眠り姫
am.6:00
「何時まで寝てるつもり?!」
母が起こしに来た
僕は起きた。
目を開いて、返事をしようとする。
あれ。おかしいな、声が出ない
「今日、教習所でしょ?何時からなの?」
4時からだよ。
一生懸命伝えようとしてでてきた言葉は
「んー!」…あれ?
「もう。4月から社会人なんだからしっかりしなさい。知らないからね。いつまでもぐうたらしてらんないんだからね。」
ねぇママ聞いて。声が出ない
母は部屋を出ていった
おかしいなぁ
自分の体じゃないみたい
僕は目を瞑る
つま先から指の先、頭のてっぺんまで、
自分の体を取り戻すように
感覚を確かめていく
目を開いた
声は出ないけど手は動く
枕元にあった携帯を掴んで文字を打つ
「よじから」
母に送った
返事は「?」
なんのこと?といわんばかりのはてなで驚いた
そっか。主語がない
「教習所、今日よじからだよ」
「あそ」
あれ?質問してたじゃない
覚えてないの?
不思議になって母に色々聞いた。
起こしに行ってなんかないよって言われた
夢だった。
最近夢と現実がごちゃまぜになって混乱する。
今日の予定だと思って準備したら明日だったり、明日だと思って眠ってたら今日だったり。
昨日は友達と遊んだんだ。たのしかったなぁ、また遊びたいなぁ、どこに行ったんだっけ。あれ、友達?誰と遊んだんだっけ?思い出せない。
あれ、あの子だれ?
…夢だった
なんてこともよくある。
恐ろしいよ。
現実の人との会話が成り立たないんだ
こんなに恐ろしくても
僕は見たくて見てるんだ
なぜ見たがるのって
全ては現実逃避なのである
小学生の頃から僕はいつも
何か嫌なことがずっと続いて
死にたくなるような
でも死んじゃいけない
そんな勇気もでない
そんな生きた自分に嫌気がさして
これでいいやって死んだように眠る
これなら現実じゃ生きてることになるし
嫌なこと全部忘れて違う世界へ行ける
全てをシャットダウンできる
素晴らしい現実逃避である。
顔も名前も忘れちゃうような
友達を夢の中で作る。絶対に裏切らない
会話にならない会話が僕の口を動かなくする
お風呂に入らなくても綺麗なまんま
世界がキラキラ輝いてみえる。空だって飛べる
大人も子供もない。時に残酷で時に幸せで
生きてるように死んでいる世界
居心地が良すぎてまた来たくなっちゃう
目が覚めて、
僕は現実に生きなきゃいけないって
思い出した瞬間、怖くなる
こんなことなら一生覚めなきゃいいのに
ほら、また逃げた
眠り姫を眠らせるのは誰ですか
嫌になっちゃう世界が悪いんですか
それとも誰かが悪いんですか
逃げたくなる僕が悪いんですよね
4月から社会人の僕は
もう眠り姫は卒業しなくちゃなりません
目を瞑って耳塞いで
見ない聞かない眠っちゃえの現実逃避なんて
子供すぎて大人になるなんて程遠い
こんな眠ってたらおいてけぼりにされちゃうよ
早く起きてよ朝だよおきてよ
見たくないもので埋め尽くされた
こんな世界が僕を殺してく
いつか本当に死んじゃいそうで怖いんだ
大人になんてなりたくないんだ
この世界楽しんでますか?
病んでますごっちゃです御免なさい