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違和感あれど“半値戻し”達成ーー需給主導で一段高の可能性!?

11日(月)の日経平均株価は3日続伸。211円57銭(1.05%)高の2万390円66銭と、およそ2カ月ぶりの高値水準で取引を終えました。市場関係者が注目していた“半値戻し”(年初来高値から安値までの下げ幅の半分戻し)水準の2万318円を上回りました。相場格言にいう通り“半値戻しは全値戻し”となるのでしょうか?いかに経済活動再開についての期待が広がりつつあるとはいえ、コロナ禍で緊急事態宣言が進行中、これからどれほどの困難が待ち受けているかを考えると、違和感を感じる方がむしろ普通の感覚だと思います。しかし、これもまたマーケットです。

11日の日経CNBC朝エクスプレス、マーケット・レーダーにご出演いただいた東海東京調査センターのマーケットアナリスト、鈴木誠一さんには需給面からこの背景、今後への示唆をお話しいただきました。まずはコロナ禍相場での売り手の確認。下のグラフは2月第4週から4月第4週の現物と先物の投資主体別売買動向をみたものです。実は外国人の“一手売り”。日銀によるETF買いや年金買い、個人の逆張り買いに対して外国人が売りにまわるのは急落局面ではよくある光景、いつもの光景です。しかも先物売りが現物売りを上回っています。

20.5.11 投資主体別IMG_0187

彼らが集中的に売ったと思われるのが先物。特に日経平均先物です。次のグラフは2019年10月以降の外国人の先物売買の動向を累積でみたもの。東証株価指数(TOPIX)先物も売りですが、日経平均先物をさらに激しく売ってきた様子がみてとれます。

20.5.11 外国人の先物売買IMG_0188

こうした動きの一つの結果として、株価指数先物と現物の価格差を利用して取引裁定取引の売り残高は、直近時点で金額ベースでは過去最大にまで膨らんでいます。僕自身を含む一般的な相場解説で「金融緩和政策や財政政策への期待、さらには経済活動再開への期待などから株式相場が上昇してきた」といったくだりがよく聞かれますが、鈴木さんに言わせると「そんなに楽観的な投資家がいるわけではない」ということです。少なくても短期的な市場のトレンドを左右する外国人投資家などは、先々を警戒して売りポジションを膨らませてきたわけです。“にもかかわらず”株式相場は戻ってきた。日経平均株価は半値戻しを達成しました。世界的な中央銀行の緩和姿勢は大きな背景の一つだと思いますが、ここではみんながみんな強気なわけではないのに株式相場が戻ってきたことを強調しておきたいと思います。

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この状況は先ほどの裁定残高のグラフで見るところの昨年秋の状況に近いものがあります。世界景気の先行き不安から株式市場に悲観が広がり、裁定売り残高が積み上がったもの大して下がらずに粘っているうちに年末年初に向けての急騰につながりました。鈴木さんは「急騰前夜の環境が整ってきた」とみます。売りポジションに傾いていた向きにとっては、今の下がらない相場は居心地が悪いはず。何かのきっかけで「これ以上下がらない?」「悲観を強め過ぎたのかもしれない?」といった心理が広がれば、株式相場はこの先思わぬ急騰劇を演じる可能性があるのかもしれません。これはあくまでファンダメンタルズを背景にした話ではなく、需給に基づく話です。しかも結構短期的な需給に起因する話。中長期的にはまた別です。

冒頭に紹介した相場格言“半値戻しは全値戻し”。一般的に「下落幅の半分まで戻した相場は元の水準まで戻る勢いがある」と解釈されていますが、一方で「一度下げた相場が半値まで戻したら、欲張らずにそこで利益確定をした方がいい」との見方もあります。売り手の居心地は悪いと思いますが、買い手側だって何だか違和感はありますよね。まあ、こういうところが相場の難しくも面白いところだと思います。

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