米国経済指標の解説
国内総生産(GDP)
米・商務省が3ヶ月毎に翌月の最終木曜日に発表(月末の場合は水曜日
速報、改定、確定値がある
モノ、サービスにどれだけお金が支払われたか、景気動向
名目(実際の金額)、実質(インフレ考慮)がある
GDPの項目
個人消費
GDPの6割を占める(モノ、サービス)
・モノ
耐久財→ある程度の期間使うモノ(車、家具、家電)
非耐久財→消費すれば無くなるモノ(食品、衣服、ガソリン)
・サービス
モノの2倍くらい(家賃、光熱費、住居費、医療支出、交通費、レクリエーション費、外食など)
国内投資(設備投資、在庫の変化)
・設備投資(住宅、非住宅)
住宅→個人と企業によるもの
非住宅→建造物(オフィス、倉庫)
知的財産権(機器、研究開発)
在庫投資(在庫量の変化)
貿易収支
輸出額から輸入額を引いたもの
政府支出
米連邦政府や地方政府が購入したモノやサービス
防衛支出→軍事費
非防衛支出→日常的な支出、インフラ公共投資
GDPデフレーターとPCEデフレーター
GDPデフレーター
資本財の価格や輸入品の価格変動も含まれる
PCEデフレーター(個人消費価格指数)
個人が家庭で消費するモノ、サービスの価格(実際に消費者が支出した金額)
企業収益
企業がどの程度利益を出しているか
企業の経済指標
製造業受注
製造業の活況から経済の動向を計る指標
耐久財→耐久期間3年以上(電化製品、家具、車、航空機)
工場の機械などは手段として使用されるので「資本財」に分類
その他、受注、出荷、未完受注、在庫などがある
企業景況感指数(PMI)
製造業お物品購入決済権を有する人へのアンケート
アンケート項目
・新規受注、生産、出荷、在庫、受注残、納期、雇用、労働時間、支払価格、受け取り価格、輸出、輸入、設備投資
全項目をまとめたものが総合指数50が中間値
サブ指数
新規受注→新規の受注の増減
出荷→注文〜出荷までの期間、注文が多いと期間は長くなる
在庫→在庫量 受注が増えれば在庫は積み増される
受注残→注文は受けているが出荷できていない→増えると生産が追いついていないということ
納期→受注〜出荷までの期間 長いと注文が多いということ
雇用→雇用数
労働時間→労働者一人あたりの労働時間、労働時間が増えると雇用が足りないので雇用は増え景気の見通しが良いということ
支払価格→企業が支払ったモノ・サービスの価格、コストの増減につながる
受け取り価格→販売したモノ・サービスの価格、収入の増減につながる
輸出入→輸出向けの受注量や仕入れ、設備投資目的で輸入したモノ
設備投資→どの程度設備投資を行なったか
ISM指数
ISM調査機関が発表 50が中央値 製造業、サービス業がある
シカゴビジネス指数
シカゴ地区の製造業景況指数
フィラデルフィア連銀指数
同連銀管轄内の製造業指数 ゼロが中央値
ニューヨーク連銀指数
同連銀が発表
リッチモンド連銀指数
東海岸南部の州の製造業指数
労働生産性
労働者一人当たりが単位時間にどの程度生産できたか
「生産量」「労働者一人当たりに支払ったコスト」「労働時間」で構成されている
鉱工業生産指数
鉱工業の生産活動の活況度
設備稼働率→設備をどの程度効率的に使えているか
製造業だけでなくエネルギーの生産、電力の公益も組み込まれる(自然災害にも影響される)
個人消費の経済指標
小売売上高
小売業の売上高の構成
自動車を除く売上高→金額が高く買い替えサイクルも長い為個人消費のデータには適さないので自動車は除く
ガソリンスタンド売上高
車社会のアメリカではガソリン価格に大きく左右されるのでガソリン価格は除く
季節的要因や天候
毎年11月第4木曜日(感謝祭)翌日のブラックフライデーからクリスマスまでの年末商戦は売り上げが増加
8月後半は9月からの新学期向けセール(バックトゥースクール)で売り上げが増加
寒波や猛暑で売上高が増減
以上の理由から季節調整された売上高が発表される
消費者景況指数
消費者信頼感指数
カンファレンス・ボード(民間のシンクタンク)が発表
毎月最終火曜日に「総合」「現状」「期待」の3つが発表
1985年を100としてアンケート形式で計測し発表される
現状→現在のビジネス状況の良し悪し
仕事は十分にあるか 仕事を見つけるのに苦労しているか
期待→半年後にビジネスは良くなるか 求人は増えるか 収入は増えるか
雇用中心の質問
その他→現在の家計の良し悪し 6ヶ月後の家計の良し悪し 一年後の景気の見通しは
ミシガン大消費者指数
ミシガン大学とロイターが共同で発表
毎月半ばと月末の金曜日に発表
1年後と5年後のそれぞれで価格が上昇、横ばい、下降するかを指数化したもの
電話によるアンケート形式で集計 (総合、現状、半年後)のインフレ関係の質問
個人所得と個人消費支出
個人所得
個人がその月にどの程度収入を得たか
給与所得 労働によって得た収入
資産所得 利息や配当など資産から得られる収入
個人消費支出
個人がどれだけの金額を消費したか
耐久財、非耐久財、サービスに分類される
個人貯蓄と貯蓄率
個人貯蓄を可処分所得で割ると「貯蓄率」
可処分所得
税金や社会保険料などを除いた金額
雇用に関する経済指標
雇用統計
米労働省が集計 12日を含む週の3週間後の金曜日に発表
非農業雇用者数と失業率に分類
失業率
一般の人に仕事をしているか調査(家計ベース)A
非農業雇用者数
従業員を何人雇っているか(企業ベース)B
労働人口(家計ベース)A
16歳以上の働いている若しくは働く意思のある人の合計
非労働力人口
家事、育児の為働いていない人、職探しをするつもりのない人
非労働参加率(A)
16歳以上で人口全体における労働人口の割合
失業率の割合
成人男性、成人女性、16〜19歳の未成年、白人、黒人、アジア人、中南米系、最終学歴
U1 労働力人口に占める15週以上の失業率割合
U2 労働力人口に占める解雇や一時雇用完了者の割合
U3 労働力人口に占める失業率の割合(メイン指標)
U4 U3の失業者で職探しを諦めた人
U5 U4で家事、育児を理由に働いていない人を加算
U6 U5で正規雇用を希望しているがアルバイトをしている人を加算
失業保険申請件数
失業保険の申請状況
毎週木曜日に前週の金曜日までの分が集計
新規失業保険申請件数
対象期間に初めて申請した人数
継続受給件数
2週以上継続して受給している人数
JOLTS(労働異動調査)
毎月初めに前々月の数字を労働省が発表
求人数
民間、政府に分類
民間 建設、製造、サービスに細かく分類
新規採用数
その月に新たに採用した人数
離職数
退職した人数
自主退職と解雇に分類
ADP雇用統計
雇用統計発表の2日前に発表
給料計算サービス会社のADPが賃金に関するデータを発表
米企業解雇予定数
企業がどの程度解雇を予定しているか
物価に関する指標
消費者物価指数(CPI)
労働省が集計し翌月の半ばに発表
消費者が購入するモノ・サービスの価格
総合 物価全般の動き
コア エネルギー・食品を除く(価格変動が激しい為)
賃金は計算に含まれない
住居費 家賃・帰属家賃(所有者が貸すなら家賃をいくらにするか)宿泊費
サービス 主に人件費
生産者物価指数(PPI)
卸売段階の指数
総合 最終需要(店頭に並ぶ直前の価格)
コア 食料品とエネルギーを除く
個人消費価格指数
個人の消費動向に基づいて算出
輸出入物価指数
輸出入の価格動向を指数化
輸入物価
石油関連商品を除いた指数
燃料を除いた指数
資本財・自動車および部品・自動車関連を除いた一般消費財に分類
輸出物価
農産物と総合に分類
雇用コスト指数
労働省が四半期毎に集計
労働者に支払う種類
給与・福利厚生
雇用主の形態
民間企業・政府、公共機関
民間企業
管理職・専門職 セールス・一般事務・天然資源・建設・保守
製造・運輸交通・サービス職に分類
平均賃金も項目も項目の1つ
1時間毎の時間あたり賃金と週毎の賃金に分類
住宅に関する指標
新築住宅建設状況
商務省が翌月の第3週の半ばに発表
建築許可件数
住宅局に許可を申請した件数
未着工
天候や様々な理由で建築が開始できない状況
新規着工件数
建設中
完成
住宅着工件数
新規に建設が始まった件数
住宅販売件数
新築住宅販売
新築住宅がどの程度販売されたか
翌月第4週に米商務省が発表
住宅ストックと販売価格に注目
中古住宅販売
転売された戸数
翌月第4週に全米不動産協会が発表
販売件数・住宅ストック・販売価格に注目
住宅販売ペンディング指数
仮契約(ローン申請中など)の成約状況
住宅価格指数
ケース・シラー住宅価格指数
米20都市の住宅価格動向
FHFA住宅価格指数
全米と9つの地区の住宅価格指数
住宅市場指数
全米住宅建設業協会(NAHB)が協会に加盟している業者に対して行う聞き取り調査 住宅着工件数の前日に発表
項目 総合、戸建て販売の現状、半年後の予想、見込み客の活況度
建設支出
建設に対してどの程度の金額が支払われたかを翌々月の第一営業日に米商務省が発表
住宅支出とそれ以外に分類
予算の出所
民間 住宅、それ以外
公共 住宅、それ以外
民間の住宅はさらに戸建て、集合住宅に分類される
国際収支
・貿易収支
輸出入の差額 翌々月の第1〜2週に米商務省が集計、発表
米国は基本的にモノの項目は赤字、サービスは黒字となる
モノとは石油、石油製品、それ以外(食品、飲料、飼料)(工業製品、資本財、自動車及び部品、一般消費財、その他)
・経常収支
貿易収支に所得の移動を加えたもの
所得の種類
一次所得 投資収益、従業員の報酬
二時所得 年金の支払い、政府の補助金、罰金や税金、保険の支払いや個人的な送金
・財政収支
歳入(主に税収)から歳出を引いて求める
財務省が翌月の第8営業日に発表
1、4、6、9月は個人と企業の所得税の支払いがある為財政収支はプラスになる
・マネーストック
市場にどの程度お金が流通しているかを知る指標
翌月の第4火曜日にFRBが発表
M1、M2に分けられる
M1 現金と流動性に高い要求払預金(普通預金や当座預金など要求によりすぐ引き出せる)
M2 M1に小規模の定期預金、MMFなどすぐには引き出せないが比較的簡単に引き出せるものを加える
金利市場
・景気拡大局面での金利上昇は金利負担より利益が出ているので良い金利上昇となる
・量的緩和(QE)
中央銀行が市場への資金供給量を大幅に増やし景気を刺激する方法
(国債、社債などの資産を買取りマネタリーベースを拡大させる)
・フォワードガイダンス
将来の金融政策の方向性に対する指南
・LTRO/TLTRO/FLS
銀行から民間企業への貸出活性化策
・ELA
緊急流動性措置
・為替介入
日本は財務大臣に権限がある、日銀は代理人の立場
・中央銀行の役割
発券銀行として銀行券(紙幣)を発行し、管理する
「銀行の銀行」として銀行間の取引(決済)の仲立ち
物価の安定(アメリカは完全雇用の達成の追加される)
物価の安定はインフレターゲットが目安となる
・金利の種類
政策金利=中央銀行が金融政策で使用する短期金利のこと、金融市場や物価安定の維持に向けた調整手段
長期金利=一般的に返済期間1年以上の金利にこと
ベンチマークは10年国債
実質金利=名目金利-期待インフレ率
プラスの場合:物価上昇よりお金の購買力が上回るので預金が増える
マイナスの場合:消費やリスク資産にお金が流れる
・インフレ時の金利上昇は景気を冷ます行為
・ブレーク・イーブン・レート
米国債利回りとインフレ連動債(TIPS)の利回り差
TIPSはCPIに連動して推移する
ブレーク・イーブン・レートが広がればインフレが進行する指標となる
・イールドカーブ
逆イールドになると長短金利の利鞘で収益を得ている銀行などは収益減少となり貸出基準が厳しくなり景気悪化につながる
米 中央銀行
連邦準備制度(FED)の構成
最高機関:連邦準備理事会(FRB)
金融政策の決定、連銀を統括、中央銀行の役割
7名の理事により運営
下位組織:12の連邦準備銀行
FOMCで決まったことを実行する
FEDの指名
・金融政策の運営
雇用の最大化・物価の安定(長期金利を適度な状態にする)
(デュアル・マンデート)
・金融システムの安定
米国と海外の金融システムの監視
・個別の金融機関の安全性や健全性の実現
・支払いや決済システムの安全性や効率性の促進
・消費者の保護と地域の発展の実現
FOMC
FRBの開く会合でFFレート(政策金利)の設定、公開市場操作(オペレーション)の方針を決定