「“弱み”+〇〇⇒“強み”」で売れる商品をつくるのが強いマーケッター
「この商品…どうやって魅力を訴求したらいいの?」
(メーカーマーケ担当)「今回の商品、あまりイケてる推しポイントがないんだよね…」
(代理店プランナー)「この商品あまり好きじゃないから、どう魅力を訴求すればいいか分からない…」
商品のマーケティングに携わる皆さま、こんな風に悩まれた経験はないでしょうか。
この気持ちは私自身、経験から痛いほどわかります。
けど、私たちはマーケ担当である限り、その商品の魅力を発信し、お客様に買っていただくのが役割。
「魅力を感じないから担当したくない」では、プロとしては失格と評価されてしまいます…。
こんな風に悩んだとき、どんな風に商品のマーケティングに向き合えばいいか。大切にすべきマーケ思考を綴っていきます。
マーケティングにとって一番大切なことは?
私が商品のマーケティングをする上で一番大切だと感じているのは、「いかにその商品の”特徴”を活かした訴求をする」か。
これは一見、とても当たり前のことを言っているのですが、現場では実際、これをマイナスの方向に考えてしまうことが少なくないです。
もちろん大前提として、お客様のことを考えていない粗悪な商品の魅力をでっちあげるとか、効果を過大広告するというのは倫理的に×です。
一方で、そういうケースではないけれど「この商品にあまり魅力を感じない」場合。
よっぽど特徴がないなら別ですが、通常は弱くても何かしらの特徴を持っているものの方が多数だと思います。その特徴が、担当者にとっては魅力的でない(≒弱み)のかもしれません。
しかし商品の特徴というものは、見方によって、弱みにもなれば強みにもなるもの。弱みと強みは常にセットです。すべての人に嫌われるorすべての人に好かれる特徴は、おそらくないといっていいのではないでしょうか。
つまり大切なのは、その”弱み”をいかに”強み”に転換し、ターゲット層に訴求することができるか。
商品特徴と訴求がみごとにカチッとはまり、一貫したストーリーを持ってターゲットに届いた時…お客様はその商品の効果や世界観を強く実感・体感し、ロイヤルティが非常に高くなるのです。
どうやって弱み→強みに転換するのか?の成功事例
それを体現したブランディングの成功事例をご紹介します。
「小さな会社を強くするブランドづくりの教科書」という本の著者、岩崎さんは、静岡県立大学の教授で、地域のマーケティング・コンサルも手がけておられます。
彼は「アメーラ・ルビンズ」という静岡県産トマトのブランディングを担当し、みごと成功!参考にしたい戦略はいくつもありますが、特に商品の「弱み→強み」への転換の好事例が次の2つ。
※楽天ショップから画像引用
・ヘタがない(通念では不良品とみなされる)という【弱み】→形がフルーツのようで美しい、ごみが出ないという【強み】に転換
・皮がかたいという【弱み】→歯ごたえがある、肉厚という【強み】に転換
このような”強み”訴求により、一般通念では”弱み”と捉えられかねない特徴が、むしろターゲットには”強み”として際立って認知され、結果的に商品へのロイヤルティをさらに押し上げることとなったのです。
大前提に、
・グルメ層にターゲットを絞る
・競合が少ない独自のゾーンにポジショニング(機能性&洗練されたイメージという情緒価値の提供)
・カップの形状はトマトと同じ楕円形。おしゃれ感、プレミア感を感じるデザインに。
・口コミの種をまいた(”アメーラ”は”甘い”の静岡弁、高糖度で見ずに沈む、星のマークが出る、など)
など、素晴らしいブランド戦略を複合的に進め、一貫したコンセプト・ストーリーにもとづきターゲットに訴求したという点は外せませんが…。
大切なのは、狙った「グルメターゲット層」に対し、彼らが好みそうな尖った特徴(=希少品)を打ち出した、ということ。つまり、”弱み”に顧客視点を足したことで、”強み”に転換したのです。
岩崎さんは、こんな風にもおっしゃっています。(引用ではなく要点まとめ)
・売り手の認識する品質のものさしと買い手のそれとは、一致しないことが多い。プロ(売り手)の評価と消費者の評価には、まったく相関がない。
・強いブランドは自らが優位に立てる文脈で勝負する。逆風を逆方向に進めば、追い風になる。脅威や弱みは機会や強みにも変化しうる。業界の常識とは、多くの人がそう考えている、にすぎない。
これはまさに、一般通念を疑い、顧客視点で発想した結果、(弱み→強みへの転換も含め)新たな価値(商品)をターゲットに提供した考え方だと思います。
この他にも、ブランディングやマーケティングに関してとても勉強になる話がたくさん書かれているので、ご興味がありましたらぜひ読んでみてください!
例えば化粧品開発の現場で、起きうる失敗
数年前。私は化粧品会社で商品開発(&マーケ)をしていましたが、実際に現場で働いていた経験をふまえて、今思うことを書きとめておきます。(実際に起きたことでなく、一歩間違うとこうしちゃうなと危機感を持ったことです)
例えば、来期に向けてファンデーションの商品改良をするとします。
自社のファンデーションは、少しツヤっぽさが出る油性感が特徴。でも担当者の私は、陶器肌のようなマットさのある仕上がりの商品をつくりたい。
どのメーカーのどの商品かは明かさずに、消費者に他社商品も含めていくつかのファンデーションの使用テストをしてみた結果…自社のものはやはり油性感が高く出て、他社の商品はマット感が強く出た。
私は納得がいかず、研究所の処方担当者に「もっと●●社のようにマット感を出してください」とお願いする。
…これは、果たして良いマーケティングになるのでしょうか…。
もちろん、マーケティングの正解はひとつではないです。マットの方向に修正するのはひとつのやり方。
その背景が担当者の好みという主観ではなく、市場トレンドや、マットな他社商品が売れている、という状況にもとづくものなら、なおさらそうかもしれません。
しかし、単に市場トレンドにのっかったり他社商品をまねるブランドは、ロイヤルティの高いファンをつくることができるのでしょうか。
もし、自社の処方が伝統的に「油性感」が強いものなら、それを強みとして「ツヤ肌仕上がりを求めるターゲット」を狙って訴求をする、というのこそ、商品特徴を活かしたマーケ戦略として一考すべきではないかなと感じます。
「うちのは油っこい」とネガティブに反応し、テストを重ねて消費者エビデンスをとり、「うちの商品が他社より売れていないのは、商品力が弱いからだ」と考え、隣の芝生的に他社の処方に近づけようとする…
これでは、他社の類似品(へたをすると劣る商品)を出してしまうリスクもありますし、マーケティング的にも二番煎じとなり、強いファンは生まれないのではないかと感じます。
商品力を見直す前に「この特徴を強みとして打ち出すことはできないか」「マーケティングは思考し尽くしたのか」を考えてみること。これが強いマーケッターだなと、自戒を込めて今は思います。
(もちろん、「市場ニーズ(売上規模)はあるか」「ターゲットニーズはあるか」は大前提に置きながら、です)
まとめ
「”弱み”+顧客視点⇒”強み”」
これが今回の記事で伝えたかったことの一番です。
特徴は個性であり、強みになりうるもの。つぶす前に、活かすことはできないかをマーケッターとしてとことん考えぬきたいなと思います。
人と、同じだと思います。
弱みをなくすことよりも、強みと捉えられるところを伸ばしたら、強烈な個性となり、誰かに求められたり共感する強い仲間ができたりするもの。
そんな風にポジティブに人の強みを捉え、伸ばしたり配置を考えられる上司や人事の方々って、組織づくりがとてもうまいですよね。
マーケッターとしては、まさにそんな風に、商品とお客様をマッチさせていきたい。そういう発想の転換を考えぬける人こそ、新しい視点や市場を生み出す真のマーケッター!と憧れ、そこを目指しながら、日々精進中です。
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