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『大学』と『中庸』をテーマにした漢字検定1級の模試
PDFは本記事の下にあります。
漢検1級の難化につれ、漢検1級の作成と共有が増加しています。
私も模試の作成に挑戦してみたいと考えていましたが、どのような貢献ができるかと思案した結果、「古典をテーマにした模試」という企画を思いつきました。
漢字検定はリピーターが多いことが知られていますが、合格したにも関わらず受験し続ける理由は、各受験者にはあると思います。私自身は、とにかく古典が好きです。
しかしながら、漢検の界隈でも、古典についての深い議論はあまり行われていません。かつては日本人なら誰しもが知っていた言葉が、現在は漢字検定の最高級で出題されているのです。さらに、受験者が出題されている言葉を知っていても、出典や文脈についてあまり意識していないことが多いと思います。これは非常に残念なことです。
漢検を通じて古典に対する理解を深めたい方や、漢検の勉強で覚えた言葉を整理したり、定着度を上げたい方は是非挑戦してください。
今回テーマに選んだ古典は朱子学の四書に含まれている『大学』と『中庸』ですが、『大学』と『中庸』は非常に短いため、問題が足りませんでした。そのため、朱子の『小学』で(主に読みの問題を)補いました。
この投稿ではネタバレを避けるため、模試の紹介に止めることにしますが、後日テーマに選んだ古典の内容(本模試と関わる範囲まで)と模試作成の経緯についてお話ししたいと思います。
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本模試の特徴について
ほとんどの問題は『大学』『中庸』または『小学』の原文の書き下し文を基に作りました。文脈の分かりやすさとキリの良さを重視しました。但し、出題したい文章の一部は文字数の制限を超えるものがありました。その場合、独立した文章としても成立するように工夫し、問題解説の資料に全文を載せることにしました。気になる方は参照してください。また、『大学』と『中庸』の読み下し文は主に朱子の解釈である『大学章句』と『中庸章句』によります。
熟字訓・当て字の問題はありません。今回テーマに関係のない出題になってしまうためです。その代わり、儒教(主に朱子学)に関する語選択問題を設けることにしました。ご了承ください。同じく、国字の問題もありません。
四字熟語の第二問の問題文では定義を使わず、出典にある当該四字熟語の周りの言葉を問題文としましたが、読んだことがなくても類推で正解に辿ることは可能だと思います。難易度は上がると思いますが、四字熟語が初出でどのような意図で使われたかを意識すると面白いです。
文章題は朱子の『大学章句序』の全文です。多少長いですが、興味深い文章ですので、受験後是非熟読玩味してください。(ところで、「熟読玩味」は『小学』の言葉です!)
標準回答には、漢検1級配当外の漢字が一つ含まれています。但し、今回テーマに選んだ古典『大学』においては中核的な概念であるため、この機会に是非覚えていただきたい言葉です。標準解答では当該の解答に※を付けておきました。
『大学』『中庸』『小学』が出典となる四字熟語のリストをも作成しましたので、是非参照してください。『新明解四字熟語辞典』と『漢字検定四字熟語辞典』のページ番号をも記載しておきました。『新明解四字熟語辞典』に収録された四字熟語を全て入れたつもりですが、漏れがあるようであればご指摘いただければ幸いです。
出題の分配(ダミーを含めて)
『大学』33問
『中庸』48問
『小学』24問
『大学章句序』20問(全問文章題)
『朱子語類』1問
典拠無し(儒教関係)9問
今回の模試の作成に当たり参照した文献
大學章句 (國譯漢文大成) (wikisource)
中庸章句 (國譯漢文大成) (wikisource)
『大学章句序』(Web漢文大系)
矢羽野隆男 『大学・中庸 ビギナーズ・クラシックス 中国の古典』 (角川ソフィア文庫)
金谷治 『大学・中庸 (岩波文庫)』 (岩波書店)
荒井桂 『「小學」を読む (己を修め徳望を磨く古典)』 (致知出版社)
加地 伸行 『儒教とは何か 増補版』(中央公論新社)