『心』を『亡くす』

スーパーでの出来事

買い物をしようと
ショッピングカートを取りに行った

カート置き場は
無造作に返却されたカートだらけ
日常的な光景

生活のため
子どものため
家族のため
『経済』を回すオトナたちは忙しい
時間の余裕などない
バラバラに置かれたカートを見ても
何も感じない
感じる余裕すらない
何も感じない忙しいオトナたちが
また無造作にカートを置いていく

ひとりの少年が
空のカートを引いてやって来た
使ったカートを返しに来たのだろう

バラバラに置かれたカートを見た少年は
ひとりで丁寧にカートを片付け始めた
カタチの違うカート毎に分け
丁寧に丁寧に時間をかけて片付けた

しばらくすると
母親が現れた
カートを返しに行ったまま
帰って来ない息子を
探しに来たようだ

『そんな事しなくていい!』
時間に追われる母親は
少し苛立った口調で
少年にそう言った

バラバラに置かれたカートは
まだ残っていた
残ったカートを気にしながら
少年は母親の後ろをついて行った

じぶんが
母親と同じ立場だったら
息子に何と声をかけただろうか
息子の中に育ち始めた
素敵な『芽』に
優しい言葉をかけてあげられる
余裕はあっただろうか

『忙しい』は
『心』を『亡くす』と書く

『仕事で忙しい』
約束をドタキャンしても
『仕事』と言えば許してもらえた
『仕事』が大好きだったじぶん
生活の中で『仕事』が大部分を占めていった

そんなじぶんにとって
『仕事で忙しい』は
最強の言葉になっていった

ふと気づくと
じぶんの周りからは
一緒に遊んでくれる
友だちがいなくなり
いつしか『心』を亡くしてしまった
じぶんがいた

『仕事をすること』
『経済を回すこと』
正しいことだと思っていた
みんなが幸せになれること
そう思っていた
疑うことなどなかった

心を亡くした先に
幸せはあるのだろうか

少年の純粋な『心』に
何かを感じたじぶん
少年が
気にかけていた残りのカートを
片付けた
じぶんの中に芽生え始めた
新しい『心』の芽を育むために





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