『ウソツキ!ゴクオーくん』最終回は自分の見たいもん全部見せつつさらにそれ以上のものを見せてきた最高の終わり方だった
・「最終回まで全部面白い」はウソじゃなかった
とうとうここまで来てしまった……週刊コロコロコミックで配信されてから面白さが広く知れ渡り、完結作品にして単行本が重版されるというてんとう虫コミックスには特例の事態にまでになった漫画『ウソツキ!ゴクオーくん』その最終回まで……
自分も週刊配信の9話あたりから電子書籍で単行本を買い始め、読む度に1話1話のクオリティの高さに感動し各章のラストではたいてい涙を流していた……そしてその気持ちをなんとしてでも文章として留めておきたい為にここnoteにて感想を書き綴ったのだ。そんでもって感想を書くモチベーションを維持するために8巻以降からは各章で区切った感想を書き終わるまで読まないという制約を掛けていた。一番最初のできたらサタン編、ユーリィ編のできたらナナシノ編……こうやって続け前回の記事を書き終わるまでウソ最終回「決戦!人間の嘘と絆!!」で止めておき…書ききったご褒美としてようやく真最終回「微笑む閻魔大王」を読むことができた(連載追ってた人はコロコロコミック2021年10月号発売寸前まで真最終回のことは告知されず一ヶ月ウソつかれ続けられてたなんて羨ましいぜ)。たかが1話とはいえ真最終回は100ページ超え(通常は30pくらいなので約3倍だ!)だ、そのラストの為だけに執筆モチベーション維持するなんて簡単だ……
しかし同時に期待が膨らみすぎて(もしこれがハードル上げすぎた期待より微妙だったらどうしよう…)なんて不安が少しよぎった。後述するがウソ最終回としても非常に面白く、それでもちゃんとした“終わり”が見たいという欲を高める締め方だった。いったい彼らの最後に待ち受ける卒業式イベントを絡めた100ページに渡る完結編はどんなのになるのやらと……
そして実際に読んでみた。………すごかった。自分が見たいもの全部出しつつ、さらにそれ以上のものを見せてきやがった。この100Pに今作がこれまで描いてきたもの10年の歴史を全部これでもかと注ぎ込み、さらにさらにと読者を「ウソだろ!?」と驚かせる、まさしく最高の最終回だった。たしかに先駆者の方々は「最終回までずっと面白いぞ」とは言っていた……だけどここまでとは思わねぇよ!スッゲーよこの漫画!コロコロコミックの歴史に残る最終回だよ!週刊勢の方々も是非ここまで辿り着いてほしい……(執筆時から2年以上かかるけど)
というわけで今回は真最終回までキッチリ話しきろうと思います。まさかと思うが「まだ読み途中だけど最終回だけ気になるからちょっとだけ覗いちゃお!」なんて考えてる人がいたら今の内にブラウザバックしておけ。なんの情報も仕入れずに単純に最終回を浴びてほしいからだ。というわけで前置きが長くなってしまったが始めていこう……
これは、過酷な現実を前に時に過ちを犯しても間違いを悔い改め正し再び立ち上がり共に手を取り合い前を向いて生きていく人間たち、その人間たちを通じて自分自身も変わり心から愛するようになった人ならざる者たち、双方共に紡ぎ生まれた“絆”の……ウソから出た『誠』の物語である。
・人と人ならざる者の前に立ち塞がる最後の敵は、かつて人だった人ならざる者だった〜平和のために全ての“つながり”を捨てた男〜
まずはラスボスについて話しておこう。閻魔大王、大天使、堕天使兼悪魔王、特霊魂、奇跡の塊……人間である魔男はともかく、今作にはそれなりの数の人外が出てきて人間を通じて(だいたいは小野天子)人に対する価値観を変えてきたりしていた。そんな今作に待ち受ける最後の敵は………邪仏。かつて高位の僧侶であった人間が入滅し、死後の世界でなお人である姿を維持する「元人間である人を超越した存在・仏」であった。まだあの世が地獄しかなかった神代の時代にサトリと名乗り地獄の治安を守る……いわばゴクオーとはかつて友だった存在だ。
サトリがゴクオー、そしてもう一人の友人ジュウオウと過ごす日々は彼にはどう映っていたのか…それでも彼は自身を僅かでも信頼したら洗脳することができる信用支配の術を用いて天国完成間近に大軍を率い地獄を滅ぼし、友であった筈のジュウオウを操りゴクオーを葬らんとした。すべては己の野望……そんな欲にまみれた言葉は相応しくない、彼が生前から死してなお常に考え続け辿り着いた悟りの境地、『みんないっしょになる』という真の平和のために。
誰も彼も強制的に支配した先に存在する独り善がりな理想……彼は本気だった。彼は世界そのものに…愚かな人間どころかこの世に存在する全生物から自身より上に君臨する神さらには世界を構築する概念にすら絶望している。みな揃いも揃って利己的で平気で他者を傷つける……どれだけ説法を説こうが変わらず過ちを繰り返す救えぬ存在。だから余が世の理を変え全てを統治するしかない。それは人間の可能性を見限った諦観の先に有る“平和”であった……
さて、なぜ初っ端から邪仏が掲げる目標を書いてきたかというと、彼がこの『ウソツキ!ゴクオーくん』のラスボスを飾るに相応しいキャラだからだと思っているので事前に解説したいからだ。それぞれ見ていくと……
かつて人であり、今や人を超越した存在
友をはじめ自身が築いた関係性を偽ってまで理想を掴もうとする
信用支配の術による他者の意思を無視した強制洗脳
その先にある全存在の個性を削ぎ統治する理想
そうなったのは生前死後含め考え抜き、世界が救えぬと結論を出したから
それらの達成の為に行う非道を悪と省みない
こんなかんじか。これまで今作はゴクオーくんをはじめ様々な人の理を超越した存在が出てきたが、最後にて「元人であり現在は人でない」なんて両方の立場を経験したキャラが出てきた(人間化したゴクオーは置いといて)それならば双方のいいとこ取りもできると思うが……むしろ人外と人間の悪いとこ取りの最悪な存在だと個人的に思っている。
まず今作の現世に生きる人間は「生きていれば誰もが過ちを犯すし、それでも謝り反省し皆に許され共に前へ歩むことができる」というのを徹底して描かれている。しかし邪仏は……その過ちをそもそも起こさないようにすればいいと、「いっしょになる」という理念で争いの種になる“違い”を排斥し、相手がどう思おうが無視して己の意思に従わせるという、これまで描いてきた現世で生きる人間の物語を完全否定するようなことをしでかすつもりだ。ある奴は愚かだと思ってたら素晴らしいと知り、またある奴は善意を守りたいや悪意を信じたいとこれまで人間に対し様々な感情を向けてきた人外ばかりだ……しかし元人間の人ならざる者は人が何者であるかを既に知ってるものだから人間相手にそういう違うからこそ云々の感情など抱かない、人間として人外として世界を見続け絶望し、そこから結論を出してしまった。善人が汚れてしまうことを嘆き善人のまま救おうとしたウリエルよりもたちが悪いものだ……
そしてその歪んだ結論は生前から死後ずっと考え続けたものだが……そのために仲間であった存在を偽り裏切り、結果的に友として向き合っていたジュウオウを仕留め、それでもなおこれっぽっちも反省せず平和を謳う……高尚な理想をぬかしてやがるが結果的には「自身の掲げる理想をみんなにも強制的に行使したい」という独善でしかないし、その為に周囲にウソをつき騙し、殺生に関わる程の非道を行おうが未だ「自分が悪いのでなくこうしなければ救えない世界が悪い」と開き直り決して省みない……いわば今作に出てきた「欲望に忠実で他者を不幸にしても反省せず地獄に堕ちて裁かれるような悪人」そのもの(しかも今作がなるべく避けてただろう殺人絡みだ!)と言わざるをえない。まさしく人間の悪と人ならざる者の悪を併せ持つとんでもねーやつだ。
さらにさらにだ、邪仏は人々や人間と人外な異種族が紡ぎ生まれる繋がり…“絆”を自ら捨て、他者にすら洗脳という形で不要と捨てさせるよう強要している。サタ公のように反抗心故に無下にしてしまったとかネクストの過去戻しのように結果的に捨てさせるとかではなく、彼はゴクオーやジュウオウといった地獄の住民との偽りの平和を自らの意思で捨て、他者には支配という形でこれまで培った関係を踏み躙らせる……全ては己の描く“平和”の為に。まさしく今作が10年連載し積み重ね走り続けてきた最後にて待ち受けるラスボスたる存在だろう。
そんな邪仏がついに現世へと侵攻する……彼が目指す『みんないっしょになる』において隠し事なる隔たりは不要、なのでジュウオウの魂をちょいとイジれば……
ゴクオー…、オマエの『ウソ』を暴いてやるよ。
終わりの時が、ついに来てしまった。
・ウソ最終回といえど最終回!6年2組としての集大成をとくと見よ〜これからも、ずっと……?〜
そのようにして始まってしまったウソいっぱいの最終回(太字だけ読むと…)「決戦!人間の嘘と絆!!」一番最初に言ったようにウソの最終回なれどかなりの面白さを見せてくれた。なんてったってゴクオーくんの正体が天子ちゃん以外にもバレちゃうなんて一大イベントを持ってきてくれたもんだ。
「まだ…、いなくならないで…!!」かつて天子ちゃんに「悲しむような別れにしない」と言った。薄々は勘付いていた。だからこその“まだ”だ。そして天子ちゃんはみんなに正直に話す……(舌を抜かれた茶刈くんや時目さんらが思い当たるフシあると気付くのが細かい)彼は別におっかないこと考えてる訳でなく、単にウソが見たいから学校に通ってるだけ。そして……みんなのウソを通じて人間のことを好きになってくれた。卒業間際まで同じクラスでいてくれた。時には人知れずみんなを守るために戦ってくれた……今回も。
だから、今度はわたしたちが助ける番だ!
正体がバレようとも、小学生男子じゃない人知を超えた存在だろうと、ゴクオーは6年2組で大切な友達だ。5年2組は絆を持って理不尽なウソに対抗し小野天子を助けたならば、6年2組は絆の象徴を持って乾坤一擲のハッタリというウソを用いてゴクオーくんを助けた。ウソを見抜く達人のゴクオーくん本人ですら本気にしちゃった天子ちゃんのウソ……
スッゲーーよ、天子ちゃん!!!オレっちまんまとひっかかっちまったぜー!!
地獄王すら出し抜く最高のウソ。歓喜のあまり抱きついてる。なんやコレ限界ゴク天カプ厨(たぶん大半のアダルティな読者)の幻覚か?幻想じゃねぇよな…!?天子ちゃんだってあまりにすごすぎて変になっちゃってるし!ラスボスだろうとあっさり退け皆見先生もいつも通りとごまかし(なんかあったなと察するも追及しない先生よ…)いつも通りの日常が来る。
しゃーねーな、もうちっとだけ、現世にいてやっか!
『ウソツキ!ゴクオーくん』完結!最高のウソをありがとう!吉もと先生の次回作にご期待ください!ということで吉もと誠先生の次回作『カシバトル』は週刊コロコロコミックにて絶賛連載中!!単行本も発売してるぞ!
……はい。「天子ちゃんがゴクオーくんを出し抜くほどのウソをつく」「6年2組のみんなが絆の賜物を見せ勝利へとこぎつける」なんて割と見たいもん見れたから満足しちゃったと思ってるかい?いやさ……やっぱり見たいじゃん、卒業式を。あれだけ描写を積み重ねてきて最後ああなっちゃってしまったのに「オレっちたちの戦いはこれからだ!」みたいなエンドでこの漫画が済ませられると思う?見たいじゃん、ゴクオーくんと天子ちゃんの別れを。やっぱりさぁ!見たいじゃん!見たいもん全部見せてくれる、それどころかそれ以上のものすら見せてくれる最高の最終回をさ!
あえて結末をはぐらかしていたのは………「ウソ最終回」だったから…ってコト!?
ウソの最終回だと見ればこの妙に見たいもん敢えて外した終わり方にしたのも納得がいく。様々なことにおいてキッチリ決着をつけてきたこの漫画がそんな中途半端に終わらせる筈ねぇもんな……読者すら騙すとかまさしくウソのエンターテイナーや。ということで真最終回「微笑む閻魔大王」へと続くのだった……
6年2組全員に正体がバレてしまった天罰で再び人間になってしまったゴクオーくん。しかしユーリィくん達のおかげで卒業式までは現世にいてくれるのを許してもらえたのだった………でも、そのあとは…?
人の体ゆえに気温が暖かくなってきたことを感じれるゴクオーくん。もうすぐ春が来るということだ、出会いと別れの季節が……天子ちゃんには、ゴクオーくんには、お互いに言わねばならぬことがある。それは……
……と、その前にちゃんと決着つけなきゃならねぇ奴がいるみたいだがな!
・10年間この漫画が描き続け、積み重ねてきたものを全部注ぎ込んだ伝説の真最終回〜違いは間違いじゃない、嘘偽りない絆と消してはならぬ世界の可能性〜
己にかけてしまった信用支配の術で身動きできなくなり、合体地獄技・嘘最砲弁を受けハザマへと送り返された邪仏。しかしこんなこともあろうかと奴はスペアキーを作っていたのだ!ということで(特に説明もなく巨大化してる)帰ってきた邪仏は八百町全体の大人たちに「ゴクオーは子ども達を地獄に連れて行く悪魔なので(まぁウソじゃないんですがね…)捕まえてくれ」と信用支配の術をかけてきた!ちょうど天罰で人間のままなのをいいことに…!一応は邪仏の舌を引き抜けば信用支配の術は解けるが口の中そのものをどこかに隠してやがる!万事休すか……と思ったら!
この流れは……最終回だから全部出しちまおうな大盤振る舞いのオールスター総出演だ!まずは魔男ことダンくん!口を隠したハザマも検知できる魔力の鍵を託してくれた……でも個人的には「二度と魔力使うな言っただろ?」に「あれってウソじゃなかったの?」と現世の人間らしいあからさまなすっとぼけで返してくれたのが感動しちまった。すっかり地に足つけて生きちゃってさぁ……
さらには6年2組のメンバーが大人たちを食い止める!(固水教頭にアームロックかける時目すゎんでめちゃくちゃ笑った)千十郎に磨巾くんとあの頃ゴクオーのこと嫌ってたのも助けてくれた!しかし多勢すぎる……だがアイツらなら来てくれると信じてた!
邪仏が「ゴクオーは子どもを地獄へ連れて行く悪魔」なんて正直に言っちゃったから、それを機に地獄に連れて行かれて舌を抜かれた過去あったりそれ以外でも1年共に暮らしたから閻魔と言われたら納得だなと元5年2組のみんなが駆け付けてきてくれた!そうだよこれが見たかった……6年2組も最高だったように5年2組としても最高だったんだよこの物語は……
さらにだ、召喚された魔怪物ゾウクジャク(こういうのもいるとは聞いてたが本当の最後にようやく出てくるとは)に対してネクストにサタン……まさかの佐丹下ルシオとして参戦してくれ、さらに人類の守護者ユーリィも地獄王に戻すキセキを届けに来てくれた!舌を破壊し信用支配の術も解いたし皆が繋いでくれた勝機、無駄にしてはならぬ!
……って喜生くん(元ナナシノ)や捻田に肉鱈に尾呼日出に任世とか在校生組や藤堂さん大荒輪くんら中学生組さらには転校した亜刷くん(9話)リヨちゃん(17話)高村国助くん(5話)も!それだけじゃなくて前担任(1話)にマフライオン(5話)に酉馬(25話)に上野森さん(101話)あと仕入れたガチャ商品の当たりを中抜き横領転売してたのバラされクビになった元コンビニ店員(10話)も出るの!?さすがにここまでサービスするんか!まさしく10年間追い続けてきた読者への最大の感謝すぎる………
そんなこんなで完全復活……を装い邪仏の全キセキを捻出させるウソも成功し後は倒すだけ……だが上で語ったように彼と同じく悟りの果てに世界に絶望し散っていった無念の仏たちの魂がキセキの助力を浴びせる……そう、世界に対し諦めたのは彼だけではなかった。同じ人として現世に生き、現世を良い方向へ導こうとして、現世の悪しき部分に裏切られ続け死に、邪な仏の歪んだ理想に同調するほどに絶望しきった者達が………天変地異、弱肉強食、生殺与奪、権謀術数ext…実際にこの世界は構造自体が過酷であり冷酷であり残酷であるように思えるくらいだし、そこに生きる皆も結局は自分のことで平気で他者を傷つける……今作でも何度も何度も何度もその現実を「ウソ」という形で嘘偽りなく示していたように………
……ある者は自身の過ちを隠すためにウソをついた、また自身のプライドやアイデンティティを守るためにウソをついた、さらにある者は憎悪や嫉妬を用いて他者を傷つけ、中には取り返しのつかないほどの罪を犯してしまった者もいる……けれど、その間違いを隠さず向き合い、それを正せることだって出来ると知れた。過ちを通じて学び、変わることができるのも「人間」だ。いや、人間だけじゃない……
再建した地獄にて閻魔大王として悪しき罪人の魂ばかり見てた地獄王は人間はすべからく愚かだと思いこんでいた。そんな人ならざる者だって現世の人間たちを通じて考えを改め、かつてサタンやナナシノに強いてしまった過ちを気付き謝ることができたのだ。大天使だって、悪魔王だって、特霊魂だって、奇跡の塊だって、現世に生きる人間を通じて新たな気付きを得た。それを無視して独り善がりな結論を出してんじゃねえよ……
しかし世界に絶望した者達の力はあまりにも強く……地獄王は倒れ伏してしまった。このまま邪仏の理想のままに人間の可能性は永遠に摘み取られ、世界は穢れなき白一色に染まってしまうのか………!?
いや……まだ、アレがある。
邪仏…サトリのように、かつての全ての人間を愚かだと思いこんでいたゴクオーが気まぐれに現世に降り立ち、偶然にも立ち寄った小学校で見てしまった、何千何万年と生きて培われた筈の価値観を一瞬にて塗り替えてしまった、地獄の罪人からは見られないような、アレを。
黒と白しか存在しなかった自分の世界に『色彩』を注ぎ込み、どれだけ暗き闇夜であろうと決して呑まれず、瞬きする間も惜しい程に輝く『光』を。
強く
それでいて弱く
ヘタクソで
だからこそたまらなく愛しい
未来を諦めない
気高き心でついた
「おもしれーウソ」が。
ケケ…。
いつだって始まりは天子ちゃんのヘタなウソで…、
みんなの嘘は、オレっちに力をくれる!!!
見たか、邪仏?
「みんなの応援によって立ち上がる主人公」この漫画が10年ずっと積み重ねてきた“絆”、そして“嘘”があるからこそ成り立つ構図……とんでもねぇもん見せてきた………想像を遥かに超えるもん見せてきおった……なんちゅうもんを……なんちゅうもんを見せてくれたんや……(号泣)こんなんウソのミラクルライトやん…………
「ぜんっぜん平気だよ!」謂れのない冤罪をふっかけられようが(抑えきれない涙をこぼしつつ)平然を装うとする、明らかに隠しきれてないヘタなウソ……全てはそこから始まった。そこから数々の物語を経て……時には人間がウソで誰かを騙し、またある時には人ならざる者もウソで別の誰かを騙してきたこともある。けれどそんなみんなもウソを暴かれ本当の言葉を打ち明け、相手に受け止められ、互いに手を取り合い……誰からに言われなくとも自らの心で「みんないっしょになる」ことができる。邪仏よ、お前はそのウソからだろうと始まる、世界が真にひとつになれる可能性すらも排斥しようとしたのだ。
自らを「悟り」と名乗ったかつて人間だった人ならざる者……双方の視点を備える彼は確かに誰よりも世界を見てきて、そして絶望し諦め自分自身が描く独り善がりな理想しか救えぬと見限る結論を出したのも分かる気がする。しかしだ………所詮それは諦めからの思考停止で、他者の抱える思想や感性を受け入れず自分だけの理想世界に閉じこもった……みんなの幸せを考え続ける者としてあってはならない甘えに過ぎない。めちゃくちゃ最悪な例えだけどSNSとかで割とこういう世界に対して第三者の視点を考慮してない机上の空論をさも真実みたいに思い込んで吹聴しやれ知識人だと持て囃されてる人いるよなぁと思ってしまったので、サトリに対しては他人事じゃないというか明日は我が身みたいな人間誰もがこのように甘えた思考に陥ってしまうという身をつまされる気持ちが多少なれどある。そして世界はそう単純じゃない……何千何万年ずっと思い込んでたものが実際に見て体験し一瞬で変わってしまったように……たとえ世界の構造そのものに傷つけられようとも、その世界という自分以外の存在のこと含めて考えることを諦めてはならないのだ………
世界に諦め世界が悪いのだと決めつけ自身が悪だと省みず非道を重ねていった邪なる仏はついに地獄へ堕ちていった……世界で負けずと生きる人間と、その世界を諦めず見続ける人ならざる者たちの勝利であった。そしてそんな彼らとも本当の別れの時が……
・ウソから始まり真実に終わる、人間と人ならざる者の「愛」の物語〜忘れない、そして……?〜
インチキ仏を倒すためとはいえこんな盛大に正体がバレてしまったのだ、このまま予定通りに卒業式には記憶を消して全員と別れなくてはならないのは変わらずである……だからこそ隠し装う部分ない本当の別れの挨拶を言えるのだ。
神の奇跡が意思を持ったネクスト。消費されるだけのエネルギー体が自分自身を証明するアイデンティティを欲し神になろうと画策していたもの。けれど人間たちを通じて情や心を真に感じ、共に想い出を刻み、それこそが自分自身なんだと人間に肯定してもらえた……輝石野ネク助の姿でありつつネクストのような英語交じりの言葉を用いているのがなによりの証拠だろう。
初代のサプライズで元5年2組の佐丹下ルシオとしてやって来た悪魔王サタン。信じようとした者に裏切られ、この世には悪意しかないと思い込まねばならず人間の本性を暴いてやると称し数々の悪行を重ねた……そんなことせずとも善の塊のような人間も悪意を持ってたと知り、だからこそ自分も善意を備えていたと認識できた。彼が他者を助けるキセキを発揮したのもそういうことなのだ。
そして大天使ウリエルことユーリィ・L・神城。彼もまた邪仏のように現世の残酷さに絶望し、善なる人々が汚されないように人の営みから隔離する形で救おうとした者だった。それでも救おうとした人間は現実に負けない強さを持ち、それでいて救えなかったと思い込んでた自分すらも救ってくれた。
「これから先、どんなにつらい現実がキミたちをおそっても…必ず天国で応援してる!」
そんな彼ら人ならざる者が人を信じるようになれたキッカケは一人の人間……小野天子だった(どんだけ人外ブレイカーなんだよこの小学生女児…まぁ天子ちゃんだしな、そりゃそうなるわな)彼女は結果的に一度どころか何度も世界を救い、彼ら自身も救ったのだった……
もちろん彼も。何度も語ったように最初は人間全てを愚かだと思っていたのに現世の人間を直接見て……変わった。それこそ初期の頃を改めて見ると天子ちゃん以外の人間に興味ないだろ感がビンビン伝わってくるほどに。そんなのがいつの間にか「今を生きる人間を尊敬する!」ですぜ?数万年生きた存在にとってこの2年間というのはそれこそ我々人間にとっちゃ一泊二日の旅行くらいに一瞬の出来事かもしれない。けれど……間違いなく心に一生残り続ける最高の想い出になるだろう。
八百小学校…、オモシレーウソをありがとな。
そして……小野天子と共に歩める最後の時間。ついにデート(しかもご両親に顔見せしちゃう)(記憶消えるからお父さん呼びしちゃお!)(初代ィィ!!)(河川敷で握くん(33話)が野球を諦めてなかったので密かに泣いてしまった)までなんかしちゃって………そしてたどり着いた笛育公園のベンチ。あの時に言えなかったけど、二人は互いに言うべきことがあった……全ての記憶が消える前に、なんとしてでも伝えたかった気持ちが。
本当に二度と会えなくなる…それどころか会って共に過ごした記憶すら消えてしまう……ワガママであるのは分かっているだろう、けれども言わなくてはならない。ウソついて隠していたら記憶が消されようとも心の奥底に後悔として残ってしまうかもしれない。だから正直に言った。だって……もう一つ伝えたい気持ちもあるから。
……いつか別れが来るというのはもう分かっていた。ネクスト戦の時からだろうか?それとも誕生日の時にユーリィくんに事実を言われた頃からだろうか?それとももっと前かもしれない……いるべき世界が違うということに。それに……初めて地獄に連れて行かれた時にもう会わないと迫られた際に「助けてもらってばかりなのに、まだなにもお返ししてない」と言ったが……今となれば数えきれないほどに大切なものを、彼が現世で思い残すものがないキレイな顔するまでに与えていた。それがとっても嬉しいから正直に言っている……だけどもちろんずっといてほしい気持ちも……
だから泣いた。いっぱい泣いた。その叶わない気持ちを受け止めるために、いっぱいいっぱい泣いた。思えば天子ちゃんはずって泣いてばっかりだった。泣きそうになるのを堪えつつ強いウソをついたり、本当に泣きたいから泣いたり……だからこその天子ちゃんだった………ネコカラスちゃんも泣いた。そして……
「これがわたしの今のウソひとつない気持ちだよ!絶対…ウソはつきたくなかったんだ……!!」
ちょっと待てよ「コロコロのラブコメはぷにるが初」じゃねえのかよ!?これもう完全に…………そういうことじゃん!!いやあっちは少年が共に暮らしてた存在に抱えてしまった複雑な気持ちに真正面から向き合う故のラブコメだし…もはやこちらは恋愛通り越してさ、“愛”だよ。本当の最後だからさ……見せたいんだよ……ウソ最終回が天子ちゃんが閻魔大王すら出し抜くウソをつくなら真最終回は「天子ちゃんの本当の気持ちを閻魔大王に伝える」をやる。本来なら両立できないことをウソの最終回を用いることによって達成してしまった。恋愛に興味持ったら卒業なんて言われる児童誌において10年積み重ねてきた信頼あるからこそお出しできるものがあるとかすごすぎるだろこの漫画……いやでも地獄王はさ、もっととんでもなかったよ…
最後まで…、ウソつけねェ人間だな…、
小野…天子。
は……………?コロコロコミックでお出しできる限りの「接吻」じゃん………………?ただのキスじゃなくて、「余韻」まであるんやぞ?三白さんが北星くんに赤面してたり正道くんが時目すゎんにデレデレしたりと等身大の小学生らしい微笑ましい恋愛やってる中で、クラスの中ではそういうのにまだ興味ないようなおとなしい娘が誰も知らぬ内にこれ。最後の最後にとんでもねぇことしたぞこの齢数万以上の神的存在……………
そう、何千何万と生きた存在が、そしてこれからも人間の想像がつかぬほどに生命が永く続くだろう彼の「忘れないぜ。」という一人の人間に対する本当の気持ちはそのくらいに強いのだ。小野天子という人間の可能性を見出してくれた存在は例え彼女が忘れようとも、それこそ天寿を全うし別の魂へ転生しようとも、彼はずっと…………
なぜか公園のベンチで寝てしまっている天子を発見した友人のみぃちゃんとゆめちゃん、どうやら夢?なのか分からない、悲しくもあり嬉しくもあることを体験したそうだった……記憶には抜け落ちてしまった、けれど大切な「想い」は心に残り続ける……石豆くんが生まれた弟を見て不思議と涙がこぼれるように、彼女にも………
……実はあの最後のキス代わりのシガレッチョ、各々のキセキや魔力を忍ばせておいていた。もし、天子ちゃんがこれからの人生で「なにか」を経験した際にウソ大好きなあの少年を思い出せるようにしたのだった。かつて過去に戻された筈の自分が未来を思い出せたように…なお彼女の残りの人生においてその思い出せるような経験する確率はだいたい…1/8000000!もはや宝くじ1等とかそういう値で普通ならこりゃ何もなく一生を終えるだろと思っちゃうが……
「あの小野天子ならひょっとして…、とか、思わねー?」
そもそも地獄王がウソ見たさに現世へやって来てあの運命の出合いを即引きした時点で天文学的数字の確率だろうし、そんなキセキを起こした人間ならさ……それこそ何度も言ってきた「まぁ天子ちゃんだしそうなるわな…」だ。きっと、また……………
…ここで終わらせても十分すぎるくらい最高のラストだったろう……
しかし、この漫画は、さらにとんでもない最後を見せてきた!
えっ…まさか…、
ウソだろ!?
次回、ついに総評です