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肩の脱臼と専門化の落とし穴

肩の関節は脱臼しやすいです。

いわゆる、肩外れる現象で、関節が外れてしまうことを脱臼と言います。
臼状の骨(肩甲骨)に、球状の骨(上腕骨)が噛み合って関節を形成しているのに、臼から外れてしまうわけですね。
スポーツをしたり、外力が加わった時になります。
読者の方の中でも、経験された方はいるかもしれません。

ちょっと専門的な内容になりますが、肩はほとんど前に外れます。
僕が整復(元に戻すこと)をした患者さんもいずれも前に脱臼していました。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/katakansetsu1977/15/2/15_200/_pdf/-char/ja

肩が外転,外 旋,外分回しの時、つまりボールを投げるのに振りかぶるようなポーズで外れやすいそうです。
なぜかというと、この状態の時に、球状の骨が、臼を前に乗り越えるような力がかかるとされています。



https://www.meitetsu-hospital.jp/department/kansetsukyo03/関節辰の字が間違えています、正しくは関節唇

これを乗り越えると、関節唇と呼ばれる、臼の縁についている軟骨が損傷されます。Bankert損傷と言います。

リハビリの世界でも、肩関節(肩甲上腕関節)は前方が弱いと言われています。特にここには肩甲下筋という筋肉が関節を包んでいますが、そこの張力も弱いという感想が理学療法士からは聞かれます。

この図では関節を腕の方向から見ています。右が前です。肩甲下筋があることがわかります

https://kitakata-sekkotsuin.com/13556

実は前方の関節唇には、正常変異と呼ばれる、異常ではないが、変な構造がいくつか知られています。

例えば、関節唇下孔/遊離と言って、関節唇が骨から完全に離れているものもあります。
下の画像では、肩関節を水平に輪切りにした映像です。
上が前方で、下が後方を表し、上の矢印部分(前方)が関節唇で、白い筋は亀裂を表しています。矢印がないですが、下の部分(後方)では白い筋がなく特に異常はありません。



https://遠隔画像診断.jp/archives/41384

他にもいくつかあり、前方の関節唇は正常なのに形がおかしいとか、亀裂が入っている場合が多いことがわかっています。

肩関節が前方に弱い人が多い理由は、この関節唇の先天的な異常も加わっているのではないでしょうか。

これらは異常ではないので、あまり取り沙汰されることがありませんし、無視される場合もあります。
ベテランの理学療法士の方に聞いてみましたが、存在を知らなかったとのコメントをいただきました。

ある部署ではよく目にするものでも、特に意味がないものはスルーされていて、他の領域では実はとても大事なメカニズムの一部だったりします。が、意味がないので、長年お互いその存在に気づかないということは、意外と散らばっているのでは?と考えています。