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左右逆な人

表面上は左右対称でも、体の中は非対称になっています。
完全内臓逆位と言って左右逆の人がいて、特殊な病気にかかる場合があります。
きっかけは受精卵の直後に遡るそうです。

人間の体は、左右対称ではありません。
胸部では、心臓が左に突出してついており、心臓に接続する太い血管は本数も分岐も左右非対称です。

例えば、心臓へ全身から戻る血液を運ぶ血管(静脈)は上下一対ありますが、心臓から全身へいく血液を運ぶ血管(動脈)は、上に一本しかなく、途中でループして腹部の方に向かいます。ループの途中で上半身や頭部に向かう太い血管が分岐します。

結構バラバラなデザインですよね。

ちなみにこの臓器の左右差により体幹の左右差に繋がります。

ところが、大体数千人から1万人に一人は、体内の臓器が逆です。
僕の経験だと、年1人合うか合わないかという感じです。
胸部だけ逆の人もいるし、胸腹部全部逆の人もいます

全部逆の人を完全内臓逆位と呼びます。
不思議なことですが、完全内臓逆位の人は、副鼻腔炎(蓄膿症)や肺の感染症になったりします。(Kartagener症候群)

副鼻腔や肺の気管支の内腔には、線毛と呼ばれる小さな細い毛が生えており、病原体や異物の排出を行っていますが、これがうまくいかないらしいです。原因となる遺伝子も同定されています。

実は内臓が逆になるきっかけは、受精卵の直後の胚(はい)という状態に遡ります。
この時に、原始結節と呼ばれる期間が形成され、そこに一本の毛が生えているそうです(線毛)。マウスでの話ですが、この毛が作り出す水流が左回転だと、正常な臓器の配置になるそうですが、回転しないとランダムになり、人為的に逆向きにすると逆の臓器の配置になるそうです。


http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/jkpum/pdf/122/122-6/kobayashi06.pdf

つまり、線毛という毛が元々うまく働かない原因で、内臓の配置と、感染症へのなりやすさの両方が起こっているんですね。

このような現象は自然界でたくさん見られることです。人体は複雑な存在ですが、きっかけは最初の方向づけだったりします。

僕もここまで単純な現象で、内臓逆位が起こるとは知りませんでした。