2018.9.18にみた夢
今日は旅をする夢だった。
『荒廃の惑星』
舞台は荒廃した地球。或いは砂漠の惑星で、私は20歳前後の女性となりロボットと旅をしていた。
そのロボットと出会ったのは偶然だった。
砂に半分埋もれた奴を、誰かが遺していったリュックか何かだと思ったから掘り起こしたのに。出てきたのは訳の分からない機械の大男(?)だった。
ロボットは私を王女と呼んだ。
「私はそんないいもんじゃないよ」
「イイエ。貴女はワタクシのお仕えする王族の血筋の方デス。間違いありまセん」
それから。私が水や食料を漁る為に彷徨うと、そいつは影みたいについて来た。鬱陶しいことこの上ない。
「もうここには何もないかぁ」
「イエイエ。宝の山デスヨ」
風化した建物を未練がましく探索していると、ロボットは言った。
見回してもあるのは壁に使われていた石と砂、すな、スナ。砂だけだ。
しかしロボットは手を伸ばすと、そこにあったコードを無理矢理引き千切られたタコメーターを掴んだ。
ボロボロの布の下から胸部が開き、ロボットはそこにタコメーターを無造作に放り込んだ。
驚いて見つめていると、ロボットは表情筋の無い顔で得意気な顔をした。
ムカついたので無視して探索に戻った。
ロボットはその後も鉄屑を取り込んでいった。二足歩行のロボットってだけでも珍しいのに、何やら現代に無い技術で創られているらしく、その辺に落ちてる機械で自らを改造出来るらしい。オーパーツとか、超科学とからしいけど私は興味ない。生きるのに忙しい。
そのうち奴はバギーになった。乗ってくれとせがむ。
「そんなのより、水源探査機とかになれないわけ?」
「基本的に開発者が設定した物にしかなれまセン。しかしながら乗り物なら大抵の物になれマスヨ!」
使えない。
まぁでも、歩くより早く次の街にいけるんだからいいか。自分に言い聞かせ、喋るバギーに乗り込んだ。
しばらく走っていると、前方に何やら黒影の集団が見えた。
あ、やばい。と思った時には遅かった。
しまったな。こんな目立つ物で移動するんじゃなかった。
「どうしましタ?」
「軍だ」
私は武器を持った人々にあっという間に取り囲まれた。もちろん抵抗する気なんてない。
「女。良い物を持っているじゃないか」
武器を構えているどの人よりも偉そうな格好をした男が私に話しかけてきた。
年は私と同じくらいなのに随分な差だ。
私は砂がかぶり放題の外套に何ヶ月も梳いてない髪。唇だってガサガサだ。
なのに偉そうな男は、清潔そうな白い軍服に髪だって艶々している。もしかしたら肉だって食っているのかもしれない。羨ましい限りだ。
「ハア。良い物だなんて、ありがとうゴザいマス」
私の変わりにロボットが答えた。
途端に男の整った眉が片方吊り上がる。
面倒だなと思った私は経緯を全て話した。ロボットの特性も全て。落ちていたのがついて来ただけです。はい。
「素晴らしい。女。こいつを譲れ」
丁寧な事に、手には先程はもっていなかった銃をこちらに向けて持っていた。
そんな事しなくても、譲りますとも。
「ワタクシは王女様のご命令しか聞きマセン」
「……王女?」
「このポンコツが勝手に呼んでるだけです。多分、主人と決めた人を王様女王様と呼ぶんですよ」
「……まあいい。早く権利を譲渡しろ」
「ワタクシは王女様のご命令しか聞きマセン!」
「いいから。このお方の命令を聞くんだよ。ほら、それが命令!」
「NO!」
「早くしろ。やり方を知らんのか」
「……なにせ拾った物なので」
絶望的な気分になった。
「そうだな……。おいロボット。乗り物なら何にでもなれるらしいな」
「…………」
「ちょっと! 乗り物なら何にでもなれるんでしょ!?」
「ハイ。何にでもとイワれると語弊がありますが、大抵の物には」
なにこれ。もしかして伝言ゲームしなくちゃいけないの?
偉そうな男の人も同じ事を思ったのか、私に向き直った。
「とりあえずだな。我々は巨大な兵器が要る。こいつを大きくしておけ」
……あいあいさー。さすが。偉い人は命令しなれてらっしゃる。
仕方がないので旅の目的を変更し、ロボットを大きくしていった。
沢山の機械や燃料を見つけてはロボットへと放り投げた。それらを全て取り込み、あっという間にロボットは巨大な飛行機になった。
何十人と乗り込めそうな大きさだ。
私は「これで旅をしたら随分遠くまで行けるんだろうなぁ」と暢気に考えていた。偉い人には予想外の大きさだったらしく、他の軍人と一緒に少し引いていた。
「中に入ります?」
「……お前が先に行け」
階段を登って中に入ると、とても鉄屑を取り込んだだけとは思えない綺麗な空間だった。そして冷房完備らしくとても涼しかった。ロボットを拾ってから初めて喜んだ気がする。
偉い人はずっと心なしかビクビクとしていた。私はそれには気づいてないですよ〜と言う風に歩いて行く。
コックピットは無いようだ。
ロボットが「もっと大きくなれマスヨ」と言ったので偉い人は固まっていた。
「へぇ。見たい」
と私が言うと、ロボットは今度は勝手にどんどんと周りの機械を吸い込んでいった。もはや軍の戦車も掃除機で吸うみたいに飲み込んでいく。
取り込みながらロボットはどんどん形を変えていった。
眼下に映る影で判断する限りでは、もはや小さな島と言える程の大きさだ。
翼は大きく3対に伸び、胴の部分は戦艦のよう。黒く不気味に育っていった。
『ああ。ようやく私の望んだ姿になったか』と、ほくそ笑んだ所で目が覚めた。