NHK短歌「ごめんね/すみません」
今朝のNHK短歌の選者は枡野浩一氏、(以前にも書いたが)「口語短歌」が主な作風で、結社や同人に所属しないため、歌人としては異端視されることが多い。短歌以外にも現代詩、作詞、漫画評、演劇評、エッセイ、小説などさまざまなジャンルで作品を発表している。彼が選出する短歌は分かりやすく、かつウィットに富んで歌が多い。
今日のテーマは、あなたへの手紙から「ごめんね/すみません」
以下、入選作と枡野さんのコメントを紹介します。
第三席
生きていて ごめんなさいと 言いながら
おやつを食べて お昼寝もする 五月雨薊
(枡野)人って絶望しながらも、あんがいおやつを食べて、お昼寝もする。お昼寝しているからと言って悩んでいないとは限らない。矛盾をはらんだ人間性が出ている・・・・。
人生の価値の意味など、考えるほどのこともなく、あるいは考えても仕方がなく、さっさと忘れてしまえばいいと言っている気がします。
第二席
荒らされた 花野へあわてて 駆けてきて
ごめんと言うから ゆるさなければ 中村杏
(枡野)ゆるしたくないけれど、許さないと自分がわるくなる。関係性をたもつためには許さないといけないとの冷静な判断、駆けてくるときにまた荒らされるときとか・・・・。
第一席
ごめんねの 代わりに夫が くれた薔薇
これっぽっちじゃ 足りないってば スワロフ好き代
(枡野)浮気の代わりにメロンもらったと言うような短歌が多かった。この歌は、意味模索するかわいらしさがいい。最後の「ば」の響きがいい。
リアルに、じゃあ何本ならいいのかいいなどとも思う・・・・。
監視人殿は、そりゃそうだ、薔薇一本もらっても嬉しいわけがない、とのこと。もしかしたら私に言っているのかと思い、黙っていた。
以下、他の入選作です。
「すみません」 たとえあなたが 許しても
私が私を ゆるせないので 峯瀬品子
(枡野)最後の「ので」が、冒頭のすみませんにもどってくる、何を言っても無理です、みたいな感じです。
払いのけた 夜はあなたを 忘れても
私はずっと 悔やんでおくね へそごま
あの夜、あなたを受け入れればよかったと悔やんでいるのだが、今、そのあなたとはどうなっているのか、気になります。
気づかない ふりはしておく ごめんねと
やっぱし思え なくてごめんね 星川郁乃
(枡野)根本的には謝りたくないようですね。
たぶんもう 渡せないけど 十九から
冷凍保存 してるごめんね 和田直樹
ごめんなさい 今朝もあなたを 覚えてた
私も早く 忘れたいのに れいこ
(枡野)こんなこと言っていたら永遠に忘れられないですね。忘れるって、難しい、せつないです。
部屋の隅に 埃が積もる 毎日の
汚れみたいな きみのごめんね 渡邊理紗
(枡野)ごめんねを一日何回言っているんだ、修復できない何かを感じる
悲しい短歌です。
ヘッダーは選者の枡野浩一氏です。