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上場企業6.事件
2009年春、会社を揺るがす事件が二つ起きた。
一つは数年前から公取委と争っていた独禁法裁判が決着して当社としては多額の課徴金(10億弱)を取られたことだ。日本の水道管は大手3社が製造しており、数年前まで3社でシェアを決めていたので、それが独禁法に違反する。当社のシェアは3社では最下位だが、それでも安定して販売量が確保でき、確実に利益が得られる。3社は、シェア協定は勿論、独禁法の違反だから当事者は処罰されるが、当時の独禁法では会社に課徴金を課す仕組みにはなっていないと主張していた。その後独禁法が改正され、課徴金が課されることが追加されている。理屈では3社に理がある気もするが、数年の裁判の結果、3社に課徴金が課されることで決着した。いずれにしても、以前から万一負けた場合の資金手当てをしており、これだけなら、そう大きな問題ではないはずだった。
しかし、悪いことは重なるもので、4月に九州の水道管販売会社が突然倒産した。正月に訪問した時の社長のふるまいに不信感を持っていたが、案の定・・・・だった。当日まで倒産の兆候は全くなく、計画倒産なのだろう。直ぐに最終需要家を訪問して、未払いの代金を当社に直接支払うよう要請するなどしてある程度は取り戻したが、結局その販売会社への半年分の売上の大半を回収できず、会社は10億円程度の損害を被った。
それに加えて、そのまま九州地区の商権を失えば、それによる収益悪化が今後も続くから、問題はその方が大きい。直ちに営業所メンバーが需要家を回り、当社の販売子会社N社からの購入に切り替えてもらうよう働きかけた。N社も直ぐに九州営業所を設置して営業所をバックアップした。素早い動きで、商権はほぼ確保できた。この事件は大株主であるJ社に出向いて説明したところ、○○(私)の責任ではない、と逆に慰められた。しかしながら、原因はともかく、時の社長だからけじめをつけるとして、数カ月間、報酬の何割かを返上した。
更に、販売見込みのない旧い技術標準にのっとった数億円におよぶ水道菅の不良在庫(数億円)が積みあがっており、この際、全てを廃棄処理してキャッシュフローを改善することにした。前社長は数年かけて処分する計画だったようだが、社長が変わった時に一気に処理して、それによって生ずる一時損は前の社長の責任にするのはよくある手だ。根本原因は生産管理がずさんなことと製造体制そのものに融通性のないことだから、次年度に製造体制を抜本的に変更することを考えた。
かなりな赤字決算だから、メイン銀行に出向いて説明すると、銀行からは2年連続の赤字は避けてくださいと念を押された。