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仕事が著しく複雑になっている③


例えば、1700年と、1725年の日本では、歴史学者の後付けの分類では、元禄文化の時期でした。主に関西由来の文化的な潮流があったようです。

ですが、職業はそこまで変わったでしょうか。

この頃日本では産業革命はありませんでした。
多少の改良はあったかもしれませんが、
例えば、農業をしている人は、ほとんど同じような仕事をしていたんじゃないでしょうか。

少なくとも、手作業の田植えから、田植え機になるような変化はなかったと思われます。

さらに、想像すると1950年と1975年もそこまで違いがあったかというと、あんまりないかもしれません。1970年代前半にようやく電卓などが普及してきた頃ですね。

しかし、2000年から2025年はどうでしょうか、ようやくインターネットができて、携帯電話を持ち、PCで書類などを電子化し始めた頃から、大量のデータをインターネットでやり取りし、AIがあらゆるところで使われるようになりました。スマホができて、一日で見る情報の量も爆増しています。

医学の世界でも、2000年くらいを皮切りに、研究の量が指数関数的に増加しています。仕事上、知っていないといけない知識の範囲が格段に増えました。

この25年という時間の長さは、一人の人間が仕事を始めて、引退する少し手前くらいですよね。

昔は、仕事を始めた頃から、ベテランになって引退するまで、同じ仕事なら変化はある程度におさまっていたかもしれません。

しかし、今は仕事を始めた時の仕事の内容と、ベテランになった時の仕事が著しく変化しているケースも多いのではないでしょうか。

例えば、僕の専門分野だと、1980年代に病院でのある検査は、一日5件とかしかなくて、その分析に各1時間くらいかけていてそれだけで勤務が終わっていましたが、
それの経験者と一緒に仕事をしていた最後の時代2020年前後では、1日30−40件で、同じ作業を一件あたり数分でしていました。

仕事が全く違うわけです。

こうなってくると、ある問題も起こってきます。
駆け出しの頃、得意だった仕事が、ベテランになるとできなくなってくるという状況です。別の仕事に見えるくらい複雑にそして高度に様変わりしているからです。

これほど違うと、要求される能力も変わってきます。
先の例では1人の患者さんの検査に1時間かけてじっくり考え、ディスカッションして分析していたのに対して、今ではいかに瞬間的に分析して答えを出すかという瞬発力が求められるようになりました。

自分が憧れた仕事像が、数年で変わってしまうなんてことも。

人によっては限界に達して脱落して行っている人もいるかもしれません。
それに振り落とされてしまったベテランの方を医療現場ではたくさん見てきました。
彼らの口癖は「もうついていけない」

一方で、そんなに目まぐるしく変わっていても、経験を武器に、その変化についていっている人もいます。
仕事の目まぐるしい変化は、人間のふるいわけを行っているかのようです。