アルコール依存症の末期段階は早い


肝硬変になると、静脈瘤破裂や肝細胞癌といった病気になりやすくなります。
肝硬変は、非常にゆっくりですが、アルコール依存症だと
僕が経験したところでは早いと30代でもかなり進行している方がいます。
あと、少ない経験ですがキャラが特徴的と感じました。以下簡単に解説します。

昔、注射針の使い回しにより、日本ではB型及びC型肝炎ウイルスが蔓延しました。

感染した方たちは未治療で、70、80代になってくると肝硬変(炎症が起きて肝臓自体が線維化して硬くなってくる)が進んできます。

肝硬変が進むと、静脈の血流の一部が肝臓を通って心臓に戻りますが、これが線維化によってうまく通らなくなり、血流が鬱滞するという状態になります。

そうなると、通らなくなった経路以外の血管を通って心臓に還ろうとするので、普段はあり得ないような血管が拡張します。

胃の中や食道、直腸などの静脈が拡張して、何かの拍子に破裂して、大量出血し、亡くなる方もいます。

また、肝硬変では、肝細胞癌になることが多いです。この癌は破裂することで有名です。

肝細胞癌の治療は手術ですが、元々の肝臓の機能が悪いので、手術も危険です。

こんなにいろいろ厄介な肝硬変ですが、一度なると、正常な肝臓に戻ることはありません、つまり、慢性の経過だけど、取り返しがつかないのです。

ウイルスの肝硬変は、高齢になってからいろいろ厄介なことが起こることが多いのですが、

アルコール多飲でもなります。ほとんど依存症状態の人が多いです。

僕の少ない経験では、早くて30代で肝硬変になる方が結構います。

肝臓を見ると、ウイルスの肝硬変の70代、80代と同じような状況になっているのに驚かされます。

つまり、アルコールの肝臓への毒性の影響が出てくるのは最短20年ほどと比較的早いのかもしれません。

変形性関節症などと比較すると、慢性に進行する病気の中では、かなり特徴的と感じられます。

余談ですが

不思議なのが、(外来で多くの患者を見ているわけではないので、あくまで限られた経験ないですが)
結構精神的にカラっとしている人が目立ちます。

アルコール依存症だと、辛いことがあってアルコールを飲んでいて、さぞ普段から精神的にやられているのかなと思うかもしれませんが、
先日経験した、うつ病のスコアをつけた患者では、スコアは高くありませんでした。

数年前、アルコール性肝硬変になっているのに、酒を飲んで自転車を運転し、フェンスに顔から突っ込んだ患者の縫合をしたことがあったのですが、
そのかたも、ハキハキと礼儀正しく、落ち込んでいる様子はありませんでした。(飲酒量は少量でしたが、申告に虚偽があるかもしれず、もっと飲んでいてよっていたかもしれませんが、そういう感じもしませんでした)

肝硬変になるまで、アルコールを飲んでいる人は、どこかで意外と満足しているのかもしれません。