「医者の会社はよく失敗する」

会社を始めた時、医療用ITサービスの経営者に言われた言葉です。

僕の知り合いでは起業した人はあんまり知らないのですが、あながち間違いではないのかなと思います。

経営者でない人も、参考になるよういくつかのポイントにまとめて解説します。

まず、技術が特殊すぎて求められていない、です。

医者は専門分野を極めるようにキャリアを積んでいるので、経験を積むとどんどん細かい知識が増えていきます。

例えば、悪性リンパ腫の治療法は、保険診療の枠組み(社会保険料から医療行為に応じて報酬をもらう仕組み)の中では、立派な「事業」になります。
しかし、世の中一般には、そんな特殊な病気の治療など求められていんですよね。

普通に病院に行きますよね。

求められていないし、そこにお金を払ってなんとかしようと思わない人が多いです。

となると、生活習慣病とかになりますが、後述するように誰の利益にもならない(大きな視点で見ると経済的な損失は減る)ので、仕事になりにくいです。

次に、理想が非現実的、です

「事業を通して、みんなを健康にしたい」というスローガンが多いです。

が、それは難しいですし、達成できる目標ではないですよね。

「みんなを幸せにしたい」と言っている政治家の演説みたいです。

また、医師の仕事は、マイナスをよくてゼロ、悪くてマイナスをましにする、くらいのものなのです。

つまり、健康になっているのは当たり前で、健康にならなくなった時使える技術です。

健康にならないものを戻したとしても、別に何かプラスのことはないです(とみんなは思っています)

iPhoneが壊れた時、直してもらったからと言って、生産性が2、3倍になるわけではないですよね。

iPhoneのアプリを作って、生産性が2、3倍に上がった時に世の中の人は喜んでお金を払うわけです。

あと、健康に良いことをみんながしたくないことであることが多く、
正しいのに広まらないケースが往々にしてあります。

みんなが100%正確な情報にアクセスできるわけではないですし、そもそも正確な情報も専門家によって解釈はかわったりします。

自分が考えた身体にとって正しい行動や習慣や仕事を他人がしてくれない現実があり、そこがビジネスの限界でもあります。

大体合意があるところでいうと、
睡眠をよく取って、健康的な食事をし、運動をして、慢性的なストレスをなくそう、くらいです。
地味で医者じゃなくても言えるし、実現するのは至難の業かもしれません。
せいぜいこの程度です。

最後に、手っ取り早く副収入を作りたいなど安易に考えている、です。

いろいろ理想を掲げている割には、本音は楽して金が欲しい人が多いようです。(実際先輩は言っていました)

なぜかというと、医師の仕事は卒後数年でほぼピークに達した後、そのあとは微増になります。

一方、私生活には、金がかかります。
まず、外車を買わねばなりませんし、
いいレストランで食事をしなければなりません。
タワマンに住まないといけないですね。

これくらいならお釣りが来ますが、
その後結婚して家族を持つと、
平均的な人より高い持ち家を購入し、ローンを払わねばなりません。

小さい頃から高い教育を受けさせたいと思うので、私立学校に入れたり、そのための塾や習い事のオンパレードです。

つまり、収入は天井なのに、徐々に持ち出しが増えていきます。

で、収入は天井なのに気づくので、副収入を得たいと思う人が多くなるのかもしれません。

収入を得たいだけで、前述のような現実がある中、今の技術が新たな勉強や技術をインストールする気がないと、なかなかニーズに応えていくのは難しいという印象です。あと、会社を作って、楽しもうという人も少ないです。

ここまでで何が言いたいかというと、医師の技術(決められた点数を上げること)と、ルールがない状況で目に見えないニーズに応えて変化することは別ということかなと思います。

学校で優等生な人が、社会でうまく立ち回るためのスキルを全部持っているわけではないのです。