悪夢
静かな部屋に響くテレビの音
シャンデリアについている風車が回っている
少し空いた窓から吹き込む風は春のにおい
揺れるカーテン
窓から差し込む朝日が綺麗で
背筋がしゃきっとした
とても心地のよい朝
パパはソファでテレビを見ていて
妹はドアのそばに座って眠たそう
ママはキッチンに立ってお皿洗いしてる
パジャマを着たまんまの僕は
びりっけつ。
そんな僕にも「おはよう」がきこえる
こんな幸せな朝に今日も会えると思ってた
アラームが床で暴れてる
眠い目を擦りながら
「おはよう」
家族へ挨拶をして
部屋に入る
いつもと同じ景色
いつもと同じ空気
いつもと同じ朝
いつもと違うものが、一つだけ。
「おはよう」がきこえない。
動かない。
まるで、
僕以外の3人だけ
時間が止まってしまったかのように。
動かない。
…まただ。
僕はいつも見る夢の中にいた。
気づいた瞬間、辺りが薄暗くなる。
起きたら世界が一時停止しているように
動かない。もしくは早送り。
僕だけが、みんなに見えない。
声も届かない
透明人間になったような
そんな夢を
小さい頃からよく見る
みんなの隣に1人ずつ
皆の鏡の中の皆が、半透明になって現れた
同じ格好、同じ顔、同じ色
ドッペルゲンガーだ。
ぼくのはいない。
「息。してるかな」
心配になって妹に駆け寄った
しているわけがなかった。
僕は、隣に座ってる妹のドッペルゲンガーに
むかって睨んでやった。
こいつが現れると、みんな息をしなくなる。
まねっこマンめ。許さない。
いつもいつも、
どの夢の中でも助けられないんだ
悔しいの。
「絶対に、そこから動かないでね」
ドッペルゲンガーに注意した
立ち上がった瞬間
キッチンから包丁が飛んでくる。
それは僕の頭上を通り過ぎて
壁に突き刺さった。
驚いていると、
妹の分身が動いてどこかへ消える。
「動かないでって言ったのにな。」
いっつも言うこと聞いてくれない。
包丁を壁から抜いていた時
扉が開いた。
ここまでは、昨日夢で見たのと同じ展開
今日は何が起きるんだろう。
怖い。
僕は頭をフル回転させた
暗い暗い扉の向こうから覗いた手は
半透明だった。
それが誰の手かは何となく
察しがついていた
テレビを消して。窓を閉めて。
電気を消して部屋を真っ暗にする。
みんな動かない世界にひとりぼっち。
もういっそのこと
僕も皆と一緒に息をしなくなったって
構わないとか思っていた
むしろそれを望んでいた。
でも、いざ見えてしまうと怖かった
目を瞑ってうずくまって隠れる僕の後ろで
電気をつける音がした。
「だめだ…」
終わった、と思った。
僕の後ろに誰かいる
逃げ道なんて探す必要は無い。
お迎えが来た。
最期だろうし、僕から会ってやろう。
僕のドッペルゲンガーさん
こんにちは。
君が振り向いて
目が合った
と思っていた。
君はまるで僕のことなんて
見えてないかのように歩きだす
僕の体をすり抜けてまた歩く
「あれ?」
君なら僕が見えると思ってたのに
「おかしいな」
不思議と怖くなかったその視線は
僕が見えていなかったからだろうか。
おかしい、まだ息してる。僕。
「ねぇ」
僕もみんなと一緒に息をとめたいの
みんなと一緒の夢を見たいの
僕の息を止めることは君にしかできないんだ
君は僕で、僕は君なんだ
僕のしたいこと、わかるでしょう?
お願いだよ、
僕をみつけてよ
ひとりぼっちの朝を、おわらせて
「意地悪。」
迎えに来てくれたと思ったよ
君ならみつけてくれると思ったよ
この悪夢がもうすぐ終わるって
期待しちゃったじゃないか
明日もきっと同じ夢を見る
でも、何故か明日は
君が現れないような気がした
「みつけてよ」
僕は泣いていた
。
目覚ましが床で暴れてる
目覚めた僕の頬は濡れていた。
「おはよう」
が聞こえない朝
何度も見るうちに
当たり前になっていた
僕だけがいない世界
僕が僕を見つけてくれた。
そんな気がしたけれど
やっぱり今日も僕は透明人間だった。
目覚ましを止めて顔をふいた
眠い目を擦って部屋に入る。
みんなに向かって
「おはよう」
少し声が震えた
「おはよう!お寝坊さん」
母の声
本当の朝にまた会えた
自然と笑顔が溢れて、
「おはよう!」
もう1回。
いつもの朝、おかえりなさい
こんな幸せな朝が、ずっと続きますように
。
。
小さい頃よく見てた夢。
今でもたまに見ます。
ドッペルゲンガーが出てくる夢は何故かよく見るので、僕は僕のドッペルゲンガーのことを「ドっちゃん」って呼んでいます。
可愛いでしょう?ちなみに貞子とかも「さっちゃん」って呼びます。
怖いものは可愛く呼べば怖くない説!
いっぱい訳分からないところありそうごめんね
ここまで読んでくれてありがとう。
良い朝に会えますように
おやすみなさい!