[ 夢じゃなかった ]:シロクマ文芸部(春の夢)
コチラの企画に参加しました〜
少しまえに書いた続きの話になりました〜
そのお話は、こちらから↓↓どうぞ😊♪
[ 夢じゃなかった ]
春の夢なのかなぁ〜
いや、間違いない。
高2になり、新学年のクラス替え。
昇降口に張り出されたボード。
2年2組の欄に私の名前があった。
1年のときと同じ2組。
まぁ、それはどうでもいい。
春の夢かもしれないのは、私のひとつ下。
名前の順でひとつ後。
その文字を見て、現実なのだと実感するのには、もう少し時間が必要だった。
「ななみ、また同じクラスだね、よろしく!」
と、親友の凛が私の左肩を叩きながら言う。
「しかも、ななみ、あんたの下にある名前、佐藤じゃん、よかったね」
凛はそう言い残して「先に行ってるね」と告げて去っていく。
行き先は一緒なのに、なぜに先に行く?
と思いながら、追いかけない私も私だ。
ま、そんな距離感がよくて、ずっと一緒にいるのだけれど。
「あんたの下にある名前、佐藤じゃん」
凛は間違いなく、そう言った。
だから春の夢ではないのだろう。
私のすぐ下に、佐藤くんの名前がある事実。
高校で再会した佐藤くん。
去年の夏にそのことを知った。
その後も通りすがりに何回か話はしたけれど、関係は全く進展していなかった。
小学校の時もそうだった。
佐藤くんは、いっつも側にいてくれたのに、距離を縮めることはできなかった。
一重瞼がコンプレックスだった私に、キレイな目だと言ってくれた、ただひとりの人。
中学が別になることが分かっても、なにも踏み出せなかった私。
3年間、ずっと後悔していた。
それが、去年、この高校で再会できた。
すごく嬉しかったのに、今度は距離を縮めるぞ、って意気込んでいたのに……、
結局、踏み出すこともせずに、ここまできた。
クラスも部活も違うから、接点がなさすぎなんだよー、なんて自分に言い訳しながら。
でも今年は、どうやら同じクラスになったらしい。
名前の順もひとつ違い。
まさに夢のような展開。
「春の夢なのかな〜」
と、私は思わず声に出していたらしい。
「春の夢?」
と、誰かに声をかけられたので、そちらを見ると、
「よっ、佐久間さん、今年は同じクラスになったね」
と、右手を挙げてる佐藤くん。
私は、その顔を見て、突然、気が遠くなる。
(やっぱり、これは春の夢?)
「そろそろチャイムがなるから、佐久間さんも早く、行くよ」
と、佐藤くんは小走りのそぶりをしながら振り返り、教室の方向を”ちょんちょんちょん”と指差している。
(あ、やっぱりこれは春の夢だ……、とてもステキな夢)
今度こそ、踏み出そう。
私は佐藤くんに歩み寄る。
そして、ふたり並んで走り出す。
ワクワクが止まらない。
おしまい。
#シロクマ文芸部
前回シロクマ文芸部に参加したお話は、コチラ