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『ウソツキ!ゴクオーくん』は6年に進級したけどこの漫画はまさかの面白さを出してきて恐ろしさすらあるぞ【〜76話】

見出し画像は65話「6年2組はウソだらけ!!」より。6年2組に進級し別れもあれど新たな出合いもあり……そして新たな“ウソ”もある。相変わらずウソ事件を解決しノリノリなゴクオーくんに…閻魔大王という天子ちゃん以外は知らない筈の正体を囁く謎の転校生・形銭千十郎。彼はいったい何者……?

※注意!今回は特にネタバレしてほしくないのでまだ読んでない人はブラウザバックしてくれ!いやマジで!!

週刊コロコロコミックにて毎週木曜日に過去作レジェンド枠として配信されている『ウソツキ!ゴクオーくん』、単行本が増刷されたとあるように(連載終了したら即廃刊が基本のてんとう虫コミックスにしては異例だそうだ。すごい!)これを機にかなりの人が読んでいるのが感じ取れる。自分も言わずもがな大ハマリで単行本を買ってここまで感想を書いてるくらいだ。そしてここからはいわば後半戦、ゴクオーくん達が6年へ進級し新たなメンバー(そして見慣れたメンバー数名)と共に歩み始める……


まず初めに今回の注意事項がある。今回語られる65〜76話、通称ナナシノ編前回のサタン編に比べ短いながらも、やや特殊で印象に間違いなく残る作風になっている。どういうことなのかと言うとミステリー色が非常に強く、長きに渡ってさりげなく描かれた伏線がとんでもない方法で回収されて読者のド肝を抜いてくるからだ。コロコロコミックなる児童誌でここまでやれるなんてな……このとんでもない伏線回収を是非とも事前情報を仕入れず見てほしいので今回はまだ到達してない人は絶対のこの感想記事を見ないでくれ。いやマジで。これはフリなんかではない。サムネのリーゼントくんがゴクオーくんと因縁あるんだなの認識で留めてブラウザバックしてくれ。俺は言ったからな………ということで6年生編のはじまりはじまり〜!!


・6年2組になって新たに湧き出るウソ、そして新たに紡がれる絆


はてさて前回思いっきり言及したように八百小学校5年2組としての絆はMAXレベルにまで達してしまった。そうなるとなかなかウソ絡みの事件は起こりにくく他クラスのウソ暴きになってしまいがちなのでこの漫画はある手段を用いた……進級によるクラス替えだ。小野天子は当然として外しちゃならない番崎竜丸、ガクくん(学田学)ヒッチー(平近鉄平)といった印象深いやつにメイン回はないものの出番が多かった尼里ゆめに盛杉愛、5年時はメイン回に恵まれなかった晴山チコに乙赦マリエ、舌を抜かれたもののなんか未だ地味な印象残る石豆くんそして我らが地獄王ゴクオーくんは6年2組に引き継がれたものの他は別のクラスへ(メイン回ないのにクラス替わった流清美……)番崎くんのダチの恵比寿くん梶野くんに天子ちゃんの親友みぃちゃんとも別クラスになり哀しい寂しい気持ちはあれど後ろばかり向いてはいけない……なんてったって6年2組の教室にてさっそく待ち受けていたのはウソ事件、そして周囲からの信用ならぬ反感だからな!

65話「6年2組はウソだらけ!!」にてさっそく元4組の茶刈しげるなる少年が花瓶割り事件の容疑者に見立てられていた!目撃者もいるしそんじゃウソ暴きといこうかと思ったら刑事の息子である形銭千十郎がしゃしゃり出てくるし「5年2組じゃ有名みたいだがこっちじゃ通用しないんだぞ」というアウェーの空気が漂い始めて……なんか一人だけゴクオーへの私怨でヤジ飛ばしてる奴がいるぞオメーだよ真ん中のコマにいる磨巾(20話参照。こんな形で再会するのも何かの縁か…)

しかし閻魔大王は、ゴクオーくんは恐れない。なんてったって彼ら見馴れぬみんなも所詮は人間……時にはやらかしウソをつき、それでも過ちを認め反省し皆から許され共に前へ進める。かつての5年2組がそうであったように。
食を愛する故に給食残す他者を見下してたものの自分も密かに嫌いな食べ物があった味本くん、ドッジボールの名手の筈が幼馴染の箱入に怪我を負わせたトラウマで投げられなくなっていた拙井くん、舌を抜かれてはないが己の諦観っぷりで危うく大切なものを失いかけた湯種くんとクラスメイト内のやらかし案件がバンバン出てくる。懐かしいぜこの各々の抱えるもの故についてしまうウソ……そして今回のピックアップは……メンバーを心機一転したからこそ描けた展開の68話「ホントかウソか!?ウワサの真実を辿れ!」における一久世(ひとくせ)くんに触れよう。この一久世優なる少年、学業も運動神経も優秀で容姿も優れ性格も優しいと名は体を表すそのものの少年であるのだが、苗字の方も体を表しているような一癖ある奴で……

(オレをやさしいだ、カッコいいだと…、本当、バカな連中だ!)
皆の絆が深まってないことをいいことに嘘の噂を流してクラス内でケンカを勃発させ、それを眺めて皆の愚かさを密かにほくそ笑むという頭いい奴らしい狡猾なウソを愉しんでいた。自分は既に備わっている信用の厚さで疑われることは絶対ない……後ろにいるゴクオーにニヤつくとこを見られるも一部分だけ正直に話してやり過ごすという強敵ぶりよ。

前回話した学級会が特にそうだったように今作はウソ暴きにおいて証拠や証人だけでなくヒューマンドラマの側面もあるので「信用・信頼」という部分も犯行の疑いにおいて重要視される。この6年2組はまだ一枚岩なんかじゃない……だから嘘の噂で簡単に釣られ結果的に不和が巻き起こる。ゴクオーのウソ暴きでメンタルバキバキに鍛えられた5年2組ではとうてい考えられない(元5-2の乙赦が噂に踊らされてるって?まぁ彼女は後にあるメイン回でなんとなく分かるよ)そう、元5年2組。一久世くんは次の悪意ある噂を流そうとする際に最大のミスを犯してしまう!

(あまりにあんまりな人選ミスすぎて失礼ながら爆笑してしまった。)

「本当のことかウソなのかわからないことなのに、悪いうわさなんて広めたら、番崎くんも、正道くんも、わたしも、一久世くんも、悪い人になっちゃう気がして…。」

元5年2組でないので“あの”小野天子に悪い噂を流す片棒を担がせようと判断した。それだけで彼の悪しき目論みは破綻した。これまで物語を見てきた読者なら一瞬でしくじった要因を分かってしまう、だが一久世くんは天子ちゃんのことを全然知らないので「他のみんなと同じように悪い噂を鵜呑みにして吹聴させるバカ」くらいにしか捉えてなかっただろう。おめーがバカだよ!天子ちゃんがそんな誰かを傷つけるようなことするわけねーだろ!!!一久世おまえ天子ちゃんに誰にも打ち明けられない罪の意識を抱えさせるとかやっちゃならねぇことしちゃったな地獄王と対等に立つ人外だったら直接しばき倒されてたぞ……
天子ちゃんの気遣いで案の定ウソの噂は蔓延せず、同じように彼の積み重ねた優しさを純粋に評価し助けようとしたガクくんが偶然落としちゃった悪しき噂の計画表をゴクオーくんが見抜き偽装工作を仕組みまんまと釣られ悪事が暴かれてしまった。悪しき行いを企んでいた自分自身を素直に想ってくれる人々の「善の心」によって負けたのだった……たちが悪い悪辣なウソなので問答無用で地獄に落とされ舌を抜かれた一久世くん、そして彼が抱えてた本当の気持ちが明かされる……

(SNSをはじめとした表面上の人付き合いでもこういう積み上げられてしまった理想像の押し付けあるよな……と身につまされる)

親…先生…そして友達……みんなは彼のことを常にかっこいいだの優しいだの素晴らしい人間だと評価してくれた。しかし彼だって普通の人間だ、時にふざけて冗談や悪態だってつきたくなる時だってある……それを誰も許してくれない、受け入れてくれない。「素晴らしい人間」と他人によって形成された理想というアイデンティティが彼を縛りつけていた…こうなって吐けぬ鬱憤を貯め続けた、頭がいい彼が思いつく彼なりのガス抜きは当然のようにえげつなく……(似たようなポジションだったろう元5-2の江里戸くんは友達付き合いも大事にして器用だったなぁとしみじみ)

「誰の心にも善と悪がある」前回サタン編にて地獄王がそう言ったように、あの小野天子にも他者を嫌う悪しき感情があったように一久世くんだってそういう部分はあるだろう。しかし周囲がそれを絶対に認めない…コイツからは善意以外を見たくないと(無意識とはいえ)強いてしまった。誰も自分の本音を聞いてくれなかった。噂を流したのをゴクオーにバレないよう誤魔化したら「じゃあそのほくそ笑んでたの校内放送に流しちゃお」と冗談なウソをついてきたのを心から羨ましがったように……洗いざらい本心を打ち明け我ながら最悪な奴だと皆に謝り反省する一久世、周りから持ち上げられるには相応の理由があるように彼は根はちゃんと良いやつなのだ。それならば……

(お前みたいなの前のクラスでしょっちゅう見てきたから安心しなの顔してるガクくん好き)

あの時の5年2組のように“ウソの先”がある。それならばそこから新しい“絆”が紡がれるだろう。それまで5-2に後ろ髪を引かれる気持ちが正直あった自分だったが、この話を見て安心した。6年2組もきっと素晴らしいクラスになれるという確信を得た。一久世くんもそういう一癖ある部分を受け入れてもらえて本当によかった……


そんなこんなで始まった6年2組の物語、そしてもう一つの縦軸の物語が始まっている……初代閻魔大王が500年前にウソで出し抜かれ現世に逃がしてしまった人間の魂。それがこの八百町に住む人間の誰かに転生してるとウリエルからの情報があったのは前回伝えた通り。それの捜索も密かに行われた……地獄王は己のしでかした過ちを正すだけでなく、その魂に伝えねばならぬことがあるからだ

69話「隠されたウソを掘り返せ!」ラストより。元5-2で継続して同クラスになった晴山チコにようやくメイン回が来た。飼っていた犬しばお君が行方不明になっていたのだがなんだかんだで解決(オチが良かったよね…ゴンタ……)その犬探しと並走し地獄長と協力し逃げた魂……ナナシノの捜索もしていたゴクオーくん。どうやら転生先は八百小にいると目星をつけたが果たして……


・現世を巡る魂はどこへ辿り着いたのか〜授け物と責任の果てに待ち受けていたもの〜


このナナシノと呼ばれる魂、それについては74話「特霊魂ナナシノ!」にて語られる。あれは500年前……いつものように地獄に堕ちた愚かな人間の魂を裁いてる閻魔大王の前に『神』から特霊魂……本来現世の生物に転生する筈がなんにもなれずに名も無き魂として彷徨う存在…の転生先が再決定するまで預かれと命令が下る。なぜか知らんが特霊魂に懐かれる地獄王、そんな彼は仮名をつける……ナナシノと。

名前を授ける。名前というのは親から最初に頂く宝物とはよく言ったもの……それがナナシノなんてジョン・ドゥばりの仮名だとしてもだ。地獄王は気まぐれにこの魂にプレゼントを贈ってしまった。そうしたら特霊魂に奇妙な出来事が起こった………成長だ。

(幼体とはいえ獄級魔怪物ベルゼ・バルゼを一体で倒すナナシノ)

仕事を手伝い言葉を喋り戦闘もこなすと明らかに強くなっている特霊魂。いったいこれは何が起こってるのか!?これについては個人の考察になるのだが…地獄王が(仮名だろうが)名前をつけてしまったからが原因と推測している。
「言霊」という概念があるように言葉そのものに霊力が宿るという考えがある。今作にも言霊地獄長コトワリなる存在もいるくらいだ。そして言葉に力が宿るという考えならば……地獄王が特霊魂に「ナナシノ」なる名前を授けたことによって、その名前による言霊のパワーで地獄王の側にいるべきに相応しいスペックを持ってしまったと捉えると分かりやすいかもしれない。それこそちょうど上述した一久世優なんか名は体を表すそのものだったではないか。名前というギフトはその存在を形作るほどに強いもの………自分に名前をつけてくれたゴクオーさまの側に相応しい存在になるようナナシノはそうなった。

しかしそんなナナシノの前に残酷な通知が届く…転生先が決まったのだ。その転生先は…

人間。地獄に堕ちた罪人ばっか見てきたのもあって(500年後に小野天子なる強く気高いおもしれーウソをつく人間に出会うまで)地獄王は人間のことはすべからく愚かな生き物だと思っていた。当然ナナシノにもその旨は話していた……「(転生先が)人間なんかカンベンだよなぁ!?」も添えて。せっかく地獄に住まう特霊魂として、ナナシノという存在を貰ったというのに、その想い出すら失われ(転生すると当然前世の記憶も消失する)さらには…さんざん愚かと教え込まれた人間になれと命令するのか!?
地獄王は粛々と告げる……彼は地獄の裁判官、下された指令や法律は厳守する立場だ。しかしそれ以上に……“また”気持ちを推し量れなかった。この一週間後にサタン自らも気付けなかった善意を知ろうとせず真理の天秤の傾きだけで判断し無間地獄送りにしたように、彼は……名前を授けた責任の重さを、そういう存在にしてしまったのを剥奪することがいかに冷酷かを、示された判決で思慮するのを遮ってしまった。そういうゴクオーくんの「他者の気持ちを推し量る点においてたまにミスを犯す」というのは公正な判断を下し問題を解決せねばならぬ裁判官らしい過ちだと自分は捉えてる。彼は見た目は小学生だが中身はそういう情で揺れ動いてはいけない厳格なる役職に就いてるのだ……それこそ現世で生きている人間のウソに触れてようやく気付くことができたように。

(久々にワリー顔のユリ太郎。勿論ウリエルも当時の騒動を知ってるので意図的に擦ってきている…やっぱコイツ性格悪ッ!!)

この件を覗かせたのはだいぶ話は戻るが28話「ユーリィのひれつなワナ!!」で初めてナナシノの一件が仄めかされたことを思い出していただきたい。ユーリィが仕組んだ転生羽のせいで天使化が進んでる小野天子を助けるため地獄王は……ユリ太郎のウソに引っかかり天子ちゃんが大切にしている亡きおばあちゃんが作った筆箱を破き、それどころかなぜそんなことしたのか理由を聞かれても適当なウソで誤魔化してしまい……天使化を阻止せねばとの焦りで天子ちゃんの気持ちに気付けなかった。あの時ナナシノの気持ちを慮れなかったように

ぼく…、ずっとここにいたいよ。人間なんかになりたくないよ…。

ぼくは…、ナナシノだよ…。





アナタたちが悪いんですよ。なにもなければこの能力だって使うつもりはなかった…。
だが!

ワタシは、この だれにでもなれる能力で、鳥になり、蝶になり、花になり…、永遠に現世にい続けてやりますよ。

ナナシノとしてね!

「何者でもないなら何者にもなれる」ナナシノはとある能力に覚醒していた……特霊魂なるどの魂か定まってない存在だからこそ、どんな生命体にも入り込み魂のスペースを間借りしある程度操れる能力を獲得していた。それを用い厳重に閉ざされた筈の輪廻の扉を開け……特霊魂ナナシノとして現世に脱走した。

何者でもない不確かな存在として生まれた特霊魂に「ナナシノ」なる名前というアイデンティティを注ぎ込める器を与えた地獄王、そんな名付け親に今の器を…積み重ねた記憶やそこから育まれた絆を全て捨て、散々愚かだと教え込まれた存在に変わりなさいと言われたら…大人には受け入れなくてはならない体裁や責任で落とし込める妥協点を見つけられるだろうが、子どもにとっては単純に裏切られた絶望しかない。まるで反抗期……この一件はゴクオーくんも500年間ずっと忘れてない程に気にしていた。なんとしてでも再会し伝えねばならぬことがある。お前が転生する人間ってのは地獄で見かけた堕落しきった罪人ばかりではないことを。

(何万年と生きた神に等しき存在の価値観を変えた一人の少女とんでもなさすぎる。まあ天子ちゃんだしそのくらいしてもおかしくない…)

そんな八百小学校に通う人物に転生したと推測される特霊魂ナナシノ、その間借りした宿主の正体は次の75話「ナナシノの居場所を突き止めろ!!」にて判明するのだが、それはまさかの人物だった……





オレっちはなァ…、500年間、一度もオマエを忘れたコトはなかったんだよ…。
そのツラ完全に見せるまで、オマエのウソを剥ぎ取りまくってくぞ。






舌を抜かれたもののなんか未だ地味な印象残ってた石豆くんだった。


・巡る魂の行き着きし場所とは〜最初は偽りの繋がりだったかもしれない、しかしそれでも確かに残り続けるものがある〜


…はい、上のネタバレ注意喚起で「サムネのリーゼントくんがゴクオーくんと因縁ある」と言いましたね……ウソだよ〜!!いや〜我ながら大胆なウソつけるようになったもんだ。そんなリーゼント坊やこと形銭千十郎くんはいわばミスリードってこと。エンマさまと囁いたのは事件解決を横取りされて悔しい所を石豆くん(ナナシノ)に「エンマさまって言うと嫌がるよ。それとボクがこれ伝えたの黙っててね」と助言されたからささやかな嫌がらせとして行ったのだった。まぁなんも事情知らない人から見ても常時ウソツキ探ししてるゴクオーくんは閻魔大王みたいだよなと言われたら納得できるし…(理由を追及されたのを約束だからと黙っていたのもそのため。律儀だねぇ)

73話「難事件も一発解決!形銭交番におまかせ!!」にていかにもなオーラを放つ千十郎くん…と思わせて上の階から石豆くん(ナナシノ)がそれっぽいオーラ放ってるだけ。現世の人間には見えない類なのか天子ちゃんどころか本人も気付いてない。
余談だがこの形銭千十郎、単行本3巻に収録された初期設定イラストで天使として出す予定だったも例の変態外道眼鏡に取って代わられお蔵入りになっていた歴史あるキャラクターだったりする。連載追ってた人はそんな没キャラが物語のキーパーソンとして採用されたように登場したので感動しただろうが、まさかそれすらも誘導として……

とまあ捜査の撹乱として利用されていた形銭くん、しかしこの漫画は哀れな使い捨てとして終わらせない……彼が石豆くんと友達になった67話「名刑事・形銭千十郎!無実を証明せよ!!」にて明かされた彼の過去を思い出していただきたい。親の都合で転校ばかりで友達作りが難しい千十郎くんだったが、2つ前の学校でようやく気の合う友人が出来た。そんな子とも転校で離れ離れになるも大切なつながりを途切れさせたくないと手紙を送り続けていた。しかし……

(ちょっと優しくしただけでいい気になりやがってパターンだこれ…)

彼もナナシノのように大切だと想っていた相手から一方的に裏切られていた。自分は他の人がそれを指摘していてホンマかと読み返して気付いてたまげてしまった。そんな辛い過去を抱えた彼が石豆くん…ナナシノと知り合ったのは偶然だろう(撹乱のための告げ口した際はそんな事情知らなかったし)そういうウソの片棒担がせちゃった後ろめたさもあってその後にも彼に近付き、その過去を知ってしまったかもしれない。しかしそんな彼に思う所が、放っておけない部分があったようで…

同じ傷を持つ者だからこそ共感した。友達になろうと手を差し伸べた。そう考えると納得がいく。出会ったのは偶然だし最初は利用するだけだった、しかし石豆くん(ナナシノ)は…本心で千十郎くんと友達になった。彼との“つながり”は、絆は決してウソなんかじゃない。それだけは確実に言える……

石豆タグル…5年2組のメンバーが勢揃いした10巻の表紙でもうまい具合に隠れてた彼の名前がこの自己紹介カードでようやく判明した瞬間だったりする。タグルなんて一風変わった名前だなと思いがちだが、このナナシノ編が完結する16巻のオマケにて載ってるがアナグラムにするとタマシイメグル(巡る魂)となっている。既に仕込んでいたとは……そしてその10巻に収録されたあの話には驚くべき真実も…

そんなミスリードとはいえ大切に扱われた千十郎くんの影に隠れてたナナシノ、その正体に辿り着くまでのミステリー要素がコロコロコミックでは例を見ないほどにすさまじい。69話の天地融合結界にて八百小学校にいると目星つけた時点で一定数は絞れていた。そこから70話にて番崎くんの亡き祖父リュウジがお盆だからと現世に還った際に「孫の友達に魂が2つ持ってた子がいたのを見かけた」と伝えたのでさらに絞られ、そして73話の千十郎くんが謎のオーラ放った時点で天子ちゃん・千十郎くん・石豆くんの3人に候補を絞られたワケだ。ここらだけでもまぁすごいのだがさらにとんでもないのを出してきて……


「オレっちは消去法で次に、アンタ…、石豆くんをハズそうと思った…。」
それは前回サタン編まで遡る……43話「ゴクオーに下った神の罰!!」にて石豆くんはボールを踏んでパンクさせたのをウソで隠し、ゴクオーくんに舌を抜かれるというしょーもない一件があった。ぶっちゃけこの後に初代閻魔大王が神罰で人間化したりサタンに殺されそうになったりユーリィが復活したりと大騒動が発生したのもあって石豆くんは舌を抜かれたのにも関わらず5年2組内ではかなり影が薄かった……ナナシノが関わっていたことならばそれも正直に吐いてるだろうし、そんなの聞いてないので彼はシロだとナナシノ候補から除外しようとしていた、が……そこに“罠”があった

(えっマジで!?確認せねば……)
あああーっ!なんかゴニョゴニョまだしゃべってたー!!天子ちゃんは当時そんな事件あったのなんか知らないんで聞いてもいなかったー!!!!

地獄王に神罰が下る際にサタンがその機を狙って命を奪おうとしたように、間違いなく地獄でゴタゴタが発生するからとナナシノもこのタイミングであえてウソ事件を発生させ舌を抜いてもらい「洗いざらい話し自分はナナシノとは無関係である」と思わせて容疑者から外してもらおうと策を講じたのだ!神罰執行の前夜に空に輝く大きな光輪が目印であったように、石豆くんもそれを観測し内部に潜むナナシノがチャンスと踏んだのだろう……月刊誌でのその事実が判明するまでの間なんと2年8ヶ月、読者の入れ代わり激しい児童誌コロコロコミックという媒体で章を跨いで伏線を張り回収するという前代未聞のトリックを見せてきた。新たなるヤバさを見せてきたぞこの漫画!!!これがネタバレ絶対してはならないと注意喚起した理由だ。ここまで辿り着いてる方々は既読勢と信じてるので週刊コロコロコミックの配信でここまで辿り着いたら(来年になるけど)この一件だけは週刊初見勢に黙っていてほしい……初見の皆さんがどんな衝撃を受けるのか楽しみにしてるから……


そんな大胆極まるアリバイ工作(危うくサタ公に一生悪口しか言えない舌を植え付けられるとこだったんだぞ!)をしてでも正体を突き詰められたナナシノ。奴はゴクオーくんの魂に再び侵入し今度こそ真に乗っ取ってやろうと画策していた……そしてナナシノ編最終回の76話「500年ぶりの再会!ゴクオーvs.ナナシノ」にて地獄王の心の中であるウソホントの世界で500年前の因縁がついに火花を散らす!

地獄王そのものを模したナナシノは強かった……ゴクオーくんの実力をコピーしつつ500年間も現世を見てきた違いによる精神的強さも加算されてるなら当然だ。一方でゴクオーくんが現世にいたのは僅か一年……だが我々読者は知っている、そのたった一年でも、彼が見てきた現世というのはとてつもないものだったというのを!


「…安心して!石豆くん!千十郎くん!ゴクオーくんが…、きっと、ナナシノさんを救ってくれるよ…!」

黒と白しか存在しなかった世界に、「光」が注がれ、その光は世界に「色彩」を生み出した……自分はソシャゲやらないので某英雄召喚ゲーのことよく分からない。なので既読勢が「ゴクオーくんは『色彩』(そのゲームの挿入歌だそうだ)をめちゃくちゃ上手く歌う」と称する感想を聞いても今一ピンと来なかった……まさかマジもんの意味での『色彩』が出てくると思わねーだろ!!そりゃ確かにあたしゃ天子ちゃんのこと「闇の中でも輝き続ける光」と例えたけど……ここまで光源色とか直接的な意味で出てくる!?

ヒロインからこぼれた涙を受けて復☆活からの大逆転!古典的すぎる展開でそんなんアリかよと一瞬頭によぎるが「まぁ小野天子の流した涙で復活しない方がおかしいよな…」の説得力がありすぎる(普通の小学生女児やぞ?)分かるかナナシノ?これがオレっちが現世で見てきた一年間、オマエに教えたかった「生きている人間の素晴らしさ」というものだ。もっとも……ナナシノも分かってるみたいだがな。ゴクオーを乗っ取るなんてのは当然ウソ(それなら正体暴かれる前に奇襲すればいいだけだし)、あんだけ嫌ってた人間に宿り続け、さらに別の人間とも仲良くなれたなんて……ナナシノも人間は愚かでないと既に分かっていた

何者でもない特霊魂として現世に逃亡したナナシノは500年の時を過ごした…鳥に、蝶に、花になり、人間の愚かさをこの目で見続けながら……しかし「人間として転生せよ」という神の命は強力な言霊であったせいか人にならない魂は衰弱し続け消滅寸前になりかけていた。このままではいかんと体力回復のために渋々と平穏な家庭の人間、石豆タグルに宿っていたが……そこから見た人間の世界は想像してたものと違ったのだ……

人間に触れ、人間は全員が愚かでないと知れたナナシノ。一方で宿主の石豆くんも自分の心の中に住まう魂を兄のように慕っていた…幼少期特有のイマジナリーフレンドのようなものだと言われればそうかもしれない。時期が過ぎたら抜け出そうと考えてたナナシノだったが、そんな石豆くんの「いつまでもいっしょだよね?」の言葉を受け……同じだった。自分がゴクオーさまに感じてた想いと。そしてナナシノは「ワタシのことを黙っているなら」と返答した……


…今ならわかる。なぜ…、あの日あんなことをタグルに言ったのか…。

ぼくは…、ゴクオーさまとみんなと……、ずっと地獄にいたいだけだったんだ……!

地獄王すらウソで出し抜き輪廻の扉を開けた際に言ってしまった「ウソってたいしたことないですね。」ウソを愛する彼に対する最大級の侮辱である(それ言われブチ切れ状態で印章持った件を責められたサタ公ェ…)怒りで言ってしまい申し訳気持ちもあっただろう…黙ってくれたらずっといるよと結託させるように提案し、あそこまで周到に仕込んだウソをゴクオーさまなら暴いて辿り着いて迎えに来てくれると信じてた。まるで家出した筈の少年が親に探してきてもらいたいと思うように……

ゴクオーさまも自分がナナシノという名前をつけたにも関わらず気持ちを慮れずあのような扱いをしてしまったことを侘びた。サタンの一件のように、彼も現世の生きる人々に触れてようやく気付けたものだった……互いに憑き物が取れ、ナナシノは己の運命を受け入れる……転生する人間は愚かなんかじゃないと分かっているから。そうなれば石豆くんから記憶は全て消える、けれど……





後日、石豆タグルは兄になった。弟の名前は「喜生(はるき)」、自分が生まれてきて良かったと心から思える人生になってほしいと名付けた…一番最初の宝物だ。そして……


いや〜、まさかあんな近くにとはなァ〜!

─全てを知ってるエンマさまより─


ぼくの『気持ち』は、石豆タグルの心の中にきっと残っているから……。

最初は偽りの“つながり”だったかもしれない。けれど、それでも確かに残り続けるものがある。

・今回はここまで〜次回、ついに“神話”がくるぞ〜


6年生になっても依然面白いどころかナナシノなる敵の正体を暴く謎解き要素も入れてきたゴクオーくん。当時リアルタイムで追ってた人は石豆くんが犯人だとどこらへんで気付けただろうか(自分は直前の73話だった)ともかくその敵に対する謎解き要素は次回語る展開においてもかなり重要視されているので注目だ。

そして次の新章では……500年の時を経てナナシノを現世に逃した一件がようやく解決するも、その責任として地獄王が再び神罰を受けることになる。しかしその為に現世に降り立った“執行人”がとてつもなく厄介な奴で……そんなこんなで次回はファンの間から“すごいすごいと言われて読んでみたら想像以上にすごかった”と噂の99話が収録されている。俺もあまりのすごさに「うそでしょ……」としか呟けなかった。そして敵の辿り着く結末に涙を流した。というワケで次回を書きました!

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