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#小説

under the

 嘘みたいに静かな午後だった。太陽の光がふわりとリボンのように降り注いで、その先にいるメ…

鉢古
3年前
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花は遠し

 馬鹿馬鹿しいよな、と君が言うのばかりを聞いていた。そんなことを言う君の方こそ馬鹿馬鹿し…

鉢古
3年前
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錆の皮

 死んでしまおうと思っていたのとは違うのだと思う。  わたしは、そのひとを初めて見たとき…

鉢古
4年前
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ミントを喰む

 少し欠けているものを判断するのに必要なのは一体何なのだろう、そんなことを思う。雑踏の中…

鉢古
4年前
4

潮騒の音(ね)は笛にならない

 がりがりがりがり、と手首を掻いている。発疹も何もない、痒い訳でもない。ただ、掻いている…

鉢古
4年前
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見えない檻

 美しい物語なんてものは何処にもない。  砂浜に木の棒で絵を描きながら君は言う。それがい…

鉢古
4年前
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まる、せいかく、あかく、

 貴方が誰か、僕は一生知らないのだと思う。  まるで手紙のように書き記されたそれに、皆沼は首を傾げるしか出来なかった。貴方、それが指すものの定義から始めなくてはいけない。これが例えば手紙であったのなら、その貴方は間違いようもなく皆沼のことだろう。手紙、とはそういうものだった。誤配、というのが起こらなければ、の話ではあったが。びゅお、と風が吹いていく。しかしながらこれは手紙ではない。寂れたホームの、それでも利用する人間がそこそこいるから未だ現役であるホームの、落書きだった。誰か