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投資家サーベイ「黒田総裁の通信簿」――そして次期総裁の課題は?

日経CNBCが毎月実施しているアンケート調査「投資家サーベイ」。2月2日~6日にかけて「黒田総裁の通信簿 あなたの評価は?」というテーマで行いました。2期10年の任期を4月8日に全うしようとしている日銀の黒田東彦総裁。異次元緩和、マイナス金利、YCC(イールド・カーブ・コントロール)と、次々と非伝統的金融政策の領域を広げながらも、政策目標である安定的な消費者物価2%の上昇は、達成できないままです。一方で大量の国債や株式ETFを購入するなかで、今後に残される課題もまた相当なものです。みなさんはこの10年の金融政策をどう評価するでしょうか?

1~5の5段階評価。5が最も高い評価としてひとつ選んでいただきました。ほかに「その他・分からない」という選択肢も用意しました。結果は日経CNBCのHPからもご覧いただけますが、以下のようでした。

平均すると「2.9」だけど「3」が多いわけではない…

平均は5段階評価の「2.9」――高評価と低評価の「ふたこぶ型」に

興味深い、特徴的な結果だったと思います。平均すると「2.9」。まあ、5段階評価でいえば真ん中よりわずかにしたというところですが、「3」を選んだ方が多いわけではないのです。最も多くの回答を集めたのは、最も低い評価の「1」で27.8%。次に多いのは「4」の23.8%。つまり高い評価をした人と、きわめて厳しい評価を下した人に分かれ、平均すると真ん中になる――。「ふたこぶ型」の分布ということです。

それぞれの回答の理由については、抽出してこのnoteの最後に掲載させていただきました。まず高い評価を選んだ方には、ご自身の投資成果と併せて理由を記入するケースがちらほらと見受けられました。下記がこの間の株価チャートですが、確かにアベノミクス下のこの期間、日本株は堅調い推移して、投資で成果をあげた方は多かったと思います。

日本株のパフォーマンスは良かったです。。。

評価が「4」、「3」と下がるにつれて、一つには消費者物価上昇率の目標、安定的な2%を達成できていないことをあげる方が増えていきます。

足元は急上昇ですが、日銀自身が「また下がる」と言ってるし…

そして、さらに「2」「1」となると、「説明の仕方」「サプライズを好む手法」であったり、大量の国債購入やそれに伴う市場のゆがみ、将来への禍根――といった意見が増える印象です。

政治に翻弄された10年――特に国債、ETFの今後は心配

2月10日(金)午後の番組で、岡村友哉さんと僕でコメントを紹介しながら、話しました。当初の2年ほどとその後の変化。将来世代に対する責任といった観点では、厳しい評価は避けられないように思います。僕自身はとりわけ、もちろん国債の問題もとても大きいわけですが、償還のない株式ETFについて、まったく将来の出口に向けての見取り図が描けないように見える点は深刻だと考えています。一方でこの10年は、日銀が政治に翻弄された時代だった面も大きいと感じます。その中で毅然とした態度を維持し続けた黒田総裁の、胆力は印象的です。

「次期総裁に植田和男氏」――2月14日に国会提示へ

さて、この番組を放送した直後の10日(金)夕方。市場などなどに激震が走りました。メディアが「政府が黒田総裁の後任に経済学者で元日銀審議委員の上田和男さんを起用する人事を固めた――」などと一斉に報じたのです。併せて「副総裁には氷見野良三前金融庁長官、内田真一日銀理事を起用する方針だ」とも報じられています。人事案は2月14日(火)に国会に提示される見通しです。大方の予想は雨宮正佳副総裁とでしたし、自分自身もそう予想していました。昨日の夜から今日にかけて、たまたま金融関係者が集まる会合みたいなものに顔を出す機会が続いているのですが、「この話で持ち切り」といった印象です。どのような経緯だったのか、これからどのような金融政策になるのか、そして経済はどのような方向に向かうのか――。自分自身も再考しているところです。正直、ちょっと混乱、かつ興奮気味――。まあ、僕が興奮しても仕方のないことなので、改めて愚直に市場と世の中を見ていかなければと、自分に言い聞かせています。。。

このタイミングで大変多くの貴重なご意見を「投資家サーベイ」に寄せていただいたみなさまに、心からお礼申し上げます。すべてというわけにはいきませんが(一部読みやすいように文言を修正させていただいておりますが)、以下に「黒田総裁の通信簿。あなたの評価は?」のコメントを掲載させていただきます。

日経CNBC投資家サーベイ
(調査期間:2023年2月2日~6日)

「黒田総裁の通信簿。あなたの評価は?」(コメントから)
 
<5>
・ 10年間という長期間の総裁としてのお勤めお疲れさまでした。継続した金融緩和により、市場にお金が回り、長く続いたデフレが収束し、経済が活発化し株価も順調に上昇しました。末端の弱小投資家でしたが、並みの投資家位にはなることができたと思います。
(三軒茶屋の社長秘書)
・  財務省出身ながら、日本全体を考えた金融政策を行った。金融機関は公共性が公的部門以上に高い。銀行自ら儲けることを主張するのはいかがなものか。半官でもいいくらい。これを理解し、国全体を考えた政策を推進したのが黒田さん。
(TSUYOSHI)
 ・  黒田総裁の胆力はすごい。名総裁だ。多くの投資家が稼がせてもらった。
(こば)
・ デフレで耐えたから。外貨いっぱい持ってたワイにはいいリフレだった。
(やまだうどん)
 
<4>
・長期間の金融緩和。日本の企業の経営は手堅いのは理解できるが、この緩和期間チャンスであった。積極的にお金を借りて投資して欲しかった。 ある意味、黒田さんのせいではなく、企業の責任と感じる。
(ダーツ―)
・最大の功績は、極めて大胆な金融政策で、長年のデフレ均衡状態からの脱却に成功。 残念な点は、市場との対話において、もう少し誠意のある対応も可能だったのでは。
(あじゃりもち)
・就任早々株価を押し上げ、民主党政権で失った国民に安倍政権とタッグを組んで希望を与えた功績大。
(ハレルヤ)
 ・前総裁よりずーっと理にかなった施策を行ったと思う。それにしても、経営者はそんなにお金をため込むのだろう。設備投資などの前向きな投資をしないとは!!
(名無しさん)
・政府自民党が本気で構造改革、規制緩和を進めていれば、ここまで金融緩和、特にマイナス金利まで踏み込む必要なかった。 安倍元首相始め、景気回復(株高)に甘えた自民党の問題。黒田さんは良くやったと思う。 安倍さんとクビをかけ規制緩和、賃上げを迫っていれば5だった。
(タンキチ)
 ・色々抵抗もあったが、変わらずに金融緩和を通し、円安を誘導して、企業や経済を守る舵取りをしたと思う
(ノビ)
・安倍政権が、2度目の消費増税をする迄の評価はとても高く、その後、迷走するアベノミクスの中、時にはサプライズも起こしながら、粘り強く、金融政策を支え続けた手腕は、評価に値する。皆さんに「黒田さんお疲れ様でした」の言葉をかける心遣いはありませんか?
(よっちゃん)
 ・本人はもともと短期間でデフレ脱却できるとは思ってはいなかったと思う。染みついたデフレマインドは日本人の質素倹約の国民性とマッチしており、世代が変わらない限りは難しく、よく頑張ったと考えている。
(貧乏老人)
・思い切った政策で、日本経済を救ったと思います。 株のETF購入だけが、残念でした。
(がんばれロアッソ)
 
<3>
・金融緩和を継続し続ける必要があったとは思うが、その方法としてイールドカーブコントロールが本当に適切だったかということには疑問を持つので、評価はトントン。
(MOTSU もつ)
・投資に関するリターンが頭と尻尾ではなく、いくらかプラスになっているので。
(半歩先読みたい情報収集家)
・初期のころの黒田バズーカは有効だったと思います。2%のインフレ目標に固執し、異次元の金融緩和を長期間続けたことが問題と思います。金利維持のため日銀による大量の国債買いを強いられる状態は異常と思います。
(アルファが大事)
 ・10年間の激務に対して評価するが、当初の目標を達成していないため。
(aho-doaho)
・「結果が全て」で判定しました。物価上昇2%・異次元の金融緩和で発足しましが結果は半分だと思います。ただ、老人のエゴで申し上げれば、デフレの方が静かで安心して暮らせます。そういった意味ではもう少し点を差し上げてもいいかも知れません。
(ひまわり)
 ・アベノミクスの一翼をになった金融緩和を実施したものの日本は成長ができずデフレ状態も続きました。黒田総裁が政府の後押しなくYCC、マイナス政策に代表されるような金融政策のみでの日本経済の舵取りに苦労されたことは大変だったと思います。ご苦労様でした。ただ、マーケットとの対話の点では不満です。昨年末のような金融政策の唐突の実施ではなく事前に地ならしをして欲しかったです。次期総裁に丸投げでなくしっかり引き継ぎをお願いします。
(REY)
 ・就任当初は非常にわかりやすい説明で過去の総裁と違ってかなり期待しました。しかし当初2年の約束が延び延びになりかなりいびつな金融政策になったと思います。もっと早くYCCの見直しをすべきだったと思います。ETFについても今後どのように処理していくのかかなり気になります。
(ピナレロトシ)
 
<2>
・世界と日本に於ける様々な変化に対し頑なに目を背け、ひたすら頑なに緩和政策を続けた結果、日本経済にデフレを植え付け、異常な円安をもたらした。安倍元首相に引き立てられた恩義からか、政府の方針を忖度しすぎ、日銀の独立性を事実上放棄したのではないか。
(PED17)
・ 日本人の個人資産を目減りさせている。市場の原理を尊重していない。
(monotony)
・大規模金融緩和については、長い期間、目標を達成できなかったにもかかわらず、継続した点を問題と考える。なぜ物価上昇が起きなかったのか、課題の洗い出しを行い、対処するべきであったと思う。
(山田さん)
 
<1>
・金融緩和政策を長い間続けているが、そのマイナス点について決して触れない。本当に聞きたいことを「時期尚早」のひとことで何も語ろうとしない。
(TS)
・当初為替対策で大規模金融緩和を始めた にも拘らず、出口戦略も一切無く政策を 継続。副作用が大きく明白になった最近 も、無駄なプライドで自らの非を認めず 政策転換が遅れて日銀のバランスシート を大きく毀損させた。
(やまちゃん)
・国債の大量購入と、円安誘導。どちらも目先しか見ていない政策だ。最大の功績は、日本の置かれている現実を日本人に認識させたことだろう。
(matt)
 ・アベノミクスの一環として株価を上げることには寄与した。しかし、日銀の仕事は株価を上げることではない。物価の安定ではなかったか。円安誘導は輸出企業にとっては業績に貢献したかもしれないが、家計にどれだけ貢献したのか。実質的な公僕であるはずなのに、国民に奉仕しないのでは高評価は与えられない。
(曽根さん大好き)
・中央銀行の独立性が失われた
(マヨ)
・結果として円安という最も安易な方法で景気回復を図ろうとして失敗したので。
(シティボーイ)
 ・マーケットとの対話がないしするつもりもない。驚かせることしかない。
(janico1120)
・行き過ぎた低金利、1%位はあっていいと考えます。総裁後半は自分の行った金利政策を正当化するために、はぐらかし説明に徹した。異常な低金利政策をしているので株の中長期保有がし難い!
(岡田阪神に期待)

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