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肌の色の違いは実はほぼない説②
医師が患者の身体の調子が悪いかどうかを最初に見るのは血圧とか、脈拍ではなくて、肌の色です。肌の色がおかしくないかをチェックするのは医療現場では大切なプロセスです。
異常な肌の色は、名前がついています。酸素が足りない状態だったらチアノーゼといったりします。プールで泳いだあと唇が紫になるあれです。
またCRT capillary refill testというのがあります。誰でもやったことがある、爪を押して離すと色が変わる現象です。押して一旦白くなった皮膚が元のピンク色に戻るまでの時間が遅いと、体内の循環が滞っているということを示します。
また、僕たちは、体調を崩していて、顔色が悪い人を見ると結構はっきりわかります。
極端な話、亡くなった人ってはっきりわかりますよね。
これはフィリピンのキリストの磔刑を再現する儀式だそうですが、もちろん死体でないことはわかります。
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逆に言うとこの儀式では、再現度が低いです。全身メイクしてもっと白くしないといけません。
このように人の状態を見るのに肌の色は、とても大事です。我々の目は、通常の肌の色との違いを鋭敏に感知することがわかっています。自然に備わったセンサみたいなものですね。
僕もいつも思っていたんですが、肌の色の濃い(と我々が感じる)人種の方では、この色の違いがうまく判別できるのかが自信ありませんでした。肌の色の濃い(と我々が感じる)人を診察したことはまだありません。入れ墨はあります。
チャールズダーウィンも、人種について研究する中で、肌の色が濃い(と我々が感じる)人が赤面するという現象について書いています。もっと正確に言うと、長く付き合うと肌の色が白い(と感じる)
自分たちでも、微妙な色の違いについてわかってきたことを示唆する内容です。
つまり先程の僕の疑問の答えとして、肌の色の変化はわかるということなんですね。
逆に言うと、感情や体調で微妙に変わる肌の色が、人種が違うと最初はあんまり感知しにくいってことかなと思います。
これってちょっと怖いことじゃないですか。
相手も同じように感じ、考え、生きているのに、変化のない、均質な存在と見えてしまうかもしれませんね。
そうなると他人への共感が失われてしまうかもしれません。
でも、こういう視覚のエラーというか特性を知っていれば知識で乗り越えられるかもしれません。自分とは違うと一見思える人を見るとき、こういう事実を知っていれば、一層注意して表情を読むようにするなど観察力を上げて歩み寄りができるかもしれませんね。
参考文献
https://www.amazon.co.jp/dp/4150505551?ref_=cm_sw_r_ffobk_cp_ud_dp_VAEWDM1NVJWERBHPMGXN