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温度計の日
B大佐は鼻をチンとかんで、小さな声でテヤンデイ!!と言った。樹状巡査部長とB大佐が、沈んでいるのを見て、監査官はうなずいた。
監査官
私たち細胞民は一人ひとり違うモノだから、誰も彼もが屈強とは行かないですね。弱い部分を補い合い、
時には厳しく切り捨てる。そうして私たちは主、ずんぐりむっくり様をお守りしているのです。
司令官は今回、ディアボロと癌細胞民のダブルパンチで相当なストレスを抱えていたのでしょう。
司令官とは言え、所詮は一介の細胞民に過ぎませんから…彼は人一倍正義感が強かったので、仲間を排除するにしても慎重に、
厳粛に執り行っていたのです。細胞民が病に冒されたからと言って、仲間を排除するのは痛みが伴います。
なんと言っても私たちはサイトカインテレパシーで繋がっている仲間。しかし、司令官ともなれば、
そんな開けっぴろげな付き合いをすることは許されない。そうした職務のプレッシャーも取り憑かれの一因だったのでしょう。
誰しもが明日、取り憑かれてもおかしくはない現状です。私どもの中にも環境は自分たちで変えるとか、
変わらないなら自分が変わるとかの世迷言を言うヤカラもおりますが、環境も自分も容易く変えることなど出来ません。
私たちに出来るのは頭の上の蠅は追い、自分の尻は自分で拭く…言葉にすれば簡単ですが、難しいこと。
自分を顧みて生きてゆく。そうしなければ取り憑きは忍び寄って来るのです。これは体ばかりでなく、心も同じですね。
監査官の話しを聞き、B大佐と樹状巡査部長は仲間を喪失した悲しみと、無力な自分たちを情けなく感じた。しかし米子とくりくりは、
それらが全て、主、ずんぐりむっくりの仕業と推察すると、体温が上昇しメラメラ怒りを覚えた。
それぞれがそれぞれの感慨に耽っていると、またしても米子とくりくりはパッと姿を消したた。
それに気づいた樹状巡査部長、B大佐、監査官は立ち上がり、背筋を伸ばし、二人が消えた方角に敬礼をした。
つづく
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