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今日はタバコの日

喫煙灰希:煙草の灰の妖精

副流縁煙;煙草の煙の妖精

その湖は真っ黒で底が見えたことがなかった。
悪臭もしたのでモノたちも近寄らず、ある意味
神秘の湖だった。

とある噂では湖の中に何か黒い影が動いたと言うモノあり、
またあるモノは湖の水が天に昇り地上に禍々しい黒い雨を降らせた
と言うモノもあった。

この湖のほとりで副流縁煙(ふくりゅうえんけむり)と喫煙灰希(きつえんはいき)
は出会った。
一目見るなり恋に落ち、紫煙に包まれて二人は愛し合った。けれども
直ぐに別れの時はやって来た。

煙はそれが性なのか一つ所に落ち着けない性分だった。灰希を思う気持ちは
誰よりも強い。それでも旅心は疼く。灰希は泣きすがってみたけれど、
彼の心は変えられないと悟った。

煙は灰希に一緒に行こうと誘う。灰希の心は千々に乱れる。彼女の家族はみな、この湖に沈んでいた。
だから彼女はこの湖を守らなければならなかったので、どんなに煙を思ったにしても
この場を離れるわけにはいかなかった。

別れの時、チロチロと燃えていた心の炎は一瞬、閃光を放つように真っ赤に燃えた。
そして煙は見えるか見えないかの薄い青紫の涙を流した。
灰希の魂はポロリと崩れてその抜け殻の瞳は男が去っていくのをただ、ボンヤリと見ていた。

その後、煙は放浪の旅を続け、様々な世界に足を延ばしているうちに灰希を忘れ、己自身も見失った。

灰希は日々の生活のふとした瞬間に彼の残り香を感じることがあった。それは断ち切れない未練で彼女を一層孤独なモノにした。
灰希はその絶望のあまり湖に飛び込み、若い命を散らした。

今日の一句

黒い水零すと後が臭いです

詠みモノ

クルクル


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ポリポリ
大変貧乏しております。よろしかったらいくらか下さい。新しい物語の主人公を購入します。最後まで美味しく頂きます!!