田代島で猫に化かされた話
宮城県の田代島。いわずと知れた猫の島である。
この間、ここで猫に化かされた話をしたいと思う。
私は朝の便で田代島の大泊港に降り立った。反対側の仁斗田港の方が大きくてにぎわっているが、以前もきたことがあるので、あえて静かな大泊港をまわることにしたのである。
小さな住宅街をまわって港に戻ってくると、道の真ん中に太った猫が立っていた。猫は「ついてこい」とでもいうようにこちらをふり向き、歩きだした。
猫は港の近くの古い神社の急な石段を軽やかに上がっていく。近づくと、また少し石段をのぼっていく。
階段をあがると、そこには鮮やかな赤色をした小さな神社があった。
猫は神社の奥の竹やぶの前でとまる。獣道が奥へ続いていた。
(異世界にでも続いていそうだ)
私は、蜘蛛の巣や雑草だらけの竹やぶを進む。猫はついてこなかった。
やがて竹やぶが終わり目の前が明るくなる。
そこは最初にまわった住宅街だった。
なんじゃそりゃ!
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