なすび記念日
マックロファージ巡査は住民台帳と照らし合わせ、この出来立てホカホカの膿がトロッポと細胞の家の成れの果てであることを確認した。
死んで緑の膿となってもトロッポの膿は焼きたてパリッパリッのブレッド、あるいは炊きたてホカホカのご飯のような良い香りを放っていた。秋の来ない夏のようで、嫁に食わせたくない味だった。
マックロファージ巡査も堪らず、膿を一口頬張り、唸り声をあげた。
マックロファージ巡査
もう、職務を忘れて食べてしまいました!!これは久しぶりに味わう健康な細胞の味です!!お二人も一口、いかがです?
米子とくりくりは両手を握りしめ、酸っぱい物でも食べたかのように口を尖らせた。粥状にふやけていた米子は少し硬化した。
米子
それさぁ、なに?
私たちの世界では食べられない…
って言うか、誰も食べるなんて考えたことないと思う…生前を知らなくともヤダわ!!
くりくり
共食いしたらクロイツフェルト・ヤコブに罹るってよ!!大丈夫↺↺↺?
マックロファージ巡査
共食いするとそんな病気にもなるらしいね…潜伏期間は8年から10年だってね。
リンパ界で1番長生きな僕らマックロファージ一族でも寿命はせいぜい一年だし、美味しく頂くのは弔いでもあるし、これが僕らの仕事でもあるんだ…
マックロファージ巡査は少し寂しそうな横顔をした。
ジュニア中
巡査に意地悪言うなんて、お前ら生意気だぞ〜
マックロファージ巡査は掴みかかろうとするジュニア中を制した。
マックロファージ巡査
中、怒らないで、米子さんたちはここに来たばかりで僕らのことを知らないんだ。それなのに米子さんは困っていた僕らを助けてくれようとしたんだよ。
米子さんたちは月刊オッタマゲンチャで特集された未知のモノなんだ。違う世界の話しを聞かせてほしいだろ?
マックロファージ巡査はジュニア中の頭を撫でながら言った。
つづく