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世界高血圧デー
母さんは父さんに早くに死なれ、女手一つで私たちを育ててくれていた。しかしあの一件が起こり、母さんは再婚を決意した。
父さんが死んだのは私が3歳の時だったので私には父さんの記憶はない。けれど兄さんは六歳だったので父さんの記憶があった。
そうした事と性格も相まって新しい父と兄さんの間はしっくり行っていなかった。でも、家庭内に波風が立ったとも言えず、どちらも存在を無視するようにして暮らしていた。
私はそんな兄さんの姿を目にしてきたし、父と馬が合わないワケでもなかった。むしろ、他人の子供を可愛がってくれた父には感謝している。
そんな両親も私が二十歳のときに事故に遭い呆気なくこの世を去った。今回、兄さんとは葬式で会って以来、13年振りの再会。
兄さんは母さんが再婚してから性格が暗く変わってしまい、学校も不登校気味だった。
兄さんを心配して母さんは血圧を患ったものの、兄さんが高校を卒業出来たので家族は安心したのもつかの間、本人はフラリ家を出てしまった。
両親が亡くなったのを知らせるのもアチラコチラ探し回って苦労した。葬儀の場でも相変わらず、不貞腐れた様子で、ロクに口も聞かなかった。
そんな兄さんではあるけれど、私は2週間ほど前、余命半年と宣告され、そのことは兄さんに話しておかなくてはと、考えていた。病院からの電話はそんな矢先の出来事だったので好都合でもあった。
つづく
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