「プリティーリズム・レインボーライブを見てください」に俺もなった(初見感想後編)
・前編からの続きよ〜!(ペンギン先生っぽく)
来年に新シリーズ復活するとの報があり大変めでたいプリティーシリーズ、そんな中で今年10周年を迎える『プリティーリズム・レインボーライブ』がYouTubeにて全話配信された(建前としては11/23の氷室聖の誕生日記念とのこと。なんだそりゃ)多くの人々が「プリティーリズムレインボーライブを見てください」と強く勧める今作、自分も当初はそんな言うなら…と軽い気持ちで見たのだがあまりにも面白すぎるしなんでこれを見てなかったのかって後悔してしまう(特に2クール目から)という事態にまで陥り、2クール目までの感想を勢いのまま書き綴ったのだ。
そしてここからは後編…すなわち最終回まで書いていこうと思う。それでは早速飛ばしていこう、Let's プリズムショー!(DJ.COOもとい黒川冷より。モモさん以上に謎人物だったけどまさかの正体に驚いちゃったよ)
・何が一番大切なの?聞きたいけどなかなか言えない ほんの一瞬でも、あなたと一緒ならいいと思ってる
(3クール目のOPにもなった『CRAZY GONA CRAZY』より)
6人がそれぞれ確執を乗り越えベルローズとハッピーレインを結成するという一区切りへと辿り着き(モモさんがピコック先生にめちゃんこ叱られる総集編を挟みつつ)3クール目に突入した今作、そんな3クール目はいわば…最終章である4クール目への布石としての側面が強い話も多いと感じた。しかしだからといって2クール目から話のクオリティが劣るだなんて決してない……りんねと並び今作のキーパーソンであろう天羽ジュネ、今作の暗部をこれでもかと搭載した法月仁、後にオバレを組む男たち、そしてシャッフルデュオと様々な形でキャラが動き、単体でも面白い話を描きつつ最終章への期待度をこれでもかと高めるというまさに卓越したシナリオ構成であった。
前回における森園わかなや蓮城寺べるのように人間らしい側面をこの3クール目で見せたのといえば、やはり速水ヒロだろう。気持ち悪いまでのコウジへの執着を見せる一方でべる経由でチラホラ元来持ってる人としての優しさを見せてた彼らしく、かつてはエーデルローズ内で周囲から見下されたコウジの曲に心底惚れチームを組んだが、アイドルデビューの際にそんなコウジ作曲の歌『PRIDE』を「暗い彼より客ウケいい君の方が目立つべき」と自身の功績にせよという法月仁の非道なる指令を呑んでしまい彼と袂を分かち、以降はトップアイドルとしての仮面を被り続けてしまう……ファンの皆に愛され、裏で手引きする大人どもに消費され、それでも笑顔を装い続ける偶像として……
……そしてここまで来たからには触れなくてはいけない、涼野いと。前回書いたとおり見た目があまりにも好みすぎるキャラでそりゃもう久々に気持ち悪いオタクの如き勢いで見てた(仮に出てこなかったら一瞬だけ出てた娘を一生追ってたかもしれない)のだが……話が進むにつれて彼女に対して描かれるドラマが女児向けアニメの枠を超えるレベルで壮大になり「とんでもねえ奴を 好きになっちまったもんだぜ」と蒼天航路の劉備みたいに圧倒されてしまい、彼女のメイン回でただひたすら泣くことしかできなくなってしまった。ということで前回のも含めて書いていきたい。彼女と、彼の、そして“もう一人”の物語を……
そして今は……ただ、祈ることしかできなくなってしまった。
・涼野いと編
「プリティーリズムレインボーライブは毒親が見所」誰が言ったか今作にはそんな物騒な売り文句があった。なんなんだよそれ彩瀬家は幸せな家庭じゃねえかと見始めたが2話で娘にせんべい屋を継がせる気しかない頑固オヤジ・福原煎太郎なる“ジャブパンチ”が出てきて身構え(ジャブどころか父娘揃って怪獣特番並んで見る仲のそよ風程度だった)その後に蓮城寺律だの森園正だの真にやべー奴らが出てくるも夫を通じて娘と和解したり妻に引っぱたかれ家父長制から単身赴任になったりと子と親を交えた様々なドラマがあったが……その中で異色な存在がいた。
名を涼野弦、涼野いとのパパであり(あれでパパ呼びなの檀黎斗ばりに意外だろ)ライブハウスを経営するも毎月ギリギリだし酒に逃げてるし妻も見当たらないしと表面だけで判断すればトップクラスの毒親に君臨してもおかしくない存在なのだが……その気になれば反抗できるだろう性格な娘からはそこまで嫌われていなかった。なんなら娘に一定の理解を示す良き父の描写だってちょくちょく挟まれたりと「あんまり彼のこと嫌わないでほしい」と伝わるくらいだ。自分は真っ先ににその奇妙さに引っかかった……
そもそも彼女がプリズムストーンにて働く第一の理由がギャラであり(忘れがちだが元々は職場体験の延長です)それは楽器屋にて鎮座する300万の父のギター…伝説的ロックバンド・Lucky☆Starの一人である涼野弦の相棒を買い戻したいからこそであった。なぜそこまで拘るのか、それは19話「心を結ぶいと」で判明する……
(このギターがあれば…みんな元通りになる…)
自分がこのアニメで初めてボロ泣きしたのがこの19話だった。いやね、これ分かった瞬間ほんと目から涙がドバドバ出てしまったのよ……なんであの父を見捨てたくないのか、ギターを買い戻したいのか、そして自身をクロスと名乗るのか……クールな性格の内には家族みんなとまた一緒に暮らしたいという純粋なる願いがあったなんてさ……最初「✝クロス✝ってお呼びwww」とか笑って本当にごめんなさい………
そして糸は幾重にも重なりあってCLOTH(布)になる……家族だけじゃない、最初はカネ目当てで来たものの共に働きプリズムショーを通じ少しずつ打ち解けていきハッピーレインを結成した彩瀬なるに福原あん、まさかの関わり合いながらも一歩前へ出る勇気を与えた小鳥遊おとは、様々な繋がりからの糸で彼女の心は紡がれていった。そしてそこには赤い糸も……
ぼくは君の歌を……ヒロに歌ってほしくない!
家の近くのビルの屋上でいつも聞こえるギターと歌声、ともに音楽に関わる者として気になっていた。そしてプリズムショーで自身の曲『BT37.5』を見せつけたり、時に曲を提供してもらったなるに内心穏やかじゃなかったりもしてた。そして……表向きはヌルく燻るように見えてた彼の本心で燃える優しくも熱き気持ちを受け……灯った。赤い糸、夏の恋が(プリズムジャンプは心の飛躍なので気持ちに嘘をつかない)
神浜コウジは表情やメールの返信で感情をあまり出さない代わりに曲を通じては直で伝える詩人だ。幼馴染カヅキを通じてヒロに昔の清き心を思い出してほしいかのごとく『FREEDOM』を聞かせたように。そんな彼が編曲の際につい漏れ出ちゃうまでの熱き想いが刻まれてるならばもはやそれはラブレターであり、なるちゃんの言葉に後押しされ、そして……糸は結ばれた。
じゅ……13歳(2月14日生まれ)でファーストキスだと……?いや流石に10年前の作品だしキンプリ時代でも二人が付き合ってるというのは小耳に挟んでいたが、まさかこうも女児向けアニメの枠内でこう堂々と接吻しちゃうなんて割と驚いてしまったよ。キュアドリームだって映画限定で見せつけて本編は45話でやったと推測される程度だったぞ!それを26話で!早い!早すぎる!!神浜コウジ、お前も15(1月14日生まれ)でやりおるとは……やはり彼はやる時はやる男だ……
………さて、本来こういう交際イベントというのは失恋ならともかく実るなんて物語終盤で発生するもの、別パターンのあん&わかなのカヅキ先輩への想いが辿り着く先がこれから最終クールで描かれるだろうに対し、こちらは26話と2クール目ラストという物語半ばそのもの。自分はふと嫌な予感を勘付いてしまった…「これ絶対ここから二人の関係を揺るがす困難が待ってるだろ」と。このアニメがそう簡単に終わらせてくれる訳ないだろと。
その嫌な予感は的中した。天羽ジュネのマネージャーを勤める美しき女性・神浜奈津子。それはまさかのコウジの母親だった。涼野さんのプリズムショーに観覧してきた息子が見せる表情で彼女は察してしまった……あの子とコウジの関係を。それは激しい動揺も招いた。
そして自分は勘違いをしていた。弦が事故でギターを弾けなくなったせいで自暴自棄になり、そこから不仲になって妻と離婚したものと思い込んでた。しかし北海道への修学旅行がてらで寄った母の家で暮らす弟・ユウから聞いた事実は違った。むしろママは今でもパパのことを愛してる。きっと彼もまだ彼女のことを愛してる。ならなぜ家族は離れてしまったのか?それは………
この世に確かに存在する、本当の本当に、「どうしようもないこと」だった。
そして、その「どうしようもないこと」は、まさかの形で二人に襲いかかってきた。
その事故で、一人の方が亡くなったの……その方のご家族に一生消えることない悲しみを背負わせてしまった……
ご家族の不幸を思えば、わたし達だけが幸せになるなんて、考えられなかった……
―涼野鶴―
いとさんの父親のせいで、あなたのお父さんは死んだの!
…あの事故ではみんなが辛い想いをした…わたしも、彼女のご両親も、彼女も、あなたも…
正直に言うわ、あなた達が付き合うことをお母さんは認めない!あなた達ふたりを見る度に…あの時のつらい想いが蘇るから……きっと彼女のご両親も同じよ!
―神浜奈津子―
こんなあまりにも重すぎる「どうしようもないこと」をなんで土曜朝10時の女児向けアニメで、なんで健全な恋愛関係の未成年二人でやるの……?ここまでやるもんかよ普通………アニメで膝から崩れ落ちて絶句するなんて初めて経験したよ……いやさ…………本当にさ………どうして…………………
この一件を責めるコウジの母、奈津子さんだってこれまで出てた分からず屋の親共と違って素から良識ある普通のお母さんだ。それでも……絶対に許したくないものだってある。いつもはうまい具合に誤魔化し目を逸らした過去の憎しみが、今ここでまさかの形で現れたなら憎しみを露わにするしかない。人間ならばそうする。そんな彼女を個人の都合で二人の関係を絶とうとする毒親だのと誰が責めれるだろうか……
そして涼野弦だって決して故意なんかではない。法律で裁ける罪ではない。けれどJOを、神浜丈幸を死なせてしまった事実は永久に残り続ける……彼もまた根はしっかりした人間だ、だからこそ、そんな自分が在りし日の栄光はおろかごく普通の幸せすらも得るだなんて絶対に許されない。左手がリハビリ次第で治る可能性があろうが、娘が再び家族一緒になれると信じ続けようが、そんな希望を持つなんて甘っちょろいことするなんて決して……結果的に彼が一番子ども達を苦しめる存在になってしまった。良識がある故に。
星は潰えた。
糸は解けた。
どうしようもない運命だけが残った。
ただ、泣くことしかできなかった。
人生で初めて「慟哭」というものを経験してしまった。なんで自分はこのキャラを、涼野いとを好きになってしまったのか。この時だけは激しく後悔してしまった。そうじゃなかったらここまで苦しくならなかったのに。本当に辛く、悲しく、泣くことしかできなかった。普段ぜんぜん酒を飲まない自分も久々に開けてしまった。そうでなければやってけなかった。涼野弦もきっとこんな感じか、いやそれ以上だったんだろうな。
このまま何もかもお終いになってしまうのだろうか?いや……りんねは言ってくれた。「過ぎ去った時は変えられない、けれど人の心は変えられるよ」と。コウジは諦めてなかった。「僕たち家族の時間は6年前から止まったままだ。このまま逃げたら二度と前に進まない」と。この禍根は間違いなく簡単に解決できる訳なんざできない。けれども………今は信じることしか、祈ることしかできない。これから始まる彼女と彼に待ち受ける、そして“もう一人”が見届ける最後の物語がこのまま「どうしようもないこと」で終わらせやしないと。
・君がひとつ羽ばたくその度どこかで風が吹いて未来を動かす力になるよ
(Prizmmy☆『Butterfly Effect』より。)
そんなこんなで終盤へと辿り着いたこと4クール目……デュオ大会のウィンターホワイトセッションとプリズムクイーンを決定するオーバーザレインボーセッションという2種編成でこれでもかと豪華なプリズムショーを見せつつ各キャラの最終到達点を描き、突如として山奥から東京へとワープしたりんねちゃんとデュオを組む天羽ジュネの真実を交えるという………こんなにも複数の群像劇という風呂敷を盛大に広げつつ最後は綺麗に畳み終わらせ美しい虹を描ききった。こんな完璧な物語が10年前に存在してただなんてすげぇな……
そして「オバレ結成するまで見てください」という今作の売り文句。最終回で結成するのは分かっていたが(カヅキ先輩はともかく)ヒロが拗らせすぎ&コウジの親問題重すぎて本当にこれ組めるの?と思ってたが………本当に結成できた。ヒロが頂点に立つ為に己を縛りし呪いも解け、コウジと…神浜家と涼野家の「どうしようもないこと」もようやく解決し……
ただ泣くことしかできなかった。「どうしようもないこと」がついに終わった。解けた筈の糸が再び紡がれた。星はずっと輝き続けていた。このアニメ見てて一番泣いた所かもしれない。奈津子さんもこれ以上苦しまなくていい、弦さんもこれ以上自分を責めなくていい、涼野家はようやくまたひとつに辿り着いた……糸が結び合うところに。
みんなの心の糸がいま、幾重にも重なり合って、ひとつの大きなCLOTH(布)になった……その布は、みんなを優しく、暖かく包み込んで、幸せを運んでくれた……
これから、みんなの心は、もっともっと繋げていきたい!プリズムの煌めきと一緒に!
涼野いと。最初はいちキャラとして好きなだけだった。けれども彼女のクールな心に隠されたなんとしてでも叶えたい願いの純真さに心打たれ、その願いの先に聳える女児向けアニメとは思えないレベルの残酷な運命の前に泣き崩れ、そして今は……それでも諦めないでと支えてくれた人々のおかげで願いが叶ったことに心の底から喜み涙を流した。本当に………よかった……………このキャラを好きになって、本当によかった。
……さて、この最終章においてもピックアップしていきたいキャラがいる。序盤から謎を散りばめ、そしてついに終盤にて一気に回収された「プリズムの使者」と「授けられた者たち」のことを。
・プリズムの使者編
今作における日本のエンタメ文化の大部分を担ってるだろうプリズムショー、それは(ハードな展開すぎて忘れがちだが)女児向けアニメらしくプリズムワールドなる異世界から送られる使者を通じて人々が発展させプリズムの煌めきを輝かせることによってあの超次元的なジャンプとかを可能にするシステムが維持されている。その「プリズムの使者」なるシステムのひとつこそがりんねと呼ばれる人型実体……現世に降り立つ毎に姿を変え、素質ある者に近付きインスピレーションを授け、人々のプリズムの煌めきをより強く輝かせ文化的成長を後押しする、まるでギリシャ神話の芸術の女神ミューズのような存在である(ちなみにミューズも複数柱存在する。それこそ現世に来る前は同じ姿のりんねちゃんが複数個体存在するように…)
本編開始から数年前、このりんねちゃんが純粋な心を持つ青年・氷室聖に素質を見出し、彼の亡き母マリアの面影を残した姿で現世に降り立ち……天羽ジュネと名乗り偶然を装い近付き、そんな天からの使者の導きにより彼は4連続ジャンプという新たなる芸術への飛躍の扉を開けようとするのだが……皆さん知ってのとおり嫉妬した法月仁の妨害工作のせいでその可能性は永遠に潰されてしまった……責任を感じた彼女は自分が4連続ジャンプを飛ぶ程のスタァになる選択、いわば聖を自分のコーチにしてプリズムの煌めきを広められるよう導くというイレギュラーな手段を取る。彼を見限って他の人を当たる非情な選択だって出来るだろうに……彼女はそれをしなかった。
人でないプリズムの使者がプリズムショーをやってもプリズムの煌めきは拡散されず、それどころか周囲から煌めきを奪う怖れもある本来あんまりよろしくない行為なのだが、それでも彼女の指導者という腕を評価された聖はプリズムショー協会の会長にまで抜擢され、そこから多くの人々を輝かせることができるなら文化的成長を促したとして結果オーライだろう。それにリスク備わるプリズムの使者が踊るのはほんの一時のみ、なぜならプリズムの使者は任務達成したらプリズムワールドへ帰らなくてはならない、現世で培った記憶すべてリセットしつつ。残酷ながらも人とは違う理で生きる不死身のシステムにとっては未練という永遠の苦しみを残させない必要な設定なのかもしれない。てなワケでもう約束は果たしたので天使は真月の夜に帰る……はずだった。ペンギン先生が最後まで見届けてなかったばっかりに
好きよ…聖。あなたのことが好き。ずっとあなたのそばにいたい……たとえ、あなたが老いて死んでしまったとしても、私はあなたを永遠に愛し続けるわ。
だからこの記憶……絶対に消したくない!プリズムワールドに帰る訳にはいかない!
(49話「命燃え尽きるまで…」より)
不死身の人外が抱いてしまった、自身の存在理由である筈の芸術文化を消滅させようとも絶対に手放したくないと想うまでの“愛”……人間の男に対するあまりにも強大なる恋愛感情がそこにはあった。彼女が聖のために何かしてあげねばと思う気持ちに対してペンギン先生は「愛」と例えた。実際にその献身的行為はいわばアガペーじみた愛であろう……しかし彼の純粋なる優しさに触れ、自身の頑張りに笑顔を向けてくれる彼に喜び、母の墓前で寂しい表情を浮かべる彼に寄り添いたいと想い……月日がその愛をエロスへと、使命を超えた己の為への愛へと熟成させてしまった。そしてその愛は……哀しいことにこの世の理を崩壊させる禁断の愛だった。今作が清濁共に描き続けた様々な“愛”の最後に待ち受けるに相応しい感情であった…………
思えば終盤に入る前のジュネは意味深に真相をぼかされて描かれていた……なんとなく聖のこと好きなんだなと思う程度の。あと映画館で隣に座ってほしくない髪型してんなとか。しかし改めて見るとそれまでの描写にこれでもかと描かれていたのに気付く。人類初の蓮城寺べるによる4連続ジャンプにベルローズ&ハッピーレイン結成で愛する聖は“人々による”プリズムショーの発展にさらなる可能性を感じていた……頂点に立つのは、聖が一番目を向けるのは自分だと証明するために心を飛躍させた。この5連続ジャンプは、浮かれ立ちそうな人類に向けて天使が示した宣戦布告だと。プリズムの煌めきか己の愛か、どちらが存続るか消滅るか、こりゃまさにラスボスだわ(余談だが同年に放送したプリキュアもまた違う形の愛のせいで世界滅亡寸前にまで追い込まれてしまった。よりにもよって……)
そしてこんなジュネの一方的なる情愛を向けてもなお……氷室聖は清廉潔白だった。当初の見込み通りプリズムショー発展のために尽力し、感動を湧き起こすために挑む者に等しく期待という愛を向ける……そこには天羽ジュネも含まれる。博愛とは時に残酷に映るものと見せつける。元々の羽根を毟り、ナイトドリームフェザーなる心削る禁忌の羽根で飛ぶ不死身な筈の天使の身体は愛する者の言葉に動揺するかのように崩れようとしつつ、そして………6連続目の『皇帝演舞』で飛び立つ白鳥の歌のごとく、7連続目の『愛の炎、L'a flamme d'amour』にて命と共に燃えゆく太陽になるかの如く………それが使命を捨て世界から煌めきを消し去ろうとした愚かな女神に待つ、逃れられぬ結末なのである。
……ラストダンス前、舞台に立とうとする彼女を止めようとした。プリズムショーよりも彼女を優先し、個人的理由で引き止めようとした。震える程に嬉しかった。氷室聖は……ジュネを失いたくないと心の底から想う程に愛していた。もちろん彼は彼女の抱え捨てた使命だの世界を崩壊させる禁断の愛だの知らぬ一般人だ、しかし彼にとって彼女は既に特別な存在だった。彼女は報われていた。最期に気付けて良かったとばかりに消滅し……
消える定めの彼女に対し己を捨てようとも助けようとした存在がいた。りんね……ジュネが愛の暴走したことによる不意の事故で現世に降り立ち、プリズムの使者が双方顕現したせいで失った記憶を少しずつ取り戻し、互いの存在を賭けた死闘の後に……彼女もまた使者としてのルール違反を犯した。これまで彼女が見てきた様々な“愛”を通じ、愛する者を遺したまま逝くという悲劇で終わらせたくないという“愛”を注いでしまった。世界からプリズムの煌めきは潰え、色なき世界になろうとも……
・授けられた者たち編
みなさん長らくお待たせしましたな主人公・彩瀬なる。小学生と見紛う程に背が低く(心はでっかい太平洋!)部屋も生々しく散らかり、そして何かと他のみんなが大なり小なり問題を抱えてた家庭環境も極めて良好……まさにメイン視聴ターゲット層の娘たちに共感しやすいように描かれ今作がちゃんと女児向けアニメであるという証明を一人で受け持つかのような存在である。そんな彼女が学校の職場体験としてプリズムストーンの中学生店長に就任しプリズムショーを行う…DJ.COOこと黒川冷&荊千里ことモモさんが彼らなりの手法でプリズムの煌めきを拡げる為にの活動に巻き込まれるというのが物語のスタート地点である。
そんな彩瀬なるだが……他のメンバーがやれ家庭問題だの友情や恋愛でとやかく揉めてる最中でも渦中には全く巻き込まれず、少女らしい純粋さを終始貫き通すという第三者的なポジションでもある。ある意味で今作の群像劇じみた作風においてニュートラルなキャラというのは必要不可欠といえばそうなるか。その純真無垢の無関係さが時にコウジだったり時にべるだったりの細やかな助けになるというのも不思議な縁というものであろう。
されどこんな彩瀬なるも終盤には流石にシリアスの波からは逃れられなくなる……具体的に言えばりんねちゃんについてだ。天羽ジュネが真月の夜に帰らなかったせいで世界の均衡が崩れプリズムワールドに亀裂が生じ、そこに吸い込まれる形で現世へ降り立ってしまったプリズムの使者……既にジュネという同一存在がいるせいでシステムエラーが発生し、見た目も素体まんまで記憶が欠けてジンギスカンにうつつを抜かしたりと使者というより単なる「ともだち」になった彼女と一番付き合いがあったのがなるちゃんだ。なんなら女児アニ定番?の居候展開だってあるくらい。しかもデフォルトでダブルベッド。
「りんねちゃん。ずっとずっと一緒だよ。やくそく!」
「約束は、大事。」
「プリズムワールドの使者は、世界を移動する度に記憶がリセットされてしまう…」
「なる……ずっと一緒。やくそく。」
「ずっと一緒」この単語を聞いた時に自分含め誰もがいずれ来る別れを察したと思う。それはプリズムの使者に待ち受ける宿命・記憶のリセット……かのジュネもそれを拒むために狂ってしまい今回の騒動を起こしてしまった(皮肉なことにそのおかげで彼女らがりんねちゃんに会えたのも事実だが)けれどりんねは前を見続ける……「さよなら」は絶対言わないと約束した。たとえその結末を前にしても。己が身を捧げてジュネを救おうとも。
「わたし……プリズムショーやってみる。」
「煌めきは、わたしたちのそばにある」
50話「煌めきはあなたのそばに」。プリズムの煌めきが完全に消えた世界にて彩瀬なるは踊ろうとする。現世の理を超越した演出なんざ当然ない。けれどこの世界には素晴らしきものがいくらでも残ってるじゃないか。
現世の布で作られた衣服と、
現世で綴られた歌と、
現世で紡がれた大切な絆、そして現世で培ったファンの応援によって、
「プリズムショー」という伝説は、新たに記される。
「神話」や……人の手で「神話」が生まれよった……そもそもプリズムの使者はあくまで人々にキッカケを与える存在であり煌めきは人が生み出すもの。彩瀬なるは現世で得た大切なものを通じてプリズムの煌めきを……まだ消えてなどいないと信じ再び生み出した。それはもはや人だけの手で人智を超えた理へと到達した「神話」と言えるだろう。彩瀬なる、やっぱり君は主人公だ……
そしてその“大切なもの”には勿論りんねちゃんがいる。(ジュネとの決闘で自身が消えるかもしれないと覚悟し)「さよなら」と告げられ煌めきを失う程に動揺したこともあった…けれど今回は違う。現世での記憶を忘れてしまうという本当の別れを前にしても「ずっと一緒」と言ってくれた。そばにいてくれると感じれた。だから信じてプリズムの煌めきを生み出せた。彼女は立派な「プリズムの使者」だった。りんねは最高の『GIFT』を授けてくれた。キッカケは君の心の飛躍、4連続ジャンプ。そこからいろんな繋がりが生まれ、大切なものを手にしたから。4クール目になってようやくTRFのカバー曲でなく完全オリジナルになったOPの『Butterfly Effect』この目次にも引用したフレーズ「君がひとつ羽ばたくその度どこかで風が吹いて未来を動かす力になるよ」はまさしく今作を象徴するものであった……そしてこの歌は卒業をテーマにした別れの曲でもある。だから……
心細さ隠して とびきり笑ってみせて
大きく手を振って 「ありがとう」って叫ぶんだ
絶対に…絶対にりんねちゃんのこと忘れないから!永遠に忘れないからね!
『GIFT』。プリズムの使者、りんねがプリズムワールドに帰る際に見せてくれた最後の踊りは、これまで彼女が現世で見てきた数々のプリズムショーの動作が刻まれていた。そしてジュネと彼女のデュエット曲のタイトルは『SEVENDAYS LOVE, SEVENDAYS FRIEND』…ジュネの“愛”と同じくらいに、りんねは“ともだち”という大切なもの・GIFTをみんなから授かっていた。そしてそれは彼女の記憶が消えようとも…………
ハピなる。どこで覚えたか忘れてしまった、けれどもとっても素敵な言葉。とあるプリズムの使者から消えなかった大切なもの。そしてこのミューズは別の世界に舞い降りて、きっとプリズムの煌めきを、GIFTを、『ハピなる』を伝えてくれるだろう……ひょっとしたら姿を変えて、君のそばに。Rinne will come…next to you…
・あとがき〜次は虹の先へ〜
たくさんのGIFTをありがとう!これから、たくさんの煌めきを広めていくからね!
by彩瀬なる
「プリティーリズム・レインボーライブを見てください」とはまさにこういうこと、授けられた素晴らしき煌めきをみんなにも分け与えたいと締められる作品だからだったのか…………まさかこの宣伝文句にてこういう伏線回収が仕込まれていたとは……いやそこまで深い意味込めてるつもりじゃないかもしれないけど自分はそう捉えた。そしてそれに相応しい作品だった。人と人とが互いにいるならばどうしても発生してしまう暗き感情……それを女児向けアニメの枠だろうが決して逃げずに容赦なく描き、それでもなおその暗雲の如き障壁を潜り抜けた先には必ず素晴らしき虹が見えるという“愛”をこれでもかと感じる作品だった。大袈裟かもしれないが人生において必ず一度は見ておいた方がいい作品と言えよう。本当に、その言葉をかけてくれた皆さまには感謝している。ありがとう………
さて今作には続編『KING OF PRISM』シリーズがある。神浜コウジ・速水ヒロ・仁科カヅキの3人が結成したOverTheRainbow…彼ら3人の活躍を、新たなる7人の輝きを、そしてその他の方々もどうなるか個人的な期待が非常に高まってる。すぐとは言えない(来年初頭になんとしても書きたいものがあるから)が、必ず見るつもりとだけは宣言しておく。
ということで『KING OF PRISM by PrettyRhythm』の感想も書きました!それでh………ん?
・オマケ:俺の「〇〇を見てください」も見てください
おいなんか変なの始まったぞ。いやですね、皆さんの「プリティーリズムレインボーライブを見てください」という言葉のおかげで自分はこんな最高の作品に出会えました。それはまさにGIFT、皆さんから与えられし最高のGIFTでございました。さながら皆さまは私にとってのプリズムの使者、いわばりんねちゃんが姿を変えてプリズムの煌めきそのものである今作を教えてくれた素晴らしき使者なのかもしれません。……
……そう、りんねちゃん。本編でりんねちゃんはなるちゃん達に最高のGIFTを与えました。そして………なるちゃん達もりんねちゃんに決して消えない素晴らしきGIFTを与えました。まさにGIVE AND TAKE………一方的ではない、美しい相互利益……
……つまり私がどうしたいか分かりますね?そう、自分からも皆さんに「〇〇(作品名)を見てください」をしたい。また違う素晴らしきGIFTを授け返したい。いやいやいや分かりますよ?本来ならキンプリだけでなく「ポールプリンセスも見てください」とか「オーロラドリームにディアマイフューチャーも見てください」とか「プリパラはパックが塔になるまで見てください」とか……そういうさらなるGIVEの路線に持ってくのが普通だって。もちろん今の自分にそういう上記への興味はあります。だからこそ、なんです。そのうえでTAKEをしたいのです。互いに大切なものを分け与え合う……今作がそうであったように……(言いくるめてないか?)
ということで一体ナニを見てくださいしてくるんだと身構えてる皆さま方へ、そもそも今作プリティーリズムレインボーライブという大作を勧めてもらったのならば勧める側のハードルも相応に高くなってしまう。作品のクオリティは勿論のことながらも「驚き」という感動……いわば「女児向けアニメでここまでやるの!?」という衝撃に近いやつも必要だ。最初は「意外とキンプリ経由から今作見たという非女児アニ界隈の人もおるしプリキュア案外いけるかな〜?たとえばこっちもオバレ結成するよみたいに『魔法つかいプリキュア!』とか……(見た人には物は言いようすぎるだろとなる)」とか考えてたが、どうしてもプリキュアシリーズはメジャーすぎるし自分が言わなくても他の人が勧めてくれるだろうというのがある。
それならばナニがいいだろうか……皆さんが興味を示してくれやすいように今作のジャンルに近しい一面があり、それでいて今作みたいにそのジャンルのイメージ像なる枠を遥かに超えているという衝撃を与え、なおかつ今作みたいに超がつく程に素晴らしき作品……こんな超難題を満たせる「〇〇(作品名)を見てください」が………ある。
あるのだ。きっと皆さま方がそのジャンルに抱いてるイメージ像を遥かに凌駕する作品が、そして自分が胸を張って勧められる超大作の作品が。それは…………
「ウソツキ!ゴクオーくんを見てください」
コロコロコミックじゃねーか!!!はい。コロコロコミックの作品です。でもまず落ち着いて聞いてください。最近のコロコロコミックは全然下品ではない。このツッコミ入れる方のコロコロのイメージ像……【検閲済み】や【検閲済み】ばっか出てくる在りし日のコロコロはもう現在には存在していません。いや本当に。というより最近のコロコロはめちゃめちゃスタイリッシュな作品いっぱいあるんですよ……と脱線しかけたが、このゴクオーくんにもそんな下品な要素は全然ないので安心してほしい。
そんなウソが大好きな謎の転校生・ゴクオーくんがウソを用いてウソを暴くこの漫画、なにがどうすごいかって……プリティーリズムレインボーライブの見所を上げる際に「子ども向けとは思えないまでに人間の負の感情を正直に描く」「それでいてその負の感情を乗り越えた先に待つ紡がれた“絆”、そこまでに到達するドラマの完成度の高さ」「そんな毎回ある単発回のクオリティを維持しつつ縦軸の話も両立して描き、最後にはその縦軸の話が涙なしには見られない程の感動を引き起こす」「人外存在が人間に対して向ける巨大なる感情」「住む世界が違うからこそ待ち受ける別れ…それでも残り続けるもの」とこれらが思い浮かぶのだが……なんとこの『ウソツキ!ゴクオーくん』もそれらを全部備えてる。ウソだろ!?と思うがマジなのだ。児童向けという枠内で描かれる、児童向けというイメージ像を遥かに凌駕し大人も唸るとてつもないヒューマンドラマ……それを本気で描くとなると近いものになってしまうのだろう。そんなすげー児童向け漫画が10年も続いた……コロコロでオリジナル作品が10年以上続くというのは滅多にないのだが今作はそれを達成し、さらにはその10年で描かれた全119話の全部が面白いという化け物じみた作品になっている。冗談抜きで全話すごい。なんなら自分はこの漫画の感想をnoteに書いたが全文章量が合計10万字以上あるほどだ(ネタバレになるのでリンクは貼らない。ちなみにこのRLの感想はオマケ除いて前後編合わせて2万8千字ほど。それでもかなり多いと思う)
さらにはこのゴクオーくん、コロコロでは珍しく女性人気も非常に高い。このワルガキじみた見た目した主人公・ゴクオーくんだが(理由はここでは言えんが)倫理観念めちゃくちゃしっかりした大人であり、それでいて一人の少女にスパダリじみたムーブもめっちゃしてくる。こんなん読んでた女児の二次元の初恋だろレベルのをこれでもかとしまくる。ヤバいっすよほんと。そしてこの漫画はヒロインの女の子・小野天子がコロコロでは珍しく主人公ゴクオーくんの隣に並ぶ存在なんですがね……この娘もコロコロの古きイメージ像を粉々に破壊するほどに“すごい”。どうすごいかは実際に読めば分かる。
ここから単行本1巻収録ぶんの5話までならいつでも読めるのだが……読めば分かるだろう、1話からとんでもねーもん見せてくるし、4話の時点で“ヤバい”と。これが最終回までずっと続くし、なんならここからさらに無限に積み重ねられ最終回ではすさまじいことになる。もちろん全25巻ぶん買い揃えると1万くらいかかるので強くは言えない……けれど“キッカケ”こそが一番大切だと自分は思ってる。皆さんが「プリティーリズムレインボーライブを見てください」と言い続け、自分が「そんなに強く勧める程に面白いのかな」と興味を持つ“キッカケ”が生まれ、今回の配信を機に視聴し、涙を流し続ける程に感動し初見感想文を書いた自分がいるように。このゴクオーくんもフォロワーさんが心から勧める作品だと常に言ってたから興味を持ち、そしてこの上記のリンク先を機に全巻購入して読み涙を流し続ける程に感動した(ちなみにそのフォロワーさんもレインボーライブ既に見てた。周りで初視聴なの俺だけだった)自分もその“キッカケ”だけでいい……ひょっとしたら別の機会でこの漫画に触れた際に「そういえば誰かがすごく面白いって言ってたな」と興味を示す細やかな“キッカケ”になってくれたらいい……まさしく横暴極まる蛇足かもしれない、けれど………「ウソツキ!ゴクオーくんを見てください」。それが今作を勧めてくれた皆さんに授けたい、決して後悔させないと強く推すGIFTなのだ……
今度こそ本当におしまい。このような変な流れにお付き合いいただき、本当に、本当に、ありがとうございました。
【追記】
週刊コロコロコミック開設2周年記念で配信作品読み放題フェアやってくれた際に「ここで勧められてゴクオーくん読んだ」という人いてくれてありがてぇ……