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「政治家はゴリラのリーダーに学べ」

  文芸春秋12月号の「有働由美子のマイフェアパーソン」のゲストはゴリラ研究の第一人者、山際壽一氏だ。

  山際壽一氏(1952年生れ)は、京都大学大学院理学研究科博士課程修了。理学博士。京都大学大学院理学研究科教授、京都大学大学院理学研究科研究科長、京都大学理学部学部長、京都大学総長(第26代)、一般社団法人国立大学協会会長(第26代)、日本学術会議会長(第29代)などを歴任した。現在は、京都大学名誉教授[2]総合地球環境学研究所所長。

 専攻は人類進化学。特にゴリラの生態から、人類の起源を探究する。霊長類学の観点から現代社会の問題も論じる。著書に『森の巨人』(1983年)、『ゴリラとヒトの間』(1993年)、『家族進化論』(2012年)など。

  記事は最初に石破首相に関連して、政治家がどうあるべきかをゴリラの世界から説き起こしており、なかなか興味深い。それに続いて、氏がアフリカでゴリラに学んだ経緯、経緯を語り、こちらも興味深い。

  以下、政治家とゴリラの関係について述べている部分を抜粋する。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  (山際)イギリスの霊長類学者のロビン・ダンバーが、霊長類の脳の大きさと群れのサイズとの相関関係から、現代人が、意味のある人間関係を維持できる人数の上限は150人だと発見した。それが「ダンパー数」です。
 そもそも人間の社会的ネットワークのサイズには、「三倍の法則」というものがあります。最小は五人で、音楽バンドなど、リーダーが不在でも迅速に動けるチームの規模。その三倍の15人が、1週間に一度は顔を合わせるような間柄で、我々は社会活動にあてる時間の60%を、この集団に費やしています。次にその三倍強の50人が、明確なリーダーシップがなくても、民主的に運営できる集団の上限になります。
 そしてダンパー数の150人が信頼できる仲間の上限で、それを超えるとグループの分裂が始まる。500人や1500人となると、名前は知っている間柄でも、利害で動くなど、関係が複雑になっていく。
 (有働)自民党の国会議員は、ダンパー数の150人を超えていますよね。一方で50人程度ならまとまりやすいから、派閥ができていったという事ですか?
 (山際)そう言う事です。・・・・

  リーダーの三条件とは
 (山際)石破さんは・・・今は無理にまとめようとするからダメなんです。リーダーの条件は三つ。まず愛嬌があるか。そして運がよさそうに見えるか。最後に一番重要なのが、後ろ姿で語れるかどうか。リーダーは後ろを振り向いてはいけない。・・・・皆が俺についてきてくれることは分かっている、というのがリーダーにふさわしい態度です。・・・・実はサルなど霊長類のなかでも、ゴリラのリーダーはこれらの条件を備えています。・・・
 何事にも正面からぶつかっていって振り返らないのが石破さんだろうと思われていたのに、いざ総理になったら、たくさんの人がついてきてくれるか心配になって、思わず振り向いてしまってばかりいる。

  政治家はゴリラに学べ
 (有働)後ろで文句を言っている人たちはそれでついてきますか?
 (山際)それは賭けです。賭けに出なければリーダーではない。田中角栄さんは学歴が無くガラガラ声だったけれど、愛嬌はありました。何よりも後ろを振り向かなかった。吉田茂さんもそうです。近年では小泉純一郎さんもそうだったかもしれない。「自民党をぶっ壊す」と大言壮語を吐いて、誰がついてくるのか、全然気にしなかった。僕はこれまでの自民党政治で優秀なリーダーを挙げろと言われれば、この三人を挙げますね。・・・・
 (有働)今の時代は、後ろを振り向きながら「君たち大丈夫かな?」と、気遣い出来るリーだーが求められているのだと思っていました。
 (山際)ダンパー数に代表されるように人間の組織を上手く維持できる規模が変わらない以上、リーダーのやるべきことは、それほど変わりません。実行部隊は五人、熟議するのは15人、多様な意見を求めて大きな動きを作るのは50人・・そして各組織のまとめ役が力を発揮できるように統率するのが、政治リーダーのあるべき形です。・・・・
 民意を反映させた政治をするために、ゴリラのリーダーに学ぶべきことは多いと私は考えています。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  確かに総理になってからの石破氏は揺れているが、本番はこれから、揺れを克服して強いリーダーシップを発揮して欲しい。ゴリラに学べと言われても、聞く耳をもたず、無視してもいいから。

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