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医師としてあまり口にしない技術的な悩み⑦

医師として仕事をしていると、患者さんにとっては、しっかりしていない状態で仕事をしている場合があります。記憶容量を遥かに超えた知識の量を吸収せねばならず、苦労しています。

今回お話しする苦労は、不十分な知識と経験でやっている、です。
は?大丈夫か?と思われる方もいるでしょう。

ほとんどの病気は丸々1冊教科書ができるくらい知識や経験が蓄積されています。

ある病気に似ている病気まで範囲を広げると、何十冊になります。

ここまで取り入れれば十分な水準の医療を提供できるでしょう。

一方、例えば、世の中には、前立腺癌とか、糖尿病など1種類の患者しか取り扱わない(扱えない)医者がいます。

これなら、毎日同じ病気の患者さんが来ることになるので、
ある程度やれば人生の時間のスパンでは掘り下げることが可能です。

ただ、そのような医者は、勉強していないことが多いです、そもそも勉強できるなら、1種類の病気しか扱わない仕事はしないはずですね。

例えば、胃癌に出会った時、1週間胃癌について勉強しまくれば、経験は乏しくとも、知識ベースでは胃癌の専門家と同レベルの知識は得ることができます。

本当はそこまで読み切れば、診療の質はかなり上がると思います、

患者さんから見ると、ほとんどの医者は最低限の知識で診療していることになります。

ちょっとしたド忘れや未勉強の部分が裏目に出て、患者さんのその後を大きく変えるような決定をしてしまうこともあります。

では、あらかじめ勉強しておけばいいかというとそんなにうまくいかないです。

まず、1つの病気の知識がかなり多いため、それを常時頭に浮かべながら仕事にあたることは難しいです。

また、あらかじめ勉強しても、記憶の定着は悪くなります。
経験ある方もいるかもしれませんが、目の前でひやっとした経験や実際に必要にせまられる経験があると、急速かつ強力に学習が進みます。逆に言うと、何もない状況で細かいことまで勉強するのは、学習効率がかなり悪く冗長になります。

患者の血管が、通常ではない形をしているのを見て、人間の血管のバリエーションについて勉強しまくったときは、普段なら興味もない知識がなんでこんなに頭の中に入るんだと思いました。

一般内科や救急科など、種類が多く、多彩な病気の患者を扱う医者はかなり苦労していると思います。

僕も今は病気の診断がメインですが、あらゆる状況において、基礎的な知識から細かい知識まで全てを把握して診療することは、現状できていません。

続く