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日銀“追加緩和”の読み方

日銀が27日(月)、金融政策決定会合を開き、追加金融緩和策を決めました。柱は3つです。


① CP・社債等買い入れの増額――買い入れ枠で3倍の20兆円
② 新型コロナ対応金融支援特別オペの拡充――中小企業の資金繰り支援
③ 国債のさらなる積極的な買い入れ――「年間80兆円」のめどを撤廃し無制限に

事前にある程度報道されていましたし、一般的な内容は各種報じられていますので、僕が気になり、黒田東彦総裁会見で質問したところを中心に解説してみます。

2つ質問しました。一つは「FRBなどがBB格への格下げ社債(堕天使社債)まで購入するように対象を広げたのに比べると、日銀は枠を大幅に拡大し、発行体ごとの買い入れ限度も緩和しているけれど、範囲は広げていないのはなぜか?」という主旨です。黒田総裁の答えは以下のようでした。

FRBはですね、今回の措置で3月22日時点でトリプルB格以上であったものに限って、ダブルB格社債も買い入れ対象としました。またECBも4月7日時点でトリプルB格以上であった債券等についてはその後格下げが行われても、ECB内部の信用判定基準でダブルB格相当と判定されれば、引き続き適格担保として認める扱いをしている。一方、ご案内の通り日本で発行されている社債は大半がA格以上であってダブルB格以下の割合はごくわずかであります。こうした状況を踏まえますとトリプルB格以上の社債を買い入れ対象としつつその買い入れ規模を拡大することで、企業の信用調達の円滑の確保という観点からは十分な効果を発揮することができると思っています。

これは全く黒田総裁のお答えの通りで、日本では社債市場がそもそも発達しておらず、特にBBB格、BB格の社債などそもそもほとんどないのです。従って今回の社債・CPの買い入れ枠大幅拡大によって資金繰り面で恩恵を受けるのは基本的に大企業です。大企業の社債が発行しやすくなれば、その分銀行の貸し出し余力も増すでしょう。しかし中小企業とか地方金融機関にはあまり関係のない話でもあります。

中小企業の資金繰りを意識した策は②なのですが、こちらは「新たな資金供給手段の検討を早急に行い」とあります。もちろん大事なことですが、日々資金繰りに窮する中小企業の実態を考えると時間との勝負、という感は否めません。

もう一つの質問は以下のようなものでした。「今回の経済対策に伴う新規国債発行は20兆円台だと理解している。必要であれば無制限に国債を買うというが、現実に買い入れペースは年間80兆円ペースより落ちていて、しかも流動性も乏しくなりつつある。いくらでも買えるというが、そもそも国債をそれほど買えないのではないか?」
黒田総裁の答えは以下のようなものでした。

国債を買えないということは全くない。日本銀行は現在発行残高の半分強保有しておりますけれども、まだ半分市場にありますので、買えないことはない。もちろんどんどん買っていって金利を上がらないようにするということがイールドカーブコントロールにとって重要でありますけれども、買えないということはないと思っています。なお、金融機関が担保のために(国債が)必要だということであれば国債の貸し付けもやっておりますので、現状そういったことで何か問題が生じる、買えなくなるということはないと思っています。

“きっぱり”と「買えないということはない」という答えなのですが、債券市場関係者などの見方は冷ややかです。「80兆円ペースまで戻すのもまったくもって容易ではない」のです。今後のオペレーションで国債購入が急激に増えることもないと思います。「無制限購入」という響き自体には迫力を感じますが、もし今回の措置に意味があるとすれば、今後、国債増発がどんどん膨らんでいった場合でも、日銀が買う姿勢を鮮明にしているということでしょうか?それはとてもではないですが、幸せな未来とは考えにくい。

中小企業資金繰りのための措置に関してのスピード感は気になりますが、これはどちらかと言えば政府、政府系金融機関や財政面の問題でもあります。日銀としてはこれまでの累積的な金融緩和の効果も含めて考えれば現時点では十分金融緩和をやっている面もあります。とはいえ、残された追加緩和の“玉”の乏しさを感じたとも言えます。

(直居のおまけ)
さて今回の黒田総裁会見は、いつものメーン会場にいる記者は各社の代表などの約20名だけ。僕を含むその他の記者は別室で生中継画面を見ながら、質問するという異例のスタイルでした。僕のいた部屋には記者は全部で4人だけ(下記写真)で、その他に質問はしないけれど中継を見ている会議室もあったとのことです。新型コロナ感染拡大防止の観点から止むを得ない措置だと思います。ただ、もともと僕は会見に出かけて行って、記者の集まり具合であるとか表情であるとか、他の記者と雑談したりして“熱気”みたいなものも含めて雰囲気を感じたいタイプです。質問できたこと自体はありがたいのですが、やはりいろいろな意味で“情報量”みたいなものが落ちるなぁと感じた次第です。

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