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漫画で描く「キャラクター」や「感情」

こんばんは、もしくはこんばんは。

漫画の描き方の指南書だったり、編集さんの感想やアドバイスだったり、漫画好きが読んだ時の感想で必ずと言っていいほど耳にする言葉、

「キャラクターを描け」
「感情を描け」

この言葉について、漫画を描く人で言われてもいまいちピンと来ていない人を多数見かけたので、ボクなりの解釈で翻訳みたいなことをしてみます。

※あくまで個人の解釈ですが「〇〇だと思います」みたいな描き方が続くのはダルいと思うので、便宜上断言する形で書きます。


まずキャラクターとは何か。
簡単に言えば、一人の人間です。
人外の場合もあるので、人格と言った方が分かりやすいかも知れません。

よく「ストーリー重視」みたいなことを言われる漫画がありますが、ストーリーだけを楽しんで漫画を読んでる読者はいません。
主人公や脇役、敵役などの「キャラクター」を通して、そのキャラクターで進むストーリーだから楽しんでいるんです。

例えば『桃太郎』という誰もが知るお話を原案に10人の作家がそれぞれ描くとしたら、勝ち気な桃太郎、弱気な桃太郎、バカな桃太郎、インテリ桃太郎など、作家に依ってそれぞれ違った性格・人格の桃太郎を描きます。
ストーリーのみの桃から生まれた男の子が成長して鬼を退治に行くだけの行動を描いたものをエンタメ商品として成立させられることはなく、まず桃太郎や犬猿雉などの人格を作りそれらのキャラクターが冒険する内容であることが最低条件になります。

ではその「キャラクターを描く」といったものは具体的にどう表現するのか。
そこで一番わかりやすく描けるものが「感情」です。

感情とは何かというと、理屈でなく無自覚に湧き起こる抗えない思考とします。
理屈による思考は自分でコントロールできますが、感情はコントロールできません。

このコントロールできず勝手に沸き起こる思考を

・何で湧き起こるか
・湧き起こったときどういった行動に出るか

この2つで表現します。

例えば玩具をいじめっ子に壊された男の子の感情を描くとき、怒りを持つのか、悲しみを持つのか、いじめっ子に復讐できるという喜びを持つのか等、何かが起こって湧き起こる感情は千差万別です。
そして、その感情が起きた時どう行動するか、怒りなら殴りかかるのか地団太を踏むのか別の自分より弱い相手に八つ当たりするのか、悲しみなら泣き叫ぶのかうずくまるのか逃げるのか、といったように表現します。

また「感情」の中には「欲望」といったものも含まれます。
怒りや悲しみだけでなく欲求も含めた上で「何をどう感じた結果どう行動に移すか」ということです。

この「感情」や「欲望」による行動に納得できた時、また納得とは違っても「面白い」と感じられた時、編集さんらは「キャラクターがある」「感情が描けてる」と評価します。

つまり、「キャラクターを描け」と「感情を描け」というのは殆ど同じ意味です。
ギャグマンガなどで感情を描かずに言動だけを面白いと感じられるキャラクターを描くって漫画もあるので完全にイコールではないですが、ほぼ同じと捉えていいです。


では、何故キャラクターや感情を描かなければいけないのか。
それは「読者が漫画を楽しむために必要」だからです。

先述したように、読者はストーリーというものをキャラクターを通して楽しんでいます。
キャラクターを見たくて漫画は読まれます。

ではそのキャラクターでどう楽しみたいのか。
一言で簡潔に言うなら「共感」です。
キャラクターの感情や言動に共感して楽しみたいのです。

が、ここで補足しなければいけないのが、「共感」と聞いてすぐに思い浮かべる「同じ思考や感情に同意すること」だけではないということです。
それとは別で「自分では発想してなかったけれど良いな」と思えること、「良さがわかる」という意味も含めての「共感」になります。
(良さがわかるということは自覚がなくても自分の中にある感性ですが、共感と別で考えた方がわかりやすいのでそう分けます)

「自分と同じだという共通点と良さがわかる気付き」
この2つで読者に共感して楽しんでもらうために
感情をキャラクターで表現した漫画を描け

これが「キャラクターを描け」や「感情を描け」といった言葉の内訳です。


もう1つ付け加えると、それが読者に届く絵の力を漫画業界では「画力」と呼びます。
「画力が足りない」と言われた人は物の形を正確に取るデッサンとか質感表現的な意味の方の画力と勘違いしがちですが、漫画に於ける画力は感情を表現できていて共感できるかどうかを指します。

勿論デッサン力とかの方の意味で言われることもありますが、最低限何が起こっているかわかる絵にさえなっていればそっちの意味の能力を伸ばす優先度はそこまで高くなく、それよりも表現したい感情を届ける意味の方を伸ばす方が重要です。

一般的に見てそこそこ上手いと言われる絵の人が編集さんに「画力が足りない」と言われ相手にされないことがあったり、一般的に下手だと言われる絵の人でもプロとして活躍してたりする人がいるのはそういった理由です。


以上のことから

・キャラクターがない
・感情が描けてない
・共感できない
・画力が足りない

という4つの言葉は、ほぼ同じことを指してると思っていいです。

それらの要素が乏しいと、作者が面白いと思って描いた漫画の良さが届かないです。
いくら描いた自分は面白いと思っても、読んだ人にその面白さが届かないと「漫画が面白くない」という感想になります。



漫画に於ける「キャラクター」や「感情」という言葉を改めて考えて言語化してみましたが、それらの言葉に悩む人がもしこの文を読むことで「そういうこと言われてたのか」と少しでも自分なりに解釈するヒントになれば幸いです。

というお話。

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