ボストン旅行。ムスコに会いに。
ムスコがKatyaを連れてきた、その翌週のこと。大雪による学校閉鎖(snow day)が毎年5日ほどあるのだが、暖冬だったので使い切らなかったsnow day分を学年が終わる前に消化することになり、土日月の三連休の前に二日くっつけて木曜から休みになったので、二泊で遊びに行った。
ムスコは四人のルームメートと一緒に暮らしている。なぜか全員ヒゲをはやしていて、皆ムスコの見事な髭面を羨み、目指している。ムスメはなんで髭なんかにこだわるのか、髭面が好きな女の子なんて聞いたことない、と顔をしかめるが、Katyaは全然嫌がっていない。
一人が海外留学プログラムで今年1月から6月までの春学期をスェーデンの大学で過ごしていて一部屋空いているので、ホテルをとらずにそこに二泊することにした。アメリカ大学生の共同生活を垣間見れることになり、ムスメも私もワクワク。
ムスメが運転するようになったから、遠出が楽だ。ちょっと遠回りしてある大学を訪問し、ボストン入りしたのが夕方。歩くのが嫌いなムスメと荷物をおろしてから、予約しておいた駐車スペースに車を運び、10分歩いてアパートへ。
いわゆるブラウンストーン。外からの入口一つで四階建て。ムスコ達は三階と四階の5部屋を借りている。日本のアパートと違って、建物の中に入ってから、一階と二階の住人とは入り口が別にある。どういう理由でこんな構造で家を建てることを思いつくのだろう。鍵が二つ必要になるじゃないか。
キッチン。バスルーム二つ。四階=屋根裏に一部屋とリビングルーム的なスペースがあり、大きなテレビの周りに椅子とクッション。遊びにきた友達が泊まるスペースもそこにある。コンセント("outlet")から長さの違う2本の携帯充電用のケーブル("charger")が伸びていて、その壁からどのくらい離れたところの椅子に座っているかで、どちらかのケーブルを使う、ということらしい。ムスコらしい気配り(こだわり?)である。思考が私にそっくりで笑える。
ムスメもそうだが、頭がくるくると働いて、漫然とぼーっと生きてない。私が育てた子たちだ。
各自の部屋には、ベッドを中心に縦長の引き出し箪笥や勉強用の机が置かれ、洗濯洗剤やトイレタリーなどの生活必需品とかお菓子とか自分用のものがあり、壁には何枚ものポスター。この家のムスコの部屋の半分くらいの広さだろうか。その空間を彼なりに創っているのがわかって、思わず微笑んでしまう。
この家でムスコはいつもリビングにいて、お客もてなし用のダイニングルームの大きなテーブルで勉強して、ビデオゲームは地下のジムにあるテレビで、自分の部屋は文字通り寝るだけに使っていた。ちなみに、ムスメはまるで反対で、自分の部屋からなかなか出てこない。
アパートの状態。…..住めるのは確か。ドアは閉まるしキッチンは機能しているしシャワーも問題ない。が、ペンキ塗り直したら、見違えるようになるだろうに。
築14年になるこの家、誰が足を踏み入れても「素敵なお家ねぇ」「全然どこも悪くない。修理するところないね」といまだに言われるこの家で育った彼が、あのアパートで暮らすには、精神的にも実務的にも相当の調整が必要だったことだろう。キッチンがなく、シャワーもトイレも共同だった大学の寮で過ごした最初の1年が、ショック療法だったにちがいない。が、2年目をこの仲間達と一緒に暮らすことになり、共同生活の楽しさと共に、必要な妥協を学んだ。
私自身は大学寮には入らず、近くのアパートですぐに一人暮らしを始めた。マンハッタンの職場で出会ったExと付き合って1年後に、結婚を前提に同居するようになるまで、ずーっと一人暮らしだった。そして24年間の結婚生活。1年前のある日突然夫が出ていって、来秋ムスメが大学に進んだら、私はまた一人暮らしに戻る。ムスメと二人の生活を謳歌しているので、さみしくなるかなぁと思わなくはないが、おそらく大丈夫だろうというのは、Exがいなくなった後、毎日の生活が自分の思い通りになったなぁとしみじみ感じているから。
到着した夜は、ルームメート三人とムスコとムスメと六人で、イタリア街のNorth Endのレストランで食事をした。アパートから路面電車に乗ったのだが、料金をどうやって払うのかとルームメートの一人Jasonに聞いたが、なんかはっきりしない。突っ込むと、一番後ろの車両に乗って料金払わずに済ませるのだ、と言うではないか。「まともに払ってたら月$80にもなるんだ」とJason。
日本人の私には、驚愕もの、である。
電車が来て、最後部車両に乗り目的地まで30分近く乗ったのに、車掌はこない。目的地の駅はちゃんとゲートがあったのに、ちょっと開いた隙に六人で突撃して、無事無賃乗車達成。ボストンという大都市で、いったいどういう経営をしているのだろうか、この会社は。
レストランで外食するのは月に一度あるかないかだという大学生にご馳走して、また無賃乗車で帰宅。リビングに揃って全員でゲームをしようとするが、Wi-Fiの接続が悪いので、Disney+で始まったばかりのシリーズ"Obi-Wan Kenobi"を見る。
ムスコは、Star Wars博士、である。ルームメートも相当なレベルのStar Warsファンである。あれだけ嫌がっていたムスメが素直に見ていたのには驚いた。タマなしRyanとの共通話題模索、だろうか。
続き。
ただただ好きで書いています。書いてお金をもらうようになったら、純粋に好きで書くのとは違ってくるのでしょうか。