一年おきに大晦日に帰って来る娘の事を私は首を長くして待っていた。だが、今年は帰らない。生きてるならそれで、良し、と自分に言い聞かせながら、夢が崩れていく。
ドアをあけて 闇の中へすべり出た ほのかに漂う甘ったるい匂い おずおずと夏の夜が横たわる どこかで叫び声が聞こえた 発情した猫のような 生きていたなら 飽きてしまうこともできただろう 未だ離れないでいる意識 私の肉はくたびれ ぽんこつ 取引されないままの敗残者 ひっそりと 百合のような白い手が ひやっと 蛇のように どうかしているどうかなりなよと 異業たちが耳元で囁くから ゆるい夜気の ループに入っていく
僕の姿が 見えなくなったからといって 悲しまないでください いつものように 冗談を言い合って 皆と会ったときに陽気な口調で 僕の名前を出してください 買ったばかりの中古で Tさんと三人でドライブしましたね 僕のお気に入りの海岸 三月だから人はいなくて 熱いコーヒー飲みたいなと 村上春樹は 僕の方が読破していて あなたは少し悔しそうだった 「騎士団長殺し」は読む前に あなたに貸してあげた 何故だかわからない 僕の詩を あなたは褒めてくれまし
リーダーとの別れが、あんなに早くくるなんてあの時は思いもしませんでした。出張先のホテルの浴室で亡くなったと知らせがきたのは、5日後のことでした。
同人誌で小説をかきはじめた頃、リーダーが「詩を書いてごらん。君が探していることばがみつかるかもしれない」と教えてくれました。素直になれない私は逆らってばかりいたのです。