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『今日も上司に怒られた、、。』 〜垂直統合〜
オレの名前は木暮。
都内の中小コンサル企業勤務の44歳。未だに係長。
高校生まではバスケットボールに熱中し、大学では経済学部を専攻。
卒業後は、塾講師を経験し現在2社目。
コンサル企業での仕事は、バスケの練習の比ではなく、辛い。
精神的にだ。肉体的には眠気以外、大した事ではない。
精神的に一番ダメージが大きいのは、上司の存在だ。
織田部長。どこかの高校の五月蝿いバスケプレーヤと同じ名前だ。
今日も呼び出された。
「おーい、木暮ちゃん。ちょっとこっち来て、教えておくんなはれ。」
わざとらしい京言葉を使って、人の神経を逆撫でする。
「なぁ、ワテが担当している製造業のお客さん、おるやろ!?」
「客から”自分らで企画から販売までやる商売“教えて。て、言われてる」
「木暮ちゃん、経済学部やから分かるやろ?あの全部バクっとやるやつ?」
チッ、なぜこいつが部長なんだ。語彙力は皆無。
昭和スタイルをそのまま令和にまで持ち込んだ化石。
客あたりだけは良いが、細かい部分は全てオレ任せだ。
ただ、仕方ない。おれはただの係長だ。従うしかない。
先輩やレギュラーメンバーの指示は絶対だ。
『部長、それは”垂直統合”ですね。ご説明いたします。』
『垂直統合とは、』
・サプライチェーンの全工程を自社で統合する事です。
・一気通貫の事業になりますので、意思決定は迅速です。
・主な事例はトヨタ自動車様になります。
・自動車の研究開発から販売店までを統合する事で世界的に発展しました
・最近では、サービスも垂直統合化が進んでいます
・AmazonやNetflixなどが最新事例となります
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『簡単な資料を作成しましたので、これをご活用ください。』
これくらいでいいだろう。
「おぉ!さすが木暮ちゃん、やっぱり経済学部出身はえげつないな!」
「これで説明してくるわ。ありがとさん。もうええで。」
いつもこれだ。
用がなくなれば、即終了。まぁ、これで納得するなら今日は良い方だ。
まだまだ別の仕事が山ほどある。
今日も残業。
いつになったらおれはこの会社のレギュラー陣に食い込めるのか。
教えてください、先生。