チェロ奏者の気転 クライストチャーチ周辺旅行【NZ】
ニュージーランドの10月は早春です。こんないい季節にオークランドからクライストチャーチにやって来ました。
サクラの咲き乱れるアカロアの街を、ブラブラと歩き回るのはとても気持ちのいいものです。
あっ、これは歴史的建造物。
この看板によると、今日は特別にここでクラシックコンサートがあるらしい。ケーキもついてくる。値段は書いていないけれども、とにかく入ってみよう!!
ここは、劇場というか講堂です。その昔、ヨーロッパから渡ってきた人々はここで音楽鑑賞をしたり、芝居を見て楽しんでいたのでしょう。古いけれども、良く手入れされています。
入ってみると、アットホームな雰囲気です。折り畳みの長テーブルにチェックのテーブルクロス。クラシックコンサートとは思えないくらいカジュアル。
テーブルに飾られた花は、花屋から買ってきたものではなく企画した誰かの庭から持ってきたに違いありません。花瓶は、ただの保存食を入れるような大きめの透明なビン。
何もかもが手作りで、とても好感が持てます。ちょっと知り合いのファミリーコンサートにお呼ばれしたようなくつろぎ感。観客は私たちを含めて3組、全部で10人くらいです。
料金は無料で、寄付金の箱が用意されていたのでそこにいくらか入れました。ずらりと並んだケーキはもちろん手作り。どれもおいしそうなんですが、お昼を食べたばかりだったので、二人でチョコレートケーキを一つだけいただきました。
コーヒー紅茶も用意されていましたが、私はカフェインは朝一杯の紅茶が限界です。それ以上飲むと、夜眠れなくなります。やはり、年齢には勝てませんね。そこで、お湯を頼みましたが、心よく用意してくれました。
一曲目はフルートとチェロのデュオ。
楽章が終わり、観客がさあ拍手を、、という空気を読んでチェロ奏者が立ち上がりました。
”まだ、終わってませんよ~。拍手はちょっと待ってね。”と、冗談っぽく言いました。拍手を待ち構えていた観客は不意を突かれて照れ笑い、といったところでしょうか。
これって、アリなんだ!
クラシックコンサートって粗相のないように聞かなくちゃいけないものだとずっと思っていました。曲の途中で奏者が観客にダメ押しするなんて考えられません。クラシックって、もっと上品でかしこまってて、音楽とは何ぞやと考えさせるような、そんな音楽だと思っていました。
通常のコンサートでは、曲の途中で拍手すると非常にバツの悪い思いをします。”あなた素人ね” という冷ややかな視線を周りから感じるでしょう。このチェロ奏者は客層をよく理解していました。ですから、曲の途中で拍手される前にジョークで注意。とても、気の利いた思いやり。こういう人って、すごいなと思います。
ゆったりした気分で美味しいケーキをいただきながら生演奏、思いがけないアカロアでのひと時でした。