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[ 忘れっぽい詩の神さま ]:青ブラ文学部(忘れっぽい詩の神)

↑↑こちらの企画に参加してみました。
ショートショートのつもりで書いたけど、ちょっとお悩み相談的なものになりました。
シリーズ化しちゃお、かな〜😊♪


画像: ACworks/illustAC


[ 忘れっぽい詩の神さま ]


 今日は、近所の野外ステージに、人気の神さまが来るというので、話の種に参加してみた。
 その神さまは、どんな質問でも、詩に例えて答えてくれるという。
 答えは的確なのに説教じみてなく、いつも笑顔が絶えず、相談者は皆、幸せになって帰っていくそうだ。
 お、そろそろ始まりそうだ。

「それでは、神さまをお呼びしましょう、せ〜の、」

 進行役の一番弟子と名乗った者がそう言うと、「かみさま〜」と、神さまを呼ぶ声がまばらに起こった。
 するとステージの後ろから、神さまらしき人物がトボトボと歩いてやってきた。
 壮大な音楽やスポットライトや二酸化炭素のスモークなど派手な演出はいっさいなく、ステージ中央に立った神さまは、軽く右手を挙げながら、左手のマイクを口に近づけた。

「みなさん、ごきげんよう、では早速、みなさんの質問に答えましょう、質問がある方は挙手をお願いします」

 数十名いる観客の何名かが手を挙げた。
 進行役が指し示すと、ステージ下にいたスタッフがマイクを持って、示された観客のところへ走って行った。

「質問します。自分は欠点ばかりで全然イイところがありません。今後、どうやって生きていけばいいか教えてください」

 初っ端から、切実な悩みが打ち明けられた。
 問われた神さは、笑顔のままで話し始めた。

「そうですか、そうですか」
 と、頷いてから、「そうだね、君にはこんな詩を送るね、えー、っと、コレ誰の詩だったっけかなー、えー、と、まっいいか」

 と、だいぶ忘れっぽい神さまのようだ。

「ちょっと、言ってみるから聞いてね」

 いい加減なだけか?
 そして、綺麗な声で詩を詠んだ。

「昼のお星はめにみえぬ
 見えぬけれどもあるんだよ」

 神さまがそう言うと、進行役の弟子がすぐさま口を開いた。

「只今の詩は、金子みすゞ『星とたんぽぽ』からの引用です」

 神さまの物忘れには慣れたもんだ、と言わんばかりの手際のいい弟子の対応の後、神さまが話を続ける。

「そうそう金子みすゞさん、もう、どーも忘れっぽくて、頼りになる弟子を持って、私は幸せもんです」
 
 会場が笑いに包まれる。
 神さまは、質問者に向かって話を始めた。

「星空は、昼間は見えないよね。
 でも、星空は昼間だってそこにあるんだよね。
 見えないのは、どの星よりも圧倒的にギラギラと輝いている太陽がいるから。
 ギラギラ輝くものがあると、他の輝きは見えなくなっちゃうんだよね。
 どんなに欠点だらけでも、いいんだよ。
 いいところなんて、ひとつでもあればいい。
 大切なのはね、いいところを輝かせることだよ。
 もう、欠点が見えなくなるくらいギラギラとね」

 ほ~、柔らかい口調で、いいこと言うね。
 神さまの話はまだ続く。

「あなたの中にだって、いいところがあるんだよ。
 あなたの目からは欠点ばかりが見えてるようだけど、夜になると星空が見えるように、あなたも自分の見方を変えれば、いいところが見えてくるよ。
 しかも欠点が多いなら、その分、いいところも多いよ。
 表と裏は常に一緒にあるからね。
 表も裏も見るようにするといいよ。
 大丈夫、大丈夫、いいところは必ずあるから探してみてね。
 そしてね、これからはね、いいところを輝かすことだけを考えて生きていくといいよ。
 いいところを、太陽のようにギラギラ輝かせる為に一所懸命生きることだね。
 太陽のように輝いていると、皆んながあなたの周りに寄ってくるよ。
 みんな陽だまりが好きだからね。
 イイ出会いがあるからそれも大切にしてね。
 私からは以上だよ」

「ありがとうございました」

 と、質問者は深々と頭を下げて、マイクをスタッフに渡して座った。
 なるほど、忘れっぽい詩の神さまは、いいこと言うね。

「では、次の質問を受け付けるよ、皆んな手を挙げて」

 先ほどよりも挙がる手が増えたように見えた。


おしまい

#青ブラ文学部

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