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個性と言えなくもない病状
マルファン症候群は遺伝子に異常がある遺伝病。
すなわち生まれたときから、病気である。
遺伝子が悪さをするので、幼い頃からその成長過程において自然と病状は現れる。
今回は私がマルファン症候群であることが発覚する12歳頃までに現れた症状についてシェアしてみようと思う。
症状には個人差があるようなので、私に出た症状がすべてのマルファン症候群患者に出るわけではない。
逆に他の人には出ている症状でも私には出なかった症状があることも付記しておく。
【高身長】
現在、身長176cm。
女性にしてはかなり高身長であるようだが、この病気の女性の平均身長である。
生まれたときの身長は50cmと至って普通だった。しかし誕生からしばらくすると、驚くほどのスピードで成長し始めたらしい。
毎日私をベビーバスに入れてくれていた祖父母が、あっという間にベビーバスから足が出てしまうほどに成長したと懐かし気に語ってくれた。
3歳頃には5~6歳児ほどの身長になり、母に負ぶわれると脇からにょっきり足が出ていた。私の年齢を知らない近所のおばさんに「そんな大きい子をおんぶして」とあきれられることもあったそうだ。
それから後も、中学3年生頃に成長が止まるまで私の身長は順調に伸び続け、背の順で並んだときは常に一番後ろ。
他の子よりも頭一つ分以上高かった。
その急激な伸び方は、今でも体のあちこちに残る肉割れの痕が物語る。
マルファン症候群は体の組織の結合が弱い病気だが、どうやら結合の弱い部分とそうでもない部分もあるようだ。
骨や血管などの結合は弱く、どんどん伸びても、皮膚組織の結合はそうでもなかったらしい。
私の身体に残る肉割れの痕は、皮膚が骨の成長ペースについていけなかったことを示している。
同じ私という人間の組織であるにもかかわらず、成長のペースを合わせられないなんて、まったくなんとそれぞれに強い我を持っていることだろう。
これが本当のわがままボディである。
ちなみに肉割れという、聞くとなかなか痛そうな症状を起こした私の身体であるが、本人、その成長過程において全く痛みはなかった。
また、身長が高いことは幼稚園や小学校に上がるくらいの頃になると、徐々に人と違うことが気になり始め、強いコンプレックスになっていった。
どこにいても嫌でも目立つので、コンプレックスが解消される時期が来るまで、いつも背中を丸めて過ごしていた。
私が抱かざるを得なかったコンプレックスとその解消については、またどこか違う記事で語ってみたい。
【やせ型体型】
ひょろひょろとしたやせ型体型であることも、マルファン症候群の典型的な症状だ。
私も例にもれず、幼少の頃から現在に至るまで、ぽっちゃりしていたことがない。
むしろ常に痩せすぎに分類される。
小学生の頃など、「折れそうだ」と大人によく言われたものだ。
保健の先生には心配され、顔を合わせるたびに好き嫌いせずにちゃんと食べるよう言われた。
しかし、私は別に偏食というわけでもなく小食というわけでもない。
スナック菓子も食べれば、肉も人並みに食べる。
決して他人より食べないということはない。
それなのに常にガリガリなのである。
思春期の頃には、少々体重は増加したものの、普通体型には程遠い。
周囲には「モデルみたい」と言われ、調子に乗ってきたが、今ではそろそろ女が熟す年ごろ。
もう少し肉をつけて色香を漂わせてみたい、と日々奮闘しているところである。
【長い指】
私の指は長い。
自分では見慣れているせいか、そうは思わないが確かに長い。
誰かに出会うたびに、その指の長さを指摘されては手を重ねられ比べられてきた。
私の小指の長さが、普通の人の人差し指の長さと同じくらいこともしばしば。
これは生まれたときからの症状で、赤子の頃のアルバムを繰ってみると、「ずいぶん指の長い子だなぁと思った」という父のコメントが残されている。
写真などで客観的に改めて自分の指を見ると確かに異様に長いのだが、
祖母を始め、私の周りにいる優しい人々から「きれいな手やなぁ」と絶賛されてきたのを鵜呑みにして育ったため、自分の手が異常であることに気づくのに少々時間を要した。
我ながらなかなかめでたいものである。
【長い足】
自慢じゃないが私の足は長い。
ジーンズの裾を切ったことはないし、国内メーカーのパンツでは裾が足りないこともしばしば。
いわゆるモデル体型だ。
女性に比べて足が短い男性の中には、私の隣に立つことを嫌がる人もいた。
足の長さについても周囲に羨ましがられてきたゆえ、本人いい気になって過ごしていたが、実はこれも病気の症状。
単純に喜べないことなのである。
【鳩胸】
鳩胸になったのは幼少期の頃のこと。
体調を崩して病院にかかったときに、骨の変形を心配した母が医者に尋ねていたことを記憶している。
胸部の骨の変形もマルファン症候群を患っているとよく見られる症状の一つだそうだが、鳩胸とは逆の漏斗胸になる人が多いらしい。
私の場合は、胸骨が突出する状態。
一般的によくいわれる鳩胸とは症状が異なり、骨に変形が生じている。
だが、幸い私の場合は正面から一目見ただけではわかりにくいのか、水着を着るなどしても他人から指摘されたことはほとんどなかった。
そこまで露出する部分ではないこともあり、辛い思いをすることもなかったように思う。
さらにデコルテ部分にできる限り肉を寄せることで、よりごまかせそうだと現在もバストアップに奮闘中である。
【脊柱側弯症】
脊柱側弯症になったのは小学校6年生のときのこと。
5年生のときに学校で検査されたときは正常だったのに、進学塾に通うようになって学習時間が増えたら途端に曲がった。
気づいたきっかけは左肩の腫れ。
整形外科にかかったところ、レントゲン撮影をされ、肩の腫れは側弯症によるものだと診断された。
治療するには手術しか方法がないといわれたが、そこまでひどく湾曲しているわけでもなく、何より大切な神経の通う背骨を手術するのは怖いという母の判断により、手術しないまま今まで来ている。
人によっては側弯による痛みに苦しむこともあるらしいが、幸い私の場合はそのようなことがなかったことも理由の一つだ。
しかし、やはり背骨がゆがむことによる体の変形は、肩だけでなく背中にも現れており、長年悩みの種にもなってきた。
効果的な解決方法に出会えず悩み続けたが、ここ数年、ピラティスに取り組むことによって、大きく改善が見られ、現在も希望を持って引き続き取り組んでいる。
側弯症はマルファン症候群でなくても、思春期の女子に発症しやすい病でもあり、背骨や体の歪みに悩む女性も少なくないと聞く。
また、どこかで機会を設けて、私が側弯症の改善のためにやってきたこととその効果などについてもシェアしてみたいと考えている。
この他にも関節が異常に柔らかく、手の親指が驚くほど反らせたり、膝がひっくり返ったりする(?)ような症状もある。
しかし、肉体的な痛みや苦しみを感じることはなかったので、そこまで問題となることなく過ごしてきた。
特に、高身長、やせ型、足が長いことについては、周囲が「スーパーモデルになれるよ!」「モデルみたい!」などと褒めそやしてくれたこともあり、コンプレックスだと言いながらも少々誇らしく思ってきたところすらある。
しかし、本人がどんなに有頂天になろうと病気は病気。病気なのである。
だが、病気も含めて私の個性だと捉えれば、その病気にかわいげが生まれる。
そうはいっても、大動脈の大手術を行わなければならなくなるのだから、やっぱりかわいげなんてなく、病気であることに違いない。
いや、しかし、手術さえ済んでしまえば、怖いことなどないし、やはり素敵な個性…
そんな堂々巡りの議論ができてしまう病気。
それがマルファン症候群なのである。