそう言う意味だが、深読みすると、個体と液体を行ったり来たり、デリケートな心の状態かもしれない、恋愛の状態かもしれないし、経済状況かもしれない、自分はこれで大丈夫かな、そういった際どいところが上手くとらえられている。
 
薄氷に 突っ込み落とす 窯の泥      (高梨圭司)
 (堀田)薄氷に鎌突っ込み泥落とす では、つまらない句になる。突っ込み落とすが勢いがある。窯の泥ということで何をしていたかわかる。多分農作業とか、ためらいのなさと日常の生活感が出ている。
 
薄氷(はくひょう)を 避ける子のあと 避け行く子   (日下隆博)
 (堀田)最初の子は薄氷を見て避ける、後ろこ子は避けた子を見て避けていく、もしかしたら後ろ子に踏みたい子がいるかもしれないが、前の子が避けているから自分も避ける、心理的なものがあり、映像がうかぶ。
 
薄氷や 鳥の糞(まり)まで うつくしく  (伊藤映雪)
 (堀田)薄氷自体が綺麗なのは当たり前だが、薄氷が鳥の糞までも美しく見せる、鳥の糞が美しい状態を発見する、なかなかの審美眼。
 
薄氷の岸や あなたを許す旅        (西鎮)
 (堀田)許す旅にでたということは、何かに傷つけられてあなたを許せていない、傷心の旅にでた。薄氷の岸だから、まだ解けていないけれど、溶け始めている、もしかしたら自分の心が少し融けて和らいできているのではないか。実際に旅先で岸辺に氷が張っているところを通っているということもあるけれど、自分の心境としても少しずつあなたを許せそうになっている、そう言う深い句だととりました。
 あたなを許したいけれど、薄氷が融けるまでの時間が欲しい、女性の心理として分からぬでもありません。そういう時はこちらも黙って薄氷が融けるのを待つだけ・・・でした。

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