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支援者が要支援者に対してどのように 支援内容を決定していくのか

障害や生きづらさ、病気を抱えていて、支援を必要としている人に対して専門職である支援者はどのように支援内容を決めて、実行していくのか気になって、「医療・保健・福祉・心理専門職のためのアセスメント技術を高めるハンドブック」という本を読んでみました。この本の内容には要支援者(支援を必要としている人)に対して、専門職の支援者がどのように支援内容を決めて実行していくかが書かれています。

もちろん専門職の方が学ぶ事も大切だと思いますが、障害や生きづらさを抱えている当事者や周りの方が学ぶ事も大切な事でもあるのかもしれません。当事者や周りの方が学ぶ事によって、当事者自身や周りの家族などの方が自ら、解決策を模索出来る可能性もありますし、自分自身が支援課題を上げる事が出来れば支援を要請しやすくなるかもしれません。

 ではこの本に書かれていた内容を簡単に書いていきたいと思います。

インテイク・アセスメント・プランニングという枠組み

専門職の支援者が要支援者に対して、支援の方針を決めていくまでには3つの過程があります。最初にインテイク(情報の収集・整理)、次がアセスメント(理解・解釈・仮説、※アセスメントには支援課題の抽出も含まれます)、そしてプランニング(対応・方針の策定)という3つです。
このうち、区別しにくいのは情報収集とアセスメントです。

情報の取集とは、だいたいの場合、主語が三人称です。本人がこう言った、お母さんがこう言っている、おばあちゃんがこう言った、主治医がこう言った、IQは73というように。

一方、アセスメント、つまり理解や解釈、仮説と言うのは、主語が一人称です。私はこう理解している、私はこう捉えている、私はこう推測している、あの人から聴いた話を私はこのように解釈しているといった感じです。

 インテイク・アセスメント・プランニングの例をある小学6年生の事例で簡単に下記に書いてみたいと思います。

 ①    インテイク(情報収集・整理)
・授業中落ち着きがないと担任の先生が言っている。
・1つの事に集中できず、授業に関係ない突発的な行動を繰り返していると  
 担任の先生が言っている。
・忘れ物が多い。
・教科のテストの成績がかなり低い。
・学級内には仲の良さそうな友達がいて、休み時間は一緒に過ごしている。
・独り言で、勉強がつまらない、自分は全く駄目だと言っている。
・以前、学校から両親に知的の遅れの可能性があるため特別支援教育を進め
 たが、その事に対して両親は激怒した。

というようなインテイクをしたとします。次にこの情報を下にアセスメントをします。

 ②    アセスメント(自分の評価・解釈・仮説)
・本人はADHD(注意欠如多動症)の為、授業中に落ち着きがなく、突発
 的な行動をしてしまったり忘れ物が多くなってしまっていると私は解釈し
 ています。
・教科のテスト成績が悪い事について私は2つの仮説を立てました。一つは
 ADHDの症状で注意を授業に向け続ける事が困難な為。もう一つは生来
 的に知的の発達の遅れがある為。
・現状、対人関係は良好である一方、このまま学業についていけない事が続
 けば、将来に対しての話題が合わないために孤立する恐れがあると、私は
 解釈している。
・勉強が出来ない事に対して、ストレスを溜めていて不安を感じていて自己
 イメージは否定的であると、私は理解している。
・両親は、本人の知的発達の遅れを否定する傾向があると、私は解釈してい 
 る。 

そして上記を踏まえて下記のような支援課題を抽出していく事になります。
1 本人の発達について家族に理解を促す。
2 医師の診断を促し、適切な治療法行う(ADHDと診断されたら薬物療
  法を行うなど)
3 学校内の体制整備(学習面の対応)
4 心理的にサポートをし、適応的な言動を増やす

③    プランニング(対応・方針の策定)
1  担任・家族が月1回の面談を通して情報共有(学校での本人の様子や、
 学校が工夫している点・成果などを伝える)を行う。来月から行えるよう 
 にする。
2  保健所が家族との面談を通して、医療機関の受診を促す。保健市
 は、近隣の医療機関でADHD治療薬を処方できる医師を探しておく。面
 談は再来週までに行う。(学校、教育委員会は保健所との協力体制を
 築いている事があるので、その保健所に依頼をする)
3 担任・家族の面談を通じて特別支援教育の利用を促す。校内委員会 
 (担任、養護教諭、学年主任、スクールカウンセラー、スクールソーシャ
 ルワーカーなどで構成される委員会)も担任をバックアップする。今月末
 までに行う。
4    隔週の来談で、スクールカウンセラーが30分の個別面接を通して本人
 の気持ちを聴き、理解を示しつつ、ストレス対処法などの技術を学んでい
 く。来週から行っていく。

 本来はもっと細かく書くと思うのですが、このようにインテイク→アセスメント→プランニングを行い、支援者が関わっていくみたいです。

またプランニングを実行した際はプランニングが上手くっているか定期的にモニタリングしてチェックします。また上手くいっていなければプランニングを変えたり、新たな視点でアセスメントをし直し新たな支援課題・プランニングを模索していく事も必要になってきます。

アセスメント

ここで対人支援を行う際のアセスメントをもう少し詳しく説明したいと思います。
対人支援におけるアセスメントを定義すると「1つ1つの情報を自分なりに解釈し、それらを組み立て、生じている問題の成り立ちを構成し(まとめ上げ)、支援課題を抽出する事、あるいは、その人がどんな人で、どんな支援を必要としているのかを明らかにする事」となります。

アセスメントの枠組みとして生物―心理―社会モデルを使うのが一般的です。

この生物―心理―社会という捉え方は、第二次大戦後、世界保健機関WHOの憲章の前文に示された健康の定義に結実しています。WHOの定義によれば、「健康とはまず生物的・身体的に健康であり、かつ心理的・精神的、社会的にも良い状態である」としています。

このように要支援者の健康を向上させるために、支援者が要支援者のアセスメントをする際には、この生物―心理―社会、3つの視点で生じている問題の成り立ちをまとめ上げ、支援課題を抽出する事が大切になります。
生物、心理、社会の枠組み・視点を下記に説明したいと思います。

 この枠組みを使うと、支援者がアセスメントをする際に必要な視点は、第一に、生来的な気質、発達特性、障害、疾患と言った生物的な視点があります。生じている問題の生物的な要因という事になります。第二に、不安や葛藤、その人が望んでいる事、自己感、認知、内省性、感情統制など、その人がどんな気持ちでいるか、自分自身の捉え方、物事の捉え方、感情のコントロールする力などの心理的な視点です。そして第三に、家族や学校、身近な人たちとの関係、家族状況、周りに支援資源があるかなどという社会的な視点です。

 つまり、その人の生きづらさ・健康を害するような問題がどこにあるのかを、日々の情報(日々の言動、テストの成績、面談記録、担任・友達からの声、医師の診断結果など)を下にして生物―心理―社会、3つのレベルの視点でアセスメントしていく事が必要になります。

上記の「インテイク・アセスメント・プランニングという枠組み」のアセスメント箇所でどのように3つのレベルで捉えていたかをもう一度見てみたいと思います。

 ・本人はADHD(注意欠如多動症)の為、授業中に落ち着きがなく、突発的な行動をしてしまったり忘れ物が多くなってしまっていると私は解釈しています。(生物的)
・教科のテスト成績が悪い事について私は2つの仮説を立てました。一つはADHDの症状で注意を授業に向け続ける事が困難な為。もう一つは生来的に知的の発達の遅れがある為。(生物的)
・現状対人関係は良好である一方、このまま学業についていけない事が続けば、将来に対しての話題が合わないために孤立する恐れがあると解釈している。(社会的)
・勉強が出来ない事に対して、ストレスを溜めていて不安を感じていて自己イメージは否定的である。(心理的)
・両親は、本人の知的発達の遅れを否定する傾向がある。(社会的)

このように3つのレベルで捉えて支援課題を抽出して支援の方針を策定して問題を改善していく事が、要支援者の健康向上、QOLの質の向上には欠かせないのです。

 また支援課題を抽出する際に注意したい事に1つに、クライエントや家族から言われたこと、求められたことをそのままやればいいという訳でもなく、主訴を尊重しつつ、主訴と真の支援課題を区別する事が大切です。例えば本人や家族から特別支援学級の希望があった場合、特別支援学級に入らずとも、様々な支援を受け日常的に問題なく生活できる可能性も十分にあります(放課後デイサービス、通級、特別支援教育など)。そこを上手に本人の将来を考えつつ、拾い上げていく事も大切になるみたいです。

プランニングの原則

プランニングの原則として、支援課題と具体的な支援プランは同じ数になります。リストアップした支援課題が4つであれば、個々の支援課題に対応して4つの具体的なプランが立つはずです。またプランニングは、「誰が」「どんな方法で」「いつまでに」をはっきりさせることです。

更にプランニングを考えられた場合は、それが実現可能性をしっかり持っているかを考えます。どんな良いプランニングだとしても、そのような、プログラムを行う人為や施設といった環境がなく実現可能性がなければ意味がありません。その他にも、プログラムを行うにあたって多額な費用がかかる、本人の希望に沿っていないなどがあったとしたならば、実現可能性は低くなります。本人の希望に沿っていなければ、そのプランは上手くは行かず実現はしないでしょう。

整合性 

このように、インテイク→アセスメント→プランニングをまとめ上げる際に重要な事は、インテイクとアセスメントの整合性があるか、アセスメントとプランニングの整合性があるかをチェックする事です。つまり情報から適切にアセスメントが出来ているか、アセスメントの結果の支援課題とプランニングがしっかりと辻褄があっているかを確認する必要があります。整合性がなければ、全く効果的な支援に繋がらないのです。

以上のように、支援者が要支援者に対してどのように支援内容を決定して実行していくのかを投稿しましたが、このような事を学ぶ事は周りの関わる専門職にとっても大切な事ですが、当事者や家族が学ぶ事も大切な事かもしれません。当事者が訳わからず混沌とした目の前にある支援者から与えられたプランニングの道を進んでいくだけでなく、自ら自身の課題やプランニングの全体像を想像出来た方が、心の安定にも繋がるでしょうし、自分に起きている問題に対しての取り組み方にも大きくプラスになるかもしれません。
詳しく知りたい方は、是非この本を読んで見るもの良いかもしれません。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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