空き家の桜
2011年4月の日記です。
普段空けている、横浜の家に彼岸桜がある。
ソメイヨシノより、数日早く咲くので、
先週の土曜日、そろそろ咲いているだろうと、確認しに行った。
昼前に、大宮から埼京線と田園都市線を乗り継ぎ、
最寄り駅に降りると、近辺の桜は未だ1部程度の咲き始め、
大通りから我が家に向かう道に入ると、彼岸桜は満開だった。
先駆けて咲くから、目立つのだろう、たまの通行人は必ず見上げ、
中には写真を撮る人もいるが、
減るものではないから大目に見ることにする。
枝が2階の屋根まで伸び、道路側にもせりだして
電線に触れているのが、少々気になる。
家に入り雨戸を開けると、
南面のガラス戸の向こうは一面の桜だ。
柔らかな春の陽射しに照らされて、
ほんのりピンクがかった小粒の花が、やや下向きに、
慎ましく、恥ずかしげに咲き、
時々メジロ夫婦が訪れ、花を突っつく。
家を購入した直後に植えたから、既に30年以上経っている。
当初、2メートル足らずの細い苗木、冬に雪を被ると、
枝が重そうにたわむので、その都度雪を払ったことを思い出す。
目を左右に転じると、赤い椿はまだ花を残し、
梅やハナミズキの枝は間もなく新緑で覆われそうだ。
その下では、黄色い水仙、薄緑のクリスマスローズ、
白いスノードロップなどが咲いている。
ついでに雑草も芽を出し始め、
当たり前だが、主がいなくても花は咲き、草木も育つ。
暫し花を眺め、ワンカップを呑みながらおにぎりを食べ、
ついでに両親の位牌に手を合わせて、
普段いなくてすまぬと呟く。
1時間ほどの滞在に往復3時間を要し、
効率の悪い一時帰宅だった。
追: 10年後、あの空き家を整理して桜ごと売却した。
断捨離の始まりだった。
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