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気狂いがいただけのことでしょう、そう珍しいことでもないでしょう


人殺しのようにうたをうたってみたかった 愛されないぼくたち
テプラ貼り付けて君を愛する 正義のために君を守ってあげる
貴方に生命(いのち)がないこと、魂がないこと、悲しいなんて嘘だよ
血が出たら大人の証、なんて、ああきもちわるいねきもちわるいよ
「愛してるって言って」「愛してるよ、冷蔵庫の鍵より」「鍵があるの」
黒猫が尻尾をゆらゆら揺らして踏切の向こうは五年前
いつまでも首を吊れないで海辺を彷徨っている 脚があるから
泡になれたら良かったね 物語の主人公にはなれないままで
脇役の方がマシだったとか今更注文が多いんですよ
君だけに誂えた人生じゃないんだから自分で直しておいて
今日も元気に「死にたいなあ」「死にたいねえ」ほんと死なねえなこいつら
鍋が吹きこぼれる前に教えてくれるカメムシを逃してやれたら
何処までもこの世界は檻だよ 知ってると思ってたよ ほんとだよ
スカートの翻る角度を計算してる そういうブランドだから
鮮度が落ちたら要らなくなるの 大人になったらいけないいきもの
私に優しくするのは私が好きだからなの? 全部媚びなの?
すごいすごい優しい物語ですね 私の舌には合わない
いつか私も貴方みたいになるの? その前に死ななきゃ、死ななくちゃ
しろくまの毛の色がほんとは何色だって構わなかったんだよ
君の嘘だって豪雨に隠してしまうから迎えに来てね お願い
春の味を詰め込んだ鍋は君の死んだあとの世界の味だ
今の僕が夢でないこと、一体誰が何が証明するんだろ
せめて蝶々なら良かったけれどこの腕は二本、脚も二本だ
羽化しなければ死ぬだけなんだよ、君は知らないんだろうけどさあ
羽化出来なかった君はつまり死んでるんだけど、いつそれに気付くかな
ダイヤルアップの音を聞きながら君が綴るもののケチくささ
か弱い生き物でいなくちゃ、わたしは守られてあげていなくちゃ、はあ、
夢現実夢現実夢現実夢 今はどっちだったっけ
ないものをあるように見せるのがお上手ですこと 詐欺師になれるよ
モザイクでも見える君の顔 だから注意しなよって言ったのにね
大丈夫じゃないけど大丈夫じゃないって自覚あるから大丈夫
死んで欲しい人を願っただけで殺せる力があれば良いのに
私の大切なものを君の可愛いお人形さんにするなよ
羞恥心では食っていけないけれどそれがないと社会にいられない
貴方がつけた傷をわたしが忘れると思わないでね、絶対だよ
君の思考に何度も潜る度に私が誰なのか分からなくなる
せめてその口閉じることから始めろよ 沈黙は金なりなんだよ
優しい顔した悪人と罵った口で食べる優しい言葉
君はずっと皿の上 どう足掻いてでもう逃げ場はないよ さよなら
ゴミクズからゴミクズと罵られる気分はどうだ? ようこそ底辺
似たもの同士だから肩だって抱いてやるよ、だから逃げんなよ、なあ

短歌名義:緋辻弥

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