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手をふるコミュニケーション

遊覧船でも屋形船でも連絡船でも船に乗っている人に手を振る。
対岸から手を振る。
桟橋から手を振る。
大きく腕を挙げ手のひらを思い切り広げて、肩が外れそうな食らい力強く振る。
端から見れば大人げなく見えるだろう。
黒髪でおかっぱ頭のいい年の女性が力任せに我を忘れてバサバサと動くのだから。

船に乗っている人を見かけると無性に手を振りたくなる。船が風を作り外気を気持ちよく感じている人は平和の象徴のような気がして、そのひとかけらに無性に触りたくなる。
手を振り返してくれる人からは平和のかけらが舞い上がり、手を振っている私の手のひらに張りつく。
船に乗る人が手を振り返してくれる確率は100%だ。
皆んな優しい。
苦笑いでもシブシブでも距離があるのでよほど近くを走行しない限り表情は読み取れない。
しかし、たいがいの人が黒髪おかっぱ頭の自由時間に付き合ってくれる。

先日、久しぶりに隅田川沿いのお花見を楽しんだ。
例の如く言問橋の上から行き交う遊覧船に手を降った。久しぶりの手振りコミュニケーションにテンションが上がった私は、いつも以上に飛び上がりながら手を振る。すると船に乗っていた人も両手を上げて答えてくれた。
かすかに見えた表情は桜に負けぬ笑顔であった。

手を振って平和のかけらと桜の花吹雪が私に降ってきた。




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