[読書記録] 言葉を考える: 日本語を動かすものは何か
[2008-06-11]
前期、歴史言語学の授業で使っていた教科書の一番はじめに、「学習者が言語学の理解を深めるためには、歴史言語学を学ぶことは非常に大切なこと」であり、「言語学者の専門の一つに必ず歴史言語学が含まれているもの」だと書いてあって、その時は「ふーん」としか思わなかったのですが、授業が終わって、最近日本語に関する本を読んでみて、その意味が分かったような気がします。
その教科書では、言葉が変化する現象について一つ一つ例をあげて説明がされていました。この本にはそういう難しい用語はほとんど出てこないのですが、その教科書で出てきた現象と同じものが、日本語を例にあげて説明されていました。授業を受けていたときは、とにかく例が多く、しかも知らない言語の例ばっかりだったので少しつまらなさを感じていたのですが、この本を読んで、その授業を受けてよかったなと心から思いました。
この本の中で興味深かった点は色々あるのですが、日本語に特化した現象として、漢字の読み方の変化が例にあげられていました。どうして漢字の読み間違いが起こるのか、どうして漢字の読み方が変わるのかということですね。「物騒」は元々は「ものさはがし」という和語を漢字で「物騒」と書いてそれを音読した、などなど。
また、単語だけではなく、文体についても書いてあり、「である」は、古くは室町時代にあった言葉が別の音に変わって一度姿を消したのですが、幕末から明治にかけて西洋語を翻訳する過程で「である」調が復活したことになったそうです。また、「です」調は、遊里や芸人の間で使われたとする説があり、明治の初めに、田舎の武士が、江戸に出て、柳橋新橋あたりの女芸者などの言葉で「です」を聞いて、江戸の普通の言葉かと思って、真似を始めたからだと書いてありました。
この本は1973年に刊行されたものを1990年に復刊したもので、情報としては少し古いのですが、上に書いたようなものが色々あって、とにかくおもしろかったです。