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終末世界一人旅ゲー『FAR Lone Sails』のレビューをするよ

『FAR Lone Sails』をクリアしたので感想を書いていきます。

どんなゲーム?

このゲームを一言で説明すると、終末世界でボロボロの乗り物を操りながら一人旅するゲームだ。

2018年にスイスのゲーム会社である
「Okomotive」により発売された。

PC(steam)やPS4、Nintendo Switch、iPhone、Androidでプレイできるので遊ぶハードルはかなり低い。

ジャンルとしてはアクションパズルといってよいだろう。乗り物は右方向へ真っ直ぐ進むことしかできず、途中の障害物を上手く取り除いて進み続けるというのが大体のゲームの流れだ。

ゲームとしては優しい

前述の通り、このゲームはジャンル分けするとしたらアクションパズルといってよいと思う。

例えば門が閉まっていて通れない時は、近くのボタンまでたどり着いて押せば開くなど、進むためにパズルを何度も繰り返して道を作っていくゲームだ。

パズルとしての難易度はやや低い。頭を悩ませるものもあるが、全体としてヒントが明示されていることがほとんどだ。

ボリュームも2時間〜4時間程度で終わるくらいだし、複雑な操作も必要ない。長編のゲームや難しいゲームの箸休めとしてプレイしたりするのにはちょうどいい。

海外のインディーズゲームということでマニアックに見えるが、ゲーム自体に慣れていないライト層や子どもも安心してプレイできるだろう。

世界観の演出が巧み

ここまでの説明だけだと「難易度が低くてボリュームのないインディーズゲーム」となってしまっていいところがない感じなので、プラスポイントも書こう。そもそもダメなゲームだったらいちいちレビューなんて書かない。

このゲームは見た目通り「雰囲気ゲー」であり、雰囲気つまり世界観の演出が巧みである。

グラフィックはローポリの3Dだが、全体的に手書き風になっており、海外のアニメ映画のような雰囲気を醸し出している。

もちろんグラフィックだけではない。BGMもゲームっぽさが少なく、その場面にマッチしたものとなっており秀逸だ。

巧みだ、秀逸だ、雰囲気がいい、だけだと具体性がなくて何がいいのかよく分からないと思うので、序盤で演出が優れていると思った場所の例をあげよう。

開始3分くらいのシーンなのでほぼネタバレとはいえないと思うが、知識まっさらな状態から始めたい人はここで読むのをやめてほしい。

オープニングで主人公は、年配の人の写真(遺影?)が飾られた大木に別れを告げ、自宅と思われる廃屋の中に入る。

自宅をあとにして少し歩くと、巨大な乗り物が放置されている場所にたどりつく。

この間はBGMはほぼなく静かである。

乗り物を起動すると、周りの建物の残骸をなぎ倒しながら進みだし、静かにBGMが流れだす。

主人公のバックボーンや目的は明確に語られないが、主人公のとまっていた時間が動きだした瞬間を映画的に表現している演出だ。

旅をしている感の演出も巧み

ゲーム全体の、あてのない孤独な旅をしている感の演出も巧みだ。具体例を3つあげよう。

まず1つ目として拾いものの要素。道中には様々なものが落ちている。乗り物の燃料となる箱やドラム缶、誰かが落としたと思われる本や家具なども散乱している。

それらを乗り物の中に持ちこめば、乗り物の中をにぎやかにすることができ、寂しさと孤独感をまぎらわせることができる。

かつてこれを使っていた人がいたんだな、何でこんなところに落ちているんだろう、と想像をめぐらせることができるし、大体見合った場所に落ちているので、ふと目に入った時に拾った時のことを思いだして旅情を感じられる。

2つ目は乗り物のポンコツさ。主人公のあやつる乗り物は見た目通りかなりのポンコツで、せっかく集めた燃料をすぐに使いつくすし、ちょっとした衝撃で損傷したりギミックが正常に動かなくなったり火をふいたりする。

手がかかるほどかわいいというわけではないが、その頼りなさが、旅の相棒という雰囲気を醸し出していてよい。

3つ目はメリハリ感と緩急の上手さ。このゲームはシンプルなパズルアクションではあるが、まだ明るく平和だったころの痕跡が残る大地をおだやかなBGMと共に進んでいく場面と、災害に直面して不穏なBGMと共に走り抜ける場面が交互におとずれ、展開にメリハリ・緩急が効いている。

このような、道中に落ちているものを拾い集めて乗り物に乗せて行ったり、ポンコツな乗り物を修理・改造して何とか進み続けたり、雄大な景色や様々な困難に直面したりといった様々な要素のひとつひとつが、世界観を形作り、プレイヤーを旅に没頭させるのに一役買っている。

ちょっと気になる点も

雰囲気がよく、総合的に見れば良ゲーといえるが、気になる点もないとはいえない。

まず、ボリュームについて。

このゲームの本来の価格は1,520円だ。

2〜4時間でクリアでき、一本道で雰囲気重視のアクションパズルなのでリプレイ性は低い。

低価格の良作が大量に存在する昨今では、コストパフォーマンスの「コスト」の面で見ると厳しいが、高い頻度で大幅値引きを行ってくれるので、安くなったタイミングで買うとよいだろう。

あとは、このゲームにはまる層のせまさについて。

よくも悪くも雰囲気ゲーであり、ゲームとして見ると単純なパズルを解いていくだけなので、雰囲気にはまらなければ少々退屈なゲームと感じるかもしれない。

まとめ

難易度もボリュームもひかえめで、大作や難しいゲームの気分転換用としてはちょうどいいゲームだ。

その雰囲気のよさから、やり終わったあとには海外の短編アニメ映画を見終わった時のような満足感を得られるゲームなので、もちろん単品としても悪くない。

はまる人ははまるというタイプのゲームであり、コストパフォーマンスの「コスト」が少々気になるので、「こういうゲームが好き」という自覚がある人は、セール期間中をねらって買ってみるといいだろう。

ちょうど今月続編(世界は同じだが直接つながりはない)である『far: changing tides』も発売されたらしいので、このタイミングでぜひチェックしてみてはいかがだろうか。

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やまざき にんふぇあ
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