どうも菅田将暉です。本物です
「どうも菅田将暉です。本物です」
これを本人が言おうものなら悲鳴に近い歓声があたりを包むだろうが、その日このセリフを発したのは、白髪混じりの中年でちょいデブオヤジ。
歓声の代わりに沈黙があたりを包んだことは言うまでもない
沈黙の現場は教習所と呼ばれるところである。私はこの秋から自動車の免許を取ろうと考え、その日は初めての教習所で私は適性検査を受けに行っていた。30人程度の人が一つの教室に入り、諸々のテストをうけ、性格判断のようなものをする。
そして、その説明のために来たのが我々にとって初めての講師となった、この菅田将暉(中年ちょいデブ)なのである。
「どうも菅田将暉です。本物です」という彼の第一声を聞いた時、皆同じことを感じたと思う。
oh.....
これが率直な感想だ。
私が教室の空気感に戦慄していると、オヤジは続けてこういった。
「今の笑うところですよ笑」
oh.....
皆さんも一度は経験があるのではないだろうか。こういうオヤジは止まらないのである。一言一言が沈黙を深めていく。
私は問う。ここは自動車の免許を取る場所ではないのか!沈黙に耐える修行の場になっていいのか!オヤジのギャグにブレーキを教えるのが今一番必要ではないのか!(全然上手くない)
そう考えていても、沈黙は止まることを知らない。
しかし、この感じどっかで見たことあるな…
オヤジっぽいギャグで、このモソっとした声質。
あっ、ずん飯尾さんだ。
菅田将暉であり、ずん飯尾でもある。
そう思うと途端に面白くなる。イメージというのは不思議だ。
かなり早いペースで滑る回数を重ねる話にも慣れた頃、彼はこう言った。
「どれだけ安全だと思っても過信してはいけません。信じるという言葉を安く使ってはいけないんです」
おぉ、いいことも言うんだ…
「私も13年ほど前ですかね、ある女性に『俺を信じてついてこい!』って言ったんですよ」
あれ
「現在別々です笑」
すしざんまいみたいなモーション
重いっ!ずん飯尾の声で重いっ!すしざんまいでも隠しきれない重さっ!
このような様々な種類の沈黙の時間に50分ほど耐えその日は無事に終わった。
その後何回かその方の授業を受け、きちんと教えていただいているので安心してもらいたい。
きっと免許を取る頃には、安全運転ができるようになり、沈黙にも耐えられる男になっているだろう。