気にせんでええ
四国で孤独に暮らす超わがまま気ままな実母
(84)が、今回ひざを悪くして手術と入院をすることになり、関西にいたわたしはその世話係として呼び寄せられ、現在わたしは実家のある四国にいる。
が…、
母は入院してません。
何故か手術もしてません。
家におる。
ドタキャンしました。
やっぱやめるといいました。
「にみり、先生に断ってくれ。」
と言われたのが
入院予定の1日前。
はあ〜〜〜っ?!
いやいやいや、ならわたしは、なんで呼び寄せられたんや?
訳を聞いたら医者はアタシをバカにしている。不信感を抱き始めた。
なんか、腹立つ。やから
や、め、る。
やて。
ようよう聞いたら、もうひざの激痛が治ったから今、慌ててせんでもええやろとおもた。
………………………。
呆れてモノが言えん。
言い出したら周りが何を言おうが聞く耳を持たない母だからとりあえずわたしは
ぺこぺこしながら医師に断りを告げた。
先生すいません。ぺこ。
実は…ぺこ。
あーで、
こーで…ぺこ。
実はこれ、今回が初めてではない。
入院関係のドタキャンは三回目である。
1年ほど前には手根管手術をやめた。それから今回のんとか、「やーめた」はアノヒトの専売特許である。
たぶん、ありとあらゆる病院のブラックリストに載っていると思われる。
どおりで今回の医者も、
「わっかりましたぁー」
みたいな感じやった。
(少々盛ってます)
病院側の準備やらなんやらかんやらに相当な迷惑かけているのでこの場を借りて謝罪いたします。
まことに申し訳ありませんでした。うっ💦
今回、1日前まで入院と手術を受け入れてた母だったが、医師に断りが成立したとたん、用意していた入院カバンを鼻歌まじりでほどいている。
アノヒト、いったい情緒をどこに置いてきたんだろ。ったく。
てな訳でミッションを失ったわたしは、せっかく四国に来たんだしこれを有効に使わなきゃもったいない。
この機会に実家の断捨離をしよう!
まずは庭の物置。
扉を開けると荷物が雪崩こんできた。
ほとんどいらんもん。
「つけま専科」っていう昭和レトロな漬物製造機がでてきた。
しかし、母はいつも冷蔵庫の中できゅうりや茄子を放置。
いわば冷蔵庫で腐敗野菜を製造してる。
やぶれかぶれでハゲハゲのサンダルは誰が履くためにとっておいたんやろうか。
他になんの用途があるというのか、底なしのバケツ。
お鍋やフライパンを屋外物置に置くなよ…。
使い終わったホウ酸団子を大事に集めて箱にいれてるけどこれなんのためじゃ?
全ての疑問に母は答える。
「思い出やなぁ」
しみじみと青い空を見上げるが、
その先にあるものは失笑しかない。
物置きの中は同じものがいくつもあった。
推測するに、いざ使おうと出そうとしても奥に詰まって出せないからまた買う、この悪魔のループなんだろう。
それからこの際、2階を寝室としていた母の部屋を1階に移動したらどうか、と提案した。
ひざを痛めた事実もあるし、いい機会やと思った。
が、
断られた。
「アタシゃまだ登り降りができんような歳やない!」と。
いやいやいや84歳である。
世間でいうところの
立派に老人である。
すったもんだの問答を繰り返した。
入院と手術の後のリハビリに備えてわたしの夫が今回長期の夏休みを取ってくれていたから、ベッドや、家具を1階に降ろすにはちょうどいい。人手が多い方がいい。
この機会を逃すわけにゃいかん。
すったもんだと説得。
死に物狂いで説得。
で、ようやく
「わかった。」
と
ボソリ呟く母。
おぉ〜✨😭
夫と一緒に家具を一階におろす。
腰をいわしてしまった。
余談だが、この「いわしてしまった」は、関西人ならではの表現である。
大学生の寮で青春している娘が手伝いにきた。
大学院生で教育学を学んでいる三男もきた。
なんてええ家族や。わたしの家族。✨
現在84歳になる母はどんだけ〜ってくらいの服をもっている。8畳くらいの部屋は裕に埋まってしまうくらいの。
その量は、おそらく200歳生きても衣服には困らない。
一階(母の部屋にしようとしている)和室の押し入れにパイプをつけてクローゼットにしたいと言う母。業者に取り付け依頼の見積もりを電話をしようとしている。それを見ていた三男が母に言った。
「ちょっと待って。俺ンちはつっぱり棒を自分でつけたよ。業者に頼むと工賃かかるからお金が高くつくけど、つっぱり棒なら格安やで」
と助言。
ドケチ…いや倹約家の母によかれと思った提案だった。
が、母は、
「つっぱり棒なんかすぐに落ちる!」
と否定。
ハナから否定。
ネガティブな思い込みの激しい母。
昔からである。
わたしが「まずやってみて落ちたらその時また考えたらええやん」
と言ったが母は
まるで聞いてへん。
いや落ちる。
絶対落ちる。
必ず落ちる。
と激言する母に三男が
「俺ンちはもう2年になるけど全然落ちてへんよ。大丈夫やで」とやさぁしく言葉をかける。
しかし一度思い込んだら槍が降ろうと斧が降ろうと
落ちる!落ちると言い張る。
なぜかケチ…倹約家の母が、お金のかかる業者頼みを激推しする。なんでや?わからん。
で、
出た母の言葉が、
「あんた(三男)とのやりとりは時間の無駄やった。」
母にとって自分の考えに同意しないモンは敵である。
一生懸命手伝ったり、提案したりしてくれる人に対して、その言葉はなくね?
とわたしは憤ったが、三男は静かに言った。
「ばあちゃん、その言葉は俺、ちょっと傷ついたよ。色々考えたり手伝ったりしてるのに『時間の無駄やった』なんてショックやで。」
母は
「あん?そんなん誰でも日常茶飯事に言うわ!」
と涼しげな顔で言ってのけるのだが、
母の日常茶飯事とは母の作りあげた独自の世界でしか通用しない。
で挙句に
その後、
「あんた(三男のこと)春から小学校の先生になるんやろ、そんなんじゃ生徒(児童)に嫌われるわ!」
と言う母。
…………。
そんなんじゃってどんなんじゃ?
ひどすぎんか、そんな言葉たぁ。
わたしは彼(三男)が講習や交流会や、ボランティアやらと勉強し、ひまがあれば学級経営の本を片手に頑張ってる彼を知っている。嫌われるセンセにはならん!!
生徒に嫌われるやなんて、ンな言葉を軽々しく言うな、タコヤロウ!イカBBA!
涙ちょちょぎれるわ。
ちょちょぎれどころか滂沱 の涙で沈めたる。
しかし三男は冷静だった。
母のいないところで三男が言った。
「嫌われるかどうかは子ども達(児童達)が決めること。他の誰かが勝手に決めつけるもんではない。せやからそんな言葉は相手にせんでええねん。」
「それに俺、自信あるし。」
と。キッパリ。
きゃっ✨
惚れてまうやないか。
「ばあちゃんは、周りに恵まれない育ち方をしたんかなぁ…。寂しいんやと思うねん。やから、今精一杯楽しめたらええな。」
という三男。
コイツええオトコやな。✨
それから1ヶ月ほどして三男からラインがきた。
12〜3人ほどの仲間の笑顔に囲まれてすげーイイ顔した三男が、院の研修先から送ってくれた。
せやな。
この子達はきっといいセンセになる。
それでええねん。
#子どもに教えられたこと
#クソBBA
#ええねん
#つけます専科ってめちゃセンスあるネーミング
#滂沱の涙
#ええオトコ