SHOWROOM前田社長、バーチャル世界の未来を語る【イベント発言メモ】
4月22日、南青山のエイベックスビルでVR法人HIKKYさんが「バーチャルマーケット3開催発表」を開催しました。「パラレル」と「リアル」が混ざった「パラリアル」世界は、VRデバイスの普及に伴い、着実に広がっているとの印象を受けました。
さて、パネルディスカッションに登壇されたSHOWROOMの前田裕二社長のお話がたいへん興味深かったので、前田社長のお話に絞り込んだ形で発言をまとめ、メモとして再構成しました。以下のカギカッコは、全て前田社長のご発言からです。
■日本人は"別の人格"を持っている!?
「いまのバーチャル世界では、人格数を増やすことがテーマになっている。日本は世界的にみると、2つめのSNSアカウントを持っている人が多い国だ。つまり、日本という国の中にある"人格数"が多いということ。日本は人口が減っていて経済的に衰える国なんじゃないかと思われがちだが、自分は『人格数が多いとGDPが増えるんじゃないか』と思っている」
「僕であっても、"前田裕二"以外の人格を出していけば別の価値を生み出せると思う。例えば"前田ヨムオ"という読書情報をつぶやく2つめのアカウントを僕が運用するとする。コアな読書情報を知りたい人が、ヨムオをフォローする。なんでそういうことをするかというと、"前田裕二"が読書情報をつぶやくと、前田裕二のフォロワーにとってはノイズになるんですよ。僕のフォロワーは主に、新規事業に関心があるような人なので」
「こう考えると、1人あたり10個くらいアカウントがあってもいい。健康情報をつぶやく前田がいてもいい。前田を隠して、前田としては言えない表現をするアカウントがあってもいい。例えば経営者で麻雀情報をつぶやきたい人なんて、いるでしょう。でもギャンブラーのイメージをつけたくないから、経営者としてはなかなかつぶやきにくいわけです。そうやって隠さないといけない人ってたくさんいます。そういう人が、2つめのアカウントを持てば"裏の顔"を持てる。そうやってコミュニティができあがる」
■参加者から演者に変われば、ずっとファンのまま
「SHOWROOMがユーザーに何を体験してもらいたいか。SHOWROOMのカスタマージャーニーは、『自分が演者になること』です。参加者が演者に転換してもらうことがカスタマージャーニー。スナックやバーをイメージしてください。カウンターの中に入って、他の客と触れ合う側になったお客さんは、絶対離脱しないんですよ。オーディエンスからモノを提供する側になった途端にロイヤリティが高まる。離脱しない」
「僕は日本を一億総表現者社会にしたいんです。でも、リアルアイデンティティのままでは、表現者になりづらい雰囲気が日本にはある。日本がまだまだ中国などと比べてライブ配信の市場が小さいのは、コンテンツが少ない、つまり演者になってくれる人の数が少ないからです。日本は素の顔を晒して演者になることへのハードルが高い。だから、バーチャル空間上で、生まれ持った制約を取っ払って、表現してほしいんです。その文脈では、VTuberも同じことだと思っています」
■分業が価値を生む時代に
「クリエイターを増やすには、マネタイズの仕組みが必要になります。SHOWROOMにはオリジナルイラストを作成する配信者がいます。このイラストが他の人の活動に活用されることで、命が灯された状態になる。活動するその人の人気が出れば、そのイラストもコンテンツとして人気になる。こうして、キャッシュポイントが増える。つまり1回絵を描いて10万円、で終わらない世界が実現できる。分業で価値を生んでいるわけです。ネット上でやりとりすることで、分業のコストも下がっている。分業が気軽に、コンビニ行く感覚でできる。分業に将来的な価値が紐付いてくるわけです」
■2つめのアカウントで活躍しよう
「今後SHOWROOMがバーチャル化に関連して貢献できるのは、"ハード"の制約をいかに突破するかという点だと思う。VRデバイスの普及にはまだ時間がかかるでしょう。バーチャル世界とリアル世界の橋渡しをしたい。繰り返しになりますが、その鍵が2つめのSNSアカウント、セカンドID。まだヘッドマウントディスプレイの中では活動できないけど、自分の1つめのIDを使って生身で演者になるのもきついという人は多いはず。例えば女性演者であれば夜くらいは化粧落としたいわけです。男性演者であればずっと理想像を演じるのに疲れてくる場合もある、というのは女性は男性演者に対して『理想の素』を求めるから。ここは男性が女性演者に求める『素の素』とは違っていて、なかなか男性にとってはきつい。そうすると、その橋渡しに、セカンドIDがあるんじゃないかと思っています」
「WEB上のコミュニケーション手段として、第一世代が『テキスト/画像』、次に『動画/生配信』がある。この領域でセカンドIDを使い、自分はこのキャラでやっていくんだというエンゲージメントを高めてもらう。そうすると、例えばSHOWROOMで、この服を買いたいなと言う気持ちが生まれる。その先には『バーチャル世界』のコミュニケーションがあるので、このステップで誘導を促していきたいと思っている」