三線持って沖縄へ#04石垣島のナミィさん・その②
ポレポレタイムス社の早川さんに2度目のメールを送ったのは2020年5月、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が大型連休を台無しにしていた頃だった。
石垣島に行くことに決めた直後くらいだったと記憶している。
早川さんを通して、ナミィさんの娘さんの連絡先を教えてもらい、いきなり電話というのもビックリさせてしまうのではないかと考えた。
そこで、ショートメールで「お墓参りをしたい、お墓の前で三線を弾きたい」というようなメールを送った。
返事はすぐにあって、「ナミィも喜ぶと思います。私も予定が合えばお会いしたいです。その頃にはコロナも落ち着いてるでしょう」っと、なんとも気持ちがスキップするようなメッセージをいただいた。
ナミィさんの墓参りで歌三線を披露する曲は、片思いの女性の気持ちを歌にした「十九の春」と、サイパンやグアムからの引き上げの人たちの南洋への思いや南洋での思い出を歌にした「南洋帰り」に決めた。
いずれもナミィさんが東京木馬亭でコンサートを開いた時に歌っていた曲である。
「十九の春」は三線を習い始めた頃に練習していた為、すでに手を覚えていたが、「南洋帰り」は歌三線の形になるまで旅行直前まで時間を要してしまった。
旅行前の楽しいカウントダウンは、焦りをマックスにするだけの時限爆弾に思えた。
「南洋帰り」がリズミカル弾けるのと時期を同じくして、沖縄の新型コロナウイルス感染者がジワリと増えて行く現実があった。
恐れていた石垣島での感染者も1人、また1人と日に日に増していく。
石垣島行きを明日に控え、1人職場で残業していた時にナミィさんの娘さんから電話があった。鳴った電話を取る前に、私はすぐにナミィさんの娘さんが伝えたい内容は理解した。
「残念だけど、会いたかったけど、石垣島でも感染者が増えて来たみたいなので、今回は会うのをやめましょう。」
多くを語らなくても優しさが伝わる電話だった。
「また会いましょう」っと、1度も会ったことがない者同士が再会の約束をして電話を切った。
つづく。