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目を離すとすぐにこうなる。こうならないでほしい。こうなったら大変だから。

2022/03/11

・5秒で忘れた。

先日、彼には初めてお会いした。その方は俺の友人の友人。前から、何となく知っていたけど、顔はよく知らない、そんな関係だった。
開口一番、「東京からきた川崎です。育ちは愛知です。愛知にはもう飽きたので東京にきました。」ややこっ!っとは言わなかった。ただ混乱した。なぜなら、大阪ばりの鉄板のつかみをかましてきたからだ。鉄板あつあつだ。ちなみに、今日は懐石料理。こいつ俺を前にして、かましてきたな、、、
結局、名前を忘れてしまい、彼の名前を知れたのは、誰かが、かれのことを川崎と呼んだ時だった。道理で食べ方が汚い。

・鏡をみたい。

以前、ピザの配達のアルバイトをしていた時のこと。時刻はたしか18時ごろだっただろうか。ひとけのない大きな国道の北側に位置する裏道。ただ、道はしっかりと舗装されていて、バイクどうしであればちょうどすれ違えるであろう太さを確保した道。普段、人は通らず、お昼を食べた猫がよく眠りに行くために通る姿を目撃する。この日の18時は、昼間は自らのアイデンティティを獲得するために枯らしていた蝉の声がアスファルトにぶつかり、粉々に砕け散っていた。その破片は夏特有の乾いた風によって、港町まで運ばれた。しかし、港町に届く頃にはすでに声の形を失っており、海のさざなみに飲まれ、暗く深い底まで引きづられていく。
ある一軒のマンションにピザを届けに行った。エントランスでは指定された部屋番号を押した。向こうからの返事はすぐにあった。インターホン越しでもわかる若い声だ。学生だろうか。無事、マンションのロックを解除してもらい、奥へ進んだ。とくに難しいマンションの造りではなく、いとも簡単に部屋の前に着くことができた。インターホンを押す。今度も返事はすぐだった。若い声に変わりはなかったが、ただ、さっきとは違う声質だ。
すぐに玄関があいた。高校生だろう。高校生の男子3人が出てきた。この街の夜の深い静けさとは対照的な賑わう声が中から聞こえた。ピザパだな。文化祭の打ち上げか。注文されたピザをお渡しし、代金を伝えた。3985円だった。高校生たちは4000円を出してきた。おつりは15円。素早くお釣りを取り出し、確かに15円を高校生たちへ手渡した。彼らのパーティーの邪魔をしてはいけない。すると、高校生の一人が一瞬、俺の顔みた。その目には少なくとも、お疲れ様ですという感謝の色はなかった。一瞬、俺の顔を見るなり、「おつりとっといていいですよ」と早口で言われた。今回のお釣りは15円だ。唐突の男気、憐れみ、そのた感情に俺は詰まってしまった。俺はそんなに見窄らしい顔をしていたのか、そんなに不健康な体をしていただろうか。懸念点は他にもある。が、考えるののはやめ、瞬時に、「いや、この15円も大切にしなっ」と先ほどの高校生よりも早口で伝え、足早でその場を後にした。この場でどうすればよかったのかなー。正解が未だにわからない。
ちなみに、次の日、自転車の駐輪代が20円足りず、最寄駅から自転車を諦め、歩いて帰宅したことにより、この15円をどうすべきだったのか、最適解を見つけるのがより困難になってしまった。お釣りってむずい。

・絶対、手打ち。

とんでもない、標高にある蕎麦屋さんに行った。山を3つくらい縦に登った感覚をもよおすほど標高が高かったのだ。よゆうで45分は山を駆け登った。もちろん車。想像すればわかるが、そんな環境にはコンビニやスーパー、トイレすらない。ただ、45分山を登った先に、ぽつんと蕎麦屋だけがある。そこでふと思った。この蕎麦屋はぜったい手打ちだ。手打ちじゃないとやっていけない。そばの麺はもちろん手打ち。山菜も近くで取れるもの。出汁も自家製。いちいち、必要な物を下界から取り寄せていたら、一年の半分は山間ドライブで終わってしまう。おそらく、レンゲや箸も近くで採れた木材を手打ち。器も手打ち。おぼんだって手打ち。なにから何までが手打ちであるはず。周りには本当に何もなく、山しかないのだから。
その蕎麦屋にやっと到着して、店内に入ろうとすると、自動ドア。ん?自動ドアか、、、きっと手打ち自動ドアに違いない。。うん、大丈夫。
自動ドアを抜け、体をくるりと90度回した先には券売機。券売機か。。。
だいぶ、デジタルだな、、、。でも、きっと手打ち券売機に違いない。そうきっと。券売機には大きな文字で手打ちそばと書かれていた。ほら、やっぱり手打ちじゃん!!やっぱり手打ちだ!その券売機にはメニューが3つしかなかった。そば3種しかないのか。そうかーー。券売機要らなくない???そんな疑問は手打ちそばの旨さで吹き飛び、どこか遠くへ行ってしまった。ばいばい、手打ち疑問。

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